アルハンブラ宮殿では、ナイーダは昼食後、ダリアと話していた。王がダリアばかりを相手にして居たので他の王妃からのいじめが目立ち、後ろから押されたり、足をかけられたり、水をかけられたりするダリアをいつもかばってやるのはナイ−ダであった。ナイーダはダリアをジプシ−あがりであったが、他の王妃と違って、全く差別せず接してくれた。一番いじめがひどいのはメレニアであった。王はメレニアの所にはたまには夜通っていたが、メレニアは “王様。イスラムの教えを守り王妃の間は平等に回らなければなりませんよ。” と言って、ダリアべったりの王に牽制をかけていた。さらに他の王妃も口汚くジプシー出身のダリアを罵りながら、裏では、ジプシーを自分の部屋に招いて大金を払いジプシーのベッドテクニックを学んでいた。王は、最近昼はカスティーリャ王国との和平交渉で謀殺されていた。カスティ−リャで戦っている、グラナダ王国の精鋭達を呼び戻す為である。王は、ベルベル人が多いルイトン派遣部隊を少し心配していた。そこですぐにカスティ−リャと和平交渉を始めたが、領土問題でもめていた。マドリードをよこせと言ってきているのである。マドリ−ドをやってしまうと、そこからの収入が減る。マドリ−ドの税収はばかにならない。そこでマドリ−ド以外の土地を提示して交渉しているのだが、戦いに有利なカスティーリャ側は納得しない。夜他の王妃の所に行くと、今はダリア以上のベッドテクニックで攻められる。さすが仁王も辟易して、平等にと言う名のもとにナイ−ダのとこに逃げ込んでくる。そこでは夜の生活は行わずにぐっすりと眠る。もう若く無い王はそれほど疲れているのだ。ナイ−ダも男を知らないので別に不思議に思わなかった。ナイ−ダを王が特に気に入っているのを他の王妃達も良く知っているので、ナイ−ダには表面上は優しかった。 そう言う事で最近はナイーダとダリアが急接近して仲良くなった。ルイ−ザもたまにくるが、ダリアを見かけると遠慮して他のとこに行ってしまう。ルイ−ザは賢いので、ダリアと親しくすると自分も虐められるのが嫌なのである。ナイーダとダリアの話は食べ物の事から、服装の事、天地の原理、ジプシーの習慣、アフリカの習慣と多岐に渡っている。ナイーダからしてもダリアの物知りな事に驚いているし、ダリアもアフリカのサハラ砂漠の話は聞いた事はあったが、御近に具体的な話になると、面白くてつい引き込まれてしまう。 “だから砂漠では、自分の体温をとられないように全身身を包んで行くんですよ。” “それでは熱くありませんか?薄着の方が涼しい気がしますが?” “そうすると太陽に水をとられてすぐにひからびてしまうんです。” “太陽って恐ろしいんですね。砂漠では。” という会話が尽きない。ナイ−ダも好奇心旺盛なので、いろんな話を知っている。そういう中に王が慌ててやってきた。 “ナイ−ダ困った事が分かった。ここにブッテリアとシャルム王子からとの2通の手紙が来ているが、それによると..............” ダリアがただ事で無い気配を察して、 “私ははずしましょうか?” “ウ−ン” と考えて、 “嫌、いい。いやむしろ、居てくれた方がいいかも知れない。とにかくナイーダの相談相手になってくれ。” と言われたので、ナイーダは、恐る恐る、 “誰かが殺されたのですか?” と聞くと、 “いやそういう事では無いんだ。” といわれたので、少し安心して、 “それなら、何なりとお話ください。誰も亡くなっていないのなら、何を聞いても大丈夫です。” “実は、お前はビグドリア国王の娘だそうだ。” 見る見るうちに、ナイ−ダの顔が青くなる。小さな声で、 “嘘です。そんな......” と行ったが声にならない。余りにもショックを受けて居たので、王は、 “ダリアしばらくついていてあげてくれ。詳しい事はショックがさめてから話すから。” と言って、出て行った。ショックを受けた女性を相手するのは苦手らしい。 “あの母の一族を滅ばした張本人が私の父親なんて、そんな事あってもいいんでしょうか?” 青ざめた顔で呟く。 “私達、ジプシーでは父親が誰であるかは問題ではありません。私の従兄弟なんて、全員が父親が違うんですから。” 少し落ち着いて、 “それを知った時は、みなさんショックでしょうね。” “いや皆そんなもんと思っているから大丈夫みたいよ” “みなさんお強いんですね。” “強く無いと、ジプシ−なんてやってられないさ。だから私は虐められても平気なんだよ、王宮ではやり返されないのが残念だけど。” “余り平気のようには見えなかったけど?” “まあかっとするからね。だからあんたには感謝しているよ。おや大分青い顔 が治ってきたよ。“ “私も強く生きなければと思いまして。” そう考えると、父親が微妙にジュリアーノやロルフに対する態度と自分に対する態度が違っているような気がしていた自分が、深層心理の中で霧の中から現れた。なんか昔から微妙に違う何かがはっきりしてきた。 “そうなんだ。私はビグドリアと母との間の児なんだ。そういえば、ルイトン国が一時ビグドリアに奪われた事があったようだ。あれは母の国が、フェズリア国となって、ナビア国王子のラピタリアを将軍に迎えた時期だったかしら?” “フェズリア国も大変だったので、済まないとおじいさまが母に謝っていた事があったようだ。” 過去の出来事が色々と頭を巡る。 ダリアは黙ってついていた。 “今晩は、王様はメレニアの所においでになるそうだから、私はここに泊まってあげましょうか。” “すいません。いろんな昔の事が思い出されてきますが、そばに居てくれたら心強く思えます。” “ジプシーはね。フラメンコを踊って、歌を歌い。時には体をうって生活してるけど、精神は自由なんだよ。精神が自由になると何も恐くなくなるのさ。” と、ちょっと違った話をし始めた。 “精神の自由。” “そうさ。もともと人間は精神は自由なのさ。それをいろんな雑念から、自由が束縛されているんだ。まああたしが言うのも変だが、何もかも捨てると精神が自由になるのが良く分かるよ。これは私の母の受け売りなんだがね。” “ダリア様。ありがとう。私も素直に現実を受け入れようと思います。でもそうなると、ビグドリア国とルイトン国の争いはどうなるのでしょうか。” “一番いいのは、シャルム王子の仲立ちで和平条約を結ぶ事でしょう。大体戦争なんてしないのが一番いいのさ。” “そうなって平和が訪れるといいですね。” しかし2人の期待は見事に裏切られていた。
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