「うん、じゃあ明日ね〜」 真那はそう言って携帯を切った。今話していて決まった事に、自然と足取りが軽くなる。 「何着てこうかな〜」 久しぶりのカラオケにテンションが上がる。真那は機嫌よく玄関に手をかける。 「あれ?」 開いている。不思議に思いながらも、真那はそぉっと家のドアを開ける。 微かに開いたドアの向こう側から、ガタンという音がして、真那は思わず緊張で強張る。泥棒かもしれない。そう思うと、ドアノブを握る手が自然と汗ばむ。 「おかえり」 いきなりドアが押された。真那はその反動で何が起きたか分からないまま、よろけて後ろに倒れる。 転ぶなぁ、とぼんやりと思ったが、急何かに引き寄せられた。 「あ、っぶな〜。大丈夫?」 「遠遣・・・?」 上から降ってくる声に見上げると、最近では見慣れた顔。ニコニコと人懐っこく笑う男、遠遣。 今ドアを急に開けたのは彼だったのか、と真那は納得した。 「良かったね〜、転ばなくて」 「うん・・・」 転びそうになった原因は間違いなく遠遣だが、本人はそれに気付いていないらしい。良い事した、と笑っている。 「また、いたんだ」 「お邪魔してます」 「はい」 事後承諾なのが少し気になるが、彼相手にそんな細かい所を気にしていてはいけないと真那は思い始めていた。 きっと彼はずっと変わらないだろう。何となく、そんな気がした。 「今日は何?」 玄関へと入りながら、真那はそう遠遣に聞いた。 遠遣は真那が思ったとおりの答えを言った。 「今日も送るよ」 「大輝の所?」 「そう」 そっか、と真那は呟いた。 「ちょっとゆっくりしてからでもいい?」 「行く事に異存はないの?」 「ないよ」 意外そうに聞く遠遣に、真那はあっさりと答えた。 大輝に所に行く事に何の抵抗もないのは本当だ。この前も何もなかったし、何かあるとは思えない。それに、大輝には何となく親近感を覚えていた。 また会えたら良いなぁ、と思っていたのだ。会えるなら行く。 しかし、疲れたのも事実だ。着替えもしたいし、ちょっと体を休めたい。 「着替えてくるから、待ってて」 「了解」 遠遣はおどけて、兵隊のようなジェスチャーを真那に返した。
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