司はただ夕日を眺めていた。 その目はどこか悲しそうで、だけど穏やかで・・・。 俺は、いつものように会話を切り出す。 「司は夕日が好きなのか?」 「ここから見る夕日だけだ。」 「そっか・・・。」 そのまま、沈黙が続いた。 司は夕日を見てるというよりかは、夕陽をとおして昔を振り返っているようだった。 心ここにあらずといった感じで、自分が司の邪魔をしているような気分になった。 沈黙に耐えられず、話しかけようとしたがそれさえできなかった。 帰ろうとしたその時、司が口を開いた。 「翔太、お前夕日は好きか?」 「まぁ、嫌いではないな。」 「俺もだ、少し思い出話をしても?」 「あぁ、構わないよ。」 司が珍しく自分から心を開いてきた。 司は、大きく息を吐くと静かに語り始めた。 「この場所は、俺と親友の思い出の場所なんだよ。」 「そいつとしょっちゅうここに来ては、夕陽を見てた。」 「ここの夕日だけは変わらないいつも同じように見える。」 司はただ夕日を見つめて語っていく。 「そいつの前では、正直な自分を見せれた。」 「いつも二人で笑い合ってた。」 こころなしか、司の顔が一瞬明るくなった。 「お前はあいつにそっくりだ、だからかなこんな風に自分ことを話してる。」 「質問してもいいか?」 「あぁ。」 「その司の親友は今どこに?」 当然の疑問だった、司は今一人なのだから。 その親友とやらは、転校したのだろうか。 司の顔を見ると、とても悲しそうな顔していた。 俺は何も言わずに司の返答を待った。 「・・・俺が殺した。」 「なっ!!」 予想もしない司の答えに言葉を失う。 そして司は更に続けた。 「俺は・・・お前も殺してしまうかもしれない。」 司の言っていることが理解できない。 突然、自分が親友を殺したと言いさらには俺を殺すと言った。 司の顔を見る。 背筋が凍った、ドクンドクンと心臓が早鐘を打つ。 司の黒い眼が、炎のように赤く変わっていた。 その目はまるで鬼のように鋭く攻撃的だった。 「これでもまだ、俺とつながりを持ちたいなら魅郁と一緒に本堂にこい。」 「その時、俺の秘密を教えてやる。」 ―ゴォ〜!!!― 前と同じように突風が吹くと司ももうどこにもいなかった。
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