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作品名:700年後の恋 作者:兵藤 順一

第21回   ビグドリア王からの手紙
翌朝、タリファからタンジェは船の旅となる。3万の兵を乗せジブラルタル海峡をこえるのである。わずか14キロであるが、馬を乗せ、今からは現地調達もままならぬ食料を乗せ、武器や装備品を乗せての船旅は全部が終わるまでは殆ど1日かかった。船は何回も往復する。ナハトムとキアリは第2陣で船に乗り、タンジェに着いた。今日はタンジェに1泊する予定だ。ゆっくり進行する事で、ビグドリア勢への圧力ともなる。タンジェに来ると、雰囲気が一変する。スペインはいろんな色彩があるが、タンジェはレンガ色一色である。タリファもかなりレンガ色に溢れているが、その他にもいろんな色彩をとどめている。しかし、タンジェは何もかもがレンガ色なのである。そこに住む人々の雰囲気も微妙に違っている。キアリはアフリカに来たのが初めてなので、物珍しくてきょろきょろしている。船をおりると、タンジェの市長が迎えに来る。タンジェの市長はキアリの母方の親戚のものだそうだ。キアリが王の横に座り王と一緒に部族長の挨拶を受けていると聞いているので、とても嬉しそうである。2人を立派な屋敷に案内してくれた。
“御ゆっくりおくつろぎください。”
とは言ってみたが、入り口周囲にはここでも部族長が貢ぎ物を持ってたくさん押し寄せてきている。アフリカの地では数百の兵を連れて加担しようと言うものもいた。そのものの名を書記が筆記して、今回はこの3万の兵で間に合うので、次回キリスト教徒の国との戦いに是非参加して欲しいとの約束を取りつけ、グラナダの土産物を与えて、面会後、王とキアリが挨拶を受けて、部族へと帰ってもらった。部族長達も王と会える絶好の機会の為、数多くやってくるのだ。
部族長の訪問が余りにも多い為、明日の出発を1日伸ばす事となった程である。1日伸ばしたところ、ビグドリア王からの手紙が来た。
“全世界の王となるべきナハトム王様。私はいつでも貴方の僕(しもべ)でした。貴方様に対しては何の謀意もございません。ルイトン国との事は、ほんのうちわ争いでして、私の実の娘であるナイーダを私の許しも得ずに、貴方様に差し出した事も1つの原因でございます。いえ全く不満はないのでございますが、実の父親は私でございます。一言、親の許可を取るのが最低の礼儀だと思いますが、ナハトム王様はいかがお思いでしょうか?その事を知らせに言った私どもの使者も、全く行方不明になり、帰って参りませんし、私どもは途方にくれてた次第でございます。ブッテリア様から誅せられたとか、会議の中で聞いて驚いたものでございます。会議でも私達はシャルム様に戦うつもりはない事を訴えたのですが、シャルム様には聞き入れられずに戦争が始まってしまいました。シャルム様の怪我は、かすり傷程度だとこちらには知らせが来ていますのに、あのような状態になるとは、もしかしたらルイトン国の謀略もあるのかも知れません。その後の、ブッテリア様の停戦にも合意致しておりますので、重ねてグラナダ連合国との戦争する意志はございませんので、そのへんを充分御くみ取りください。尚、和平が成立した暁には、我が国の金の排出量の半分を提供させていただきます。金の産出量は月間3000万メレニアになります。貴方様には1500万メレニアを提供する用意がございますがいかがでしょうか?貴方様をいつもお慕い申し上げているビグドリアより。”
その手紙を呼んだ後キアリに読ませた。キアリが読み終わると