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作品名:700年後の恋 作者:兵藤 順一

第38回   涼の喜び
ランチが運ばれてくる。
今日のランチは焼肉ピラフとサラダとスープが付いている。それに食後にはここの名物のケーキが食べ放題である。付き合うことが安心したのか話題はテニスの事になった。
“ウィンブルドンすごかったね。結局は女子はウィリアム姉妹の決勝になったね。”
“そうだわ。すごい試合だったわよね。”
“結局、セレーナのパワーが勝ってたみたいだね。”
“でも力は五分五分みたいよ。ヴィーナスは左膝にサポーターをまいていたでしょ。あの差じゃないかな?”
“よく見てるね。僕は全く気が付かなかったよ。”
“いやプレーには殆ど関係していないようには見えるけど、時々微妙に痛むのよ。私もそうだから分かるの。”
“えっつ!足悪かったの?”
“うん。ちょっと病院に行ったらね、有痛性分裂膝蓋骨と言う生まれつきの病気だって。だから時々痛むと思っていたのよ。”
“そう言えば左脚にサポーターしてることが多かったよね。ヴィーナスウィリアムスと同じだね。”
“あんなにうまくないけどね。”
テニスの話になると会話が弾む。朝会ったばかりの時とは全く違う雰囲気になった。奈津は事故の事からすべて涼に話したい衝動にかられたが、それはテニスの大会後にしようと思った。
“テニスの大会が終わったらもう一回熊本城に行きましょうよ。今度は宇土櫓にも入ってみたいし、私、本丸天守閣も良かったけど、宇土櫓はもっと好きなの。だってあれは加糖清正時代にもあのまま存在したものだからね。”
“あの建物は西南戦争で焼けてないの?”
“北西の風が強くってあの場所は焼け残ったのよ。”
“宇土櫓って、宇土にあったの?”
“そういう説もあったのだけど、最近の研究では元からあの場所にあっただろうと言う説が強くなっているわ。”
食事を食べ終わるとコーヒーが出て来て数種類のケーキを持って来てくれる。そのなかから好きなものを好きなだけとっても良い。涼はイチゴのショートケーキを1個、奈津はモンブランとミルフィーユを2個選んだ。
“良く入るね?”
と涼が聞くと、
“ケーキは別腹よ。”
と奈津は答える。以前の涼と奈津の関係に完全に戻っていた。
“去年の秋、涼さんから教えてもらったエッグボールね。あれますます磨きがかかって来たのよ。”
昨年の夏合宿で涼の持つ技術のエッグボールという、ボールがネットよりはるか高くを飛ぶので、外に飛び出すかと思うと卵状に曲がりライン内に入るボールに注目していた。秋になり涼に教えてくれと頼むと、クラブが終わった後に特訓してくれた。かなり腰を使ったショットだがそれを覚えて奈津のテニス技術はますます進歩した。ケーキを食べながらテニスの話をしていると時間が迫って来た。
“あっつ。もう行かなくちゃあ。じゃあインカレの大会が終わったら熊本城にまた行きましょうね。メールするわね。”
といってお金をそれぞれ払って店を出た。いつもはそれぞれお金を払うようにしているのだ。
店の前で涼は小さくガッツポーズをした。


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