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作品名:時の旅人  作者:伊織

第7回   夕日
司はただ夕日を眺めていた。
その目はどこか悲しそうで、だけど穏やかで・・・。
俺は、いつものように会話を切り出す。
「司は夕日が好きなのか?」
「ここから見る夕日だけだ。」
「そっか・・・。」
そのまま、沈黙が続いた。
司は夕日を見てるというよりかは、夕陽をとおして昔を振り返っているようだった。
心ここにあらずといった感じで、自分が司の邪魔をしているような気分になった。
沈黙に耐えられず、話しかけようとしたがそれさえできなかった。
帰ろうとしたその時、司が口を開いた。
「翔太、お前夕日は好きか?」
「まぁ、嫌いではないな。」
「俺もだ、少し思い出話をしても?」
「あぁ、構わないよ。」
司が珍しく自分から心を開いてきた。
司は、大きく息を吐くと静かに語り始めた。
「この場所は、俺と親友の思い出の場所なんだよ。」
「そいつとしょっちゅうここに来ては、夕陽を見てた。」
「ここの夕日だけは変わらないいつも同じように見える。」
司はただ夕日を見つめて語っていく。
「そいつの前では、正直な自分を見せれた。」
「いつも二人で笑い合ってた。」
こころなしか、司の顔が一瞬明るくなった。
「お前はあいつにそっくりだ、だからかなこんな風に自分ことを話してる。」
「質問してもいいか?」
「あぁ。」
「その司の親友は今どこに?」
当然の疑問だった、司は今一人なのだから。
その親友とやらは、転校したのだろうか。
司の顔を見ると、とても悲しそうな顔していた。
俺は何も言わずに司の返答を待った。
「・・・俺が殺した。」
「なっ!!」
予想もしない司の答えに言葉を失う。
そして司は更に続けた。
「俺は・・・お前も殺してしまうかもしれない。」
司の言っていることが理解できない。
突然、自分が親友を殺したと言いさらには俺を殺すと言った。
司の顔を見る。
背筋が凍った、ドクンドクンと心臓が早鐘を打つ。
司の黒い眼が、炎のように赤く変わっていた。
その目はまるで鬼のように鋭く攻撃的だった。
「これでもまだ、俺とつながりを持ちたいなら魅郁と一緒に本堂にこい。」
「その時、俺の秘密を教えてやる。」
―ゴォ〜!!!―
前と同じように突風が吹くと司ももうどこにもいなかった。




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