ここから夕日を見るのが好きだった。 教室でも、神社からでも、街からでもない。 この校舎の屋上から見る夕日が好きだった。 こうしてる時だけ、昔の俺に戻れるようで。 心をなくす以前の俺、人に心を開いていた時の俺。 いつから、心を閉ざしたのか・・・わからない。 そうじゃない本当はわかってる、思い出したくないだけだ。 でもここから夕陽を見てると、あのころに帰れる。 あいつと楽しく過ごしていたころに。 けれどそんな日々を壊したのは他でもなく俺自身。 あいつが、居なくなってから俺は心を凍らせた。 ここに居る時だけ、昔の自分を見つめられる。
俺は、誰だろう。 人を試して審判を下すそうして今まで生きてきた。 それしか許されなかった。 でもあいつは、そんな俺に心をくれた。 俺に安らぎと笑顔そして悲しみを教えてくれた。 自分の運命を呪うことしかできない俺に。 けど、悲しみを知ったとき俺は同時に心を失った。 悲しみの感情を知る代償に俺はあいつを失ったから。 結局、また俺は自分を憎み始める。
神崎翔太どことなくあいつに似てる。 俺の心を乱す存在。 凍った心が、少し溶け始めたのは事実だ。 けど、このまま心を開けば俺はまた同じことを繰り返す。 「それだけは・・・・いやだ。」 光が急に闇にかわるあの瞬間いわゆる絶望それだけは繰り返したくない。
試しの道案内役が、翔太を試しの対象に挙げるのは間違いない。 道案内役は、試すのに最適な心の持ち主を選ぶ。 だから、今回もそうするだろう。 その判断は間違いない俺も翔太が最適だと思う。 あいつに似ていると感じた時点でそれは分った。 俺は、また審判を下さなければならない。 それが、俺の役目。 道案内役が、翔太が試しの子だと俺に伝えたとき、試しが始まる。 そしてすぐに審判の日が来る。 その時、翔太は答えを出せるだろうか・・・。
「司!!」 いきなり翔太の声が屋上に響いた。 翔太との再会だった。
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