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作品名:700年後の恋 作者:兵藤 順一

第31回   信次と美千代
美千代は退社の時間になってもまだ信次が帰っていなかったので、信次の寮に行って待つ事にした。夕食の買い物をして帯山の寮にバスで向かった。信次の寮には舎監がいてその人は会社を退職した73歳の男の人だった。子供達も独立し、奥さんが無くなって15年経つので、退職後、舎監としてこの寮に住みついているのだ。美千代が顔をだすと入り口のすぐ左にある舎監の吉田さんは、
“おや、みっちゃんかい。小島はまだ帰ってきとらんよ。”
“分かっています。今日は仕事で遅くなるそうですから帰ってくるまで食事の支度をして待っています。鍵を貸して下さい。”
“あんまり遅うならんようにな。明日も仕事があるし泊まったらいけんよ。”
“はい。分かっています。”
“それからわしは7時になったら夕食を食べに居酒屋(酔い蜂)に行くので鍵は小島に渡して返してもらってくれ。その後一杯飲みに行くかもしれんからな。なんかあったら携帯に連絡してくれ。じゃあこれ小島の部屋の鍵。”
と言って鍵を渡してくれた。美千代は鍵を受け取って3階の5つめの部屋305号室の鍵を開けた。部屋は2DKの広さで中にはトイレも炊事施設も風呂も付いている。信次は部屋をいつも綺麗にしている。冷蔵庫に買ったものを入れ、まだ夕食には早いのでテレビをつけた。全国のニュースから熊本のニュースに変ったところだった。美千代は砂取小学校から出水中学、熊本商業高校を経てすぐに山中空気浄化総合販売という会社に入り経理の仕事をしている。この会社はいろんな空気浄化装置の会社の代理販売をしている会社で、装置の販売、装着、維持と長い契約で仕事を請け負っている。主な空気浄化装置の設計、販売会社から代理特約店の扱いを受ける全国組織の空気清浄化装置の代理店の会社である。30年前に大手の空気清浄化装置販売会社から独立した社長がいろんな会社の代理店契約からメインテナンスまでの会社を設立し熊本県では空気浄化の直接販売をほぼ一手に引き受けている。何軒かの会社は独立した販売網を置こうとしたが、熊本では山中空気浄化総合販売に任せた方が、割がいい事が分かり全ての空気浄化装置を販売できるのが強みである。熊本では小回りが効くからだ。福岡になると直接の販売店が幅を利かせている。信次は福岡支店に3年居たので激烈な競争に接している。その点熊本は意外に楽である。信次は川崎工業で新しい機械の売り込みをしていた。いつもの値下げ交渉が意外と楽だった。
“やはりお宅と販売契約するのが一番良いようだな。”
川崎社長自ら出てきてそう言った。
信次は節約家の社長がそういうので意外だったが、
“実は福岡のエアークリーン社に見積もりを頼んだんだが、出張費や宿泊料まで要求されるし、第1輸送料が高い。おまけに製品事態もお宅の方が安いときてる。散々な目にあったよ。エアークリーン社の装置本当に73万でいいんだな。”
“はい。うちはギリギリまで下げていますから。”
“実は後5万まで下げないといけないかな。”
などと思っていたので73万なら大成功である。
そこで73万で契約にありつけた。後は設置施行の段取りや古い機械の撤廃などの作業の打ち合わせなどを計画して会社に帰ったのは8時過ぎであった。会社にはもう誰もいなかったので、会社から自動車保険会社に電話したら、病院の領収書と車の修繕費用を見に行くので会社で待ち合わせして、車の前で事故の状況を聞かれ、9時頃に車を預かって修理に出してくれるようだった。会社から契約している保険会社なのでサービスが良い。やっと会社の車で帰途に付いた。
“夕食は御飯を炊いてお茶付けか野菜炒めを作って食べよう。”
と思って寮に帰って来た。
“舎監の吉田さんは又飲みに行っているな。”
と思って部屋に帰ると明かりが付いていた。
“美千代が来てるのか?じゃあ夕食作っていてくれるかな。”
と一瞬喜んだが、
“いや。美千代とは別れなければ。”
と少し暗い気持ちになって入っていった。
“お帰り。夕食作っといたわ。”
むすっとした信次は、
“ありがとう。でも今日は来ないでと言っといたろうが。”
“だけどなんか様子が変だったけんが、来たとよ。”
ふと見るとすき焼きが用意してあった。美千代も食べずに待っていたようだ。
何か言うには信次は腹がすきすぎていた。美千代も腹が減っているのに食べずに待っていてくれたのだ。
“食事の準備してくれてたんだね。ありがとう。”
“私もお相伴させてもらうわ。家にもそう言ったし。”
そう言って、美千代はテーブル用のガスコンロの火をつけ保温機付きの炊飯器から御飯をついでくれた。
すき焼きはとてもうまかった。
“ところで川崎工業の社長な、あまり値下げを要求しなかったよ。”
“珍しいわね。いつもとことんまけさせるのに。”
“うん。しかし今日のすき焼き美味しいね。”
“そうよ。肉を高いのかって来たからね。”
“そうか、ありがとう。”
食後、美千代はコーヒーを入れてくれた。コーヒーを飲んだ後、ふとんを引き始めた。
“今日は疲れているから。”
信次は言ったが、全然聞こえないふりをして、裸になってふとんにはいった。
“ねえおいでよ。”
美千代が誘う。
信次は、
“別れなければ。我慢しなければ。”
と思うが、下半身は血が充血し、若い欲望が全身に押し寄せてくる。
焦れったく思った美千代は裸のまま出て来て信次の服を脱がせ始めた。
もう信次は抑制がきかなくなって、自分から下着を脱ぎ、裸になって美千代に抱き着いてくる。
“うれしい。”
と言ったが、その一瞬に、美千代は信次から信次や自分のにおいとは違った女性の匂いをかぎとった。2人はもつれながらふとんに倒れ込んだ。
ふとんの中での奮闘の後、優しく美千代にキスしてくれた信次に向かって、
“私妊娠したみたい。”
美千代は言った。
シャルムいや信次はものすごい衝撃を受けた。


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