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作品名:700年後の恋 作者:兵藤 順一

第23回   愛再び
翌朝、朝食を食べた後、皆で歓談中にキアリとキリアーニがやって来た。
“兄者。おおキアリか?キリアーニも。”
“全快なされて良かったですね。お命が危ないので気が気ではありませんでした。”
キリアーニが嬉しそうに話す。
“ああ、生死の境をただよっていたがね。何事もアッラーの御導きによるものだよ。”
シャルムもみんなが言うように自分にはアッラーの神がついているような気になってきていた。
“我々も父上とビグドリア国討伐に一緒に行ってたのですが、父上がアルハンブラから兄上が回復なされたと言う手紙を受けて、”“お前らは一刻も早くシャルムに会いたいだろう。アルハンブラに戻って良いぞ。”“と言ってくれたので、すぐに戻って参りました。実は昨夜遅く着いたのですが、一眠りして参りました。ダリルも来たがっていた様子ですが、ダリルは騎馬隊の隊長になりましたので、来る事はできませんでした。”
“そうか、じゃあベケルビダが引退して、ダリルに変わるのじゃな。そうするとキリスト教徒との戦いも有利になっていくな。彼等は騎馬同士の戦いを重んじるからな。最近ではベケルビダは結構不利な戦いをしていたように聞いているからな。”
戦いと戦いの間に、騎馬同士の1対1の戦いをする事がある。その時は代表者が戦うのだが、戦いは数時間に及ぶ。もっとも、優れたもの同士なので、傷つく程度で終わるが、以前のベケルビダは明らかに優勢だったが、最近は明らかに劣勢である。そこからしても引退の日は近かったのかも知れない。
“兄者。話したい事が山ほどあるのですが?”
“そうか。それならわしの部屋に行こう。”
と言って、食堂からシャルムの部屋に移った。
シャルムの部屋で、キアリはベネヂアからスパイ活動の大事な事を学び、ナハトム王からは、王者の駆け引きを学んだ事を詳細に話した。シャルムにも王として役に経つ話であった。しかし、シャルムは静かに言った。
“次の王はキアリがついでくれるよな。”
それにはキリアーニがビックリして、
“何をおっしゃいます。いまアルハンブラではシャルム様に王位を次いでいただいて、キリスト教徒との戦いを有利にしていく事ができるともっぱらの噂です。アッラーの神も御加護しているようですから。”
“それは父上で充分為さるだろう。今まで不利だったのは資金繰りがうまく行かなかった為で、今、キアリから聞いたように莫大な金が手に入るようだからな。やはり3万の兵ではそうならざるを得ないだろうな。わしは何よりも大事なものを手に入れたのじゃ。それで充分だし。わしはこの世を超えるような気がしているのじゃ。”
“それは、どういうことですか?”
“まあこの事はこれくらいにして、食事は一緒に食べていくだろう。いつものようにアベルが用意してくれているだろうから。”
シャルムはそれ以上の事を話さなかった。シャルムにも来るべき死の予感が少しはあったかも知れない。懐に大切にしまっている1つの丸薬が、永遠の愛を予感させている。キアリもキリアーニもシャルムが何かをかくしている事は分かったが、もうそれ以上は聞けなかった。食事後2人は後ろ髪を引かれながらも帰っていった。シャルムは独り自分お部屋に帰って来た。
“そうだ。キアリが、この王国を継げばいいんだ。そう考えると気が楽になる。私達は永遠の恋人になれるんだ。”
ナイーダの言う永遠の愛、未来に結ばれると言う事が具体的には分からなかったが、不治の病をなおしてくれた薬に何か秘密がありそれを信じている。いや、ナイーダの言う事は全て信じているシャルムであった。1人になるとシャルムは、全てがナイーダの事を思い出す。会いたくてたまらなかったが、10日以上は会うのを我慢しようと強い意志力で押さえ込んでいた。やがてナイーダの見張りも無くなった事を風の噂で聞こえてきた。皆はナイーダの見張りは何だったのかいろんな噂をしていた。
“シャルム様の看病をして悪魔が付かないか見張っているのでは?”
“ナイーダ様は御綺麗だから、誰かが忍び込まないように見張っているのよ。A大臣なんて怪しいそうよ。”
“不審なアフリカのスパイがナイーダ様の命を狙っているそうよ。今の紛争はナイーダ様が関係しているようだから。”
“見張りがいただけでこのような噂がたつのだから、わしとの関係が明らかになったら大変な事になるだろうな。”
とは思うが、シャルムの欲望はもはや押さえきれるものではなかった。10日と数日たった月の綺麗な晩に、シャルムは地下の秘密の通路の扉を開き、秘密の通路を通ってナイーダの部屋の中庭に出てきた。中庭から壁をよじ登ってナイーダの部屋の窓に辿り着く。窓を小さく叩く。
“トントン。”
ナイーダは読書をしていたが、小さな音に気ずいて、窓際まだやって来た。窓の外を見るとそこには愛しのシャルムがいた。窓を静かにあけるとシャルムが入って来た。
“会いたかった。”
“私も。”
こうなると愛しあう2人にはもう言葉はいらない。翌朝未明まで何度も愛しあった。翌朝未明にはまだ皆が起き出す前に、シャルムは出ていった。
“今度は2日後に来る。”
“お待ちしています。”
本当は明日にも来たかったが、睡眠不足を恐れた。昼はいつものような日課を過ごし、次の夜はこんこんと眠った。


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