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作品名:時の旅人  作者:伊織

第3回   初登校の始業式
ガタ!!
ベッドから落ちたのに驚き飛び起きる。
時間は、11時30分。今日は、午後からの登校だからまぁ問題ない。
ボンヤリした頭の中で、昨日のことが思いだされる。
山に登って、司に会って、山を下りて・・・。
今思うとどこか現実感に欠ける。
山に神社があるのはいいとしよう、そこに高校生がいるのもいい。
ただあの木は、不思議だ。
完全に枯れてたのになのに、すごい生命力を感じた。
それに、司の存在も謎が多い。
風とともに現れて、振り向いたらもういなかった説明がつかない。
「・・・夢かぁ?」
「よく分かんないけど、夢じゃないんじゃない。」
「そっか、そうだよな、昨日確かに司に会ったんだよな。」
「そりゃ、山に行けばあいつには嫌でも会うわな。」
「・・・ん?」
独り言のはずなのに会話してないか俺。
なんか、知らないうちに俺の部屋一人増えてないか。
そしてこの声は間違いなくあの男『マイペース大王 千秋』
「なんで勝手に部屋に居るのかな?千秋君!!」
意識がはっきりしたところで部屋を見ると、
ずうずうしい奴がマンガを読んでくつろいでいた。
人が真剣に考えてる時にこいつは〜・・・。
「ん?あぁ、おはよう。早く仕度しないと遅刻するぞぉ〜」
「てっ、そうじゃないだろうが!!!」
相変わらずなマイペースが炸裂したところで、すかさず突っ込む。
「はいはい、分かってますよ。手短に言うと・・・」
「翔太が、遅刻しないように迎えに来たら部屋の鍵が開いてたから入りました。」
「あの〜、それは住居不法侵入じゃ。」
「固い事言わない、ちゃんと泥棒が来ても大丈夫なように留守番してたから。」
「はぁ。」
朝からこの人が居ると疲れるなぁ。
「あぁ〜!!いま俺と居ると疲れるとか思ったでしょ?心外だね。」
「ピンポ〜ン、千秋は意外に鋭いなぁ〜、確かにそう思いました。はっはっは」
そう言って、さわやかに笑ってみる。
「そうでしょうね〜はっはっは」
そう言って、俺以上にさわやかに笑う千秋。
「!!」
二の腕を思い切りつねられる。
「翔太、冗談は顔だけにして。」
「お前が言うな〜!!とういうか今の冗談は、俺に失礼だろが!!」
「さっきのお返しです。」
そんなくだらないやり取りから始まる一日だった。

どうでもいい会話をしながら学校へ行く今日が始業式。
転入生の俺にしてみれば入学式のようなものだ。
これから2年間の学園生活が、悔いの残らないようにしたい。
ちなみに、本当の入学式は今日の午前にあったらしい、
生徒会長である千秋も役職がら、当然出席しているが一つ気になることが
「千秋、真面目に仕事したのか?」
「それは、どういう事かな?俺は仕事を不真面目にやるやつに見える?」
「いや、お前が真面目に仕事するのとか想像できなくてな。」
ニコッと千秋が笑うが、目は笑うどころか殺気がこもっていた。
「ぎゃぁ〜!!お助け〜」
俺の声が青く澄んだ空にこだました。

