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作品名:九十九神 作者:華月

第14回   14
 階段を上がり、自分の部屋に戻った真那は、ポケットから携帯を取り出した。
「あ!」
 その携帯を見て、真那は思わず声を上げる。
 ストラップの一つが切れていた。慌ててポケットを探ると、切れたストラップの先はあり、真那は思わずその場に座り込んだ。
「良かった〜。これ大事なんだよね〜」
 誰にでもなくそう言う真那の手の中には、透明なビー玉ほどの大きさの石があった。
 この石は真那の祖母が彼女にくれた物で、真那の一番大事な宝物だ。こうして何度も紐が切れても、その度に真那は紐を付け直す。
 石を机の上に置き、真那は着替え始めた。
「戻ってきたら、紐付け直すからね」
 机の上にある石にそう言って、真那は階下に下りていった。

『これで、この事件の被害者は3人にのぼり・・・』
 リビングに入ると、遠遣がテレビをつけていた。見ると、最近テレビで毎日報道しているバラバラ殺人の事件で、真那はソファに座り、テレビを見ながら言った。
「これ、怖いよねー」
 テレビに集中していた遠遣が、視線はテレビから外さず、真那に告げる。
「気をつけろよ、真那」
 何気なく言ったつもりだったが、返ってきた遠遣の声の低さに、真那は驚いて遠遣を見る。
「遠遣・・・?」
 今までテレビを見つめていた遠遣が、ニュースが変わったのと同時にテレビを切り、真那に向き直った。
「真那、気をつけろよ」
「襲われるなって事?」
 自分を見る目が、大輝の所から戻ってきた時と同じだなぁ、と思いながら、真那はそう聞いた。
 しかし遠遣は真那の問いに首を横に振った。そして、普段からは想像も出来ないほど静かな声で告げた。
「襲われる事はない。だが、それ以上に辛い事がある」
 その言葉に、真那はまた何も言えなかった。遠遣の瞳には、何も言わせない不思議な迫力がある。
「分かっ、た」
 それだけ搾り出すと、遠遣は安心したようにふっと笑った。瞳に宿る迫力も一瞬で消えた。
「良かった。・・・そろそろ、行く?」
 一瞬何の事か分からなかったが、それが大輝の元に行くか、という質問だと気付き、慌てて答える。
「うん、行く」
「じゃあ、目閉じて」
 遠遣の言葉に、真那は素直に目を閉じる。
「いくよ」
 そう言われた時、真那は身体が宙に浮く感覚に襲われた。

「・・・びっくりした〜」
 身体に再び重力を感じた時、真那はある人物の声を聞いた。
「遠遣・・・?」
「ほんとに突然だな」
 そこにはベッドに座り、雑誌を読んでいた大輝がいた。


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