リカは面白そうに笑っている。そしてフゥと一息ついてポツリと言った。 「本当に普通な男だったんだね、ミカエルって」 「えっ?」 聞き返した山下に、リカは自嘲気味に笑いながら言う。 「私も、ミカエルに熱を上げてた時は、ミカエルって天使だったんだよ。天使に見えてたの。ユカリは今でもミカエルが天使に見えてるの。だから、ミカエルの為なら何でもしたよ」 「何でも?」 不穏な言葉に、思わず近藤が声を上げる。 近藤に頷き、また遠くを見ながらリカは続けた。 「そう、何でも。ミカエルの欲しい物は何でも買ったし、ミカエルのお願いなら何でも叶えた。ミカエルの為なら体にタトゥーを入れる事もためらわなかった。私には真似できない」 「何でもって・・・?」 「キャバ嬢になったのも、ミカエルの為。ミカエルの欲しい物は百万からが当たり前だもん」 それを聞いて2人は黙った。驚き過ぎて言葉がなかった。 そんな2人を見て、リカは笑いながら告げる。 「ミカエルって女遊び激しいよ。扱いもぞんざいだし。それでもいいって言い切ったのがユカリだっただけ。誰でも良かったの、ミカエルは」 リカの言い方は、ミカエルに対しての冷たさを感じた。本当に彼女はもうミカエルに未練がないのだろう。 それ以上に、そんなミカエルに貢ぎ続けたユカリに対しての哀れみの気持ちを感じる。 近藤はもう何も聞く事はないと判断し、リカに向き直り告げる。 「聞きたい事は以上です。貴重な時間ありがとうございました」 「別に」 近藤と山下はリカに軽く頭を下げると、去って行った。 リカは去る2人を見送った後、場所を変えようと歩き出した。そんなリカの前に1人の男が現れた。 「リカさん?」 リカは自分の前に現れたその男を見て、その外見に驚いた。 「な、何?」 「客ですよ」 クスリと笑ってその男は言う。しかしリカはその言葉に再び驚いた。 「客?!あなたが?」 とてもそうは思えない外見の男に、リカの声が裏返る。 男はその様子に、再びクスリと笑って告げる。 「はい。私では嫌ですか?」 その言葉に、リカはとんでもないと首を振る。 「あなたなら大歓迎よ。半額でもいいわ!」 思わぬ上客に機嫌が良くなるリカに、男は笑って言う。 「その前に、これを見てください」 「何?」 男が差し出した物を、リカは何の疑いも持たずに見た。 その様子を見ながら、男は笑ってリカに告げる。 「お金は払わなくてよさそうですね」 その言葉は、リカの耳には届かなかった。
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