体育館に着くと、既にたくさんの生徒が椅子に着席していた。
まだクラスが決まってないので自由席とのこと。
千秋の友達が席を確保してあるらしいので、その場所を探す。
「ち〜あ〜き〜。」
声がするほうを見ると、かわいい女の子がブンブン手を振っている。
「こっちだ、バカ秋!!早くしろ〜」
その隣の、少しガラの悪そうな男子も千秋を呼ぶ。
千秋の友達とはいえ、第一印象は大切だ。
千秋のような軽いノリで行くか、真面目に行くか・・・
迷っているうちにその時を迎えてしまった。
「よぉ!!春休み終わっても、駿介は相変わらずガラ悪そうだな。そして陽菜はまた太ったな。二人とも相変わらずでなにより俺は嬉しいです。」
そういってとびきりの笑顔を作る。と同時に
「お黙り!!」
女の子が光のようなスピードのビンタで千秋を張り倒す。
「相変わらずのバカ秋で安心した。」
笑いながら、千秋を起こす駿介という男子。
「あなたが、転入生ね。なかなか美男子ね。」
そう言いながら顔をのぞきこんでくる、ハッキリ言って照れる。
「あらあら、照れちゃって翔太かわいい〜」
冷やかす千秋に、すかさず俺が一発。
「おぉ〜、今のは痛そぉ〜大丈夫か?バカ秋」
さっきと同じように、千秋を起こす。
一段落ついたところで千秋が切り出す。
「さて、それじゃあ紹介します。こちら転入生の神崎翔太君、性格は凶暴で女好き、部屋にはヤラシイものがたんまりと・・・」
「嘘ですから!!俺は神崎翔太よろしく。」
千秋の言葉をさえぎる、ちぇと舌打ちする千秋がいた。
「え〜それでは、引き続いて、こちらの不良が野球部エースの宮川駿介君。
見た目通りの極悪人です。そしてこちらお嬢様が、俺の幼馴染の千石陽菜様です。
見た目通りの野獣です。近づくな危険とは彼女のためにある言葉です。」
バキッ、ドガッ、ボキッ、チ〜ン
痛々しい音と断末魔の叫びが聞こえたあと床に伏せてピクリともしない千秋。
「お互い苦労するな、よろしく翔太。」
「まったくよ、このおバカにはついていけないわ。私は陽菜よろしく神崎君」
「よろしく!!駿介、陽菜。」
そういって、ふたりと握手を交わす。

四人でがやがや騒いでるうちに、式が始まるそれと同時に席を立つ千秋。
生徒会長は、どこの学校も忙しいものだな。
「なぁ、一つ気になるんだけどプログラムの生徒会長紹介ってのはなに?」
「あぁ、あれね。うちの学園は少し変わってて、生徒会長は先生の職員会議で候補をきめて、学園長がその中から一人信頼できる人を選ぶの。」
「生徒会について詳しく言うと、生徒会長は2年から選ばれる、任期は1年で3年生になったら副会長の職について来年の会長を助ける。そのほかの係りは、会長が必要に応じて
人を集める。係りについた奴には、7月の終わりに一回信任投票がある。そこで3分の2以上の信任をとればめでたく生徒会役員、とれなきゃ責任をとるために厳しい罰。
まぁ、誘われてもやらないのが賢明だな。」
「それにしても、あのバカが選ばれるとはね、世も末だわ。」
陽菜が苦笑する。
「あぁ、世も末だ。」
「世も末だな。」
感慨深く相槌を打つ俺と駿介。

「続いては、生徒会長紹介です。」
司会が、そういうと学園長がステージに上がる。
生徒たちは、今年は誰だろうかと興味津々な様子。
「え〜、今年の生徒会長は篠崎千秋君です。」
千秋の名が呼ばれたとたん体育館中から歓声のようなものが上がる。
「それでは挨拶してくれるかな?」
そういって、ステージを後にする学園長そして代わりに上ってくる千秋。
千秋は大人気らしく、そこら辺からキャーキャーワイワイ声が聞こえる。
この学園では、かなりの有名人に違いない。今更ながらすごさを認識した。
「皆さんおはようございます!!俺が新生徒会長、篠崎千秋だよ〜ん。」
満面の笑みでピースを作る、もうちょっと真面目にできないかあいつは。
「とつぜんだけど、俺は昨日とある映画を見て号泣してしまった!!」
会場中が、笑いに包まれる。その後も何度となく笑いが起きた。
「さて、俺の公約だけどね、俺の公約は・・・」
静まり返る会場に千秋の言葉が響く。
「俺の公約は文化祭、体育祭、納涼祭に次ぐ第四の祭りを作る事だ。」
あまりにおかしな公約にあっけにとられる。
「そのためには、みんなの協力が必要だ!!頼む俺に力を分けてくれ!!」
「みんなで一緒に、学園生活を楽しくするぞぉ〜」
千秋が生徒に呼びかけると俺たち三人を除く全生徒がそれに応える。
「おおおおおぉ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」
と言ってこぶしを天井に突き上げる。
「俺のあいさつは以上。ご静聴サンキュゥ〜!!」
手を振りながら、ステージを降りる。
生徒たちは会長コールを始める支持率は文句なしだった。
「ホントに無駄に人気あるわよねぇ〜あいつ」
「なんだよ、陽菜もしかして嫉妬か?」
駿介が軽く冷やかす。
「そんなわけないでしょ!!殺すわよ」
「失礼しました〜。」
これ以上は危険と判断した駿介が素直に謝る。
そんなこんなで、始業式は、無事に終わったのだった。



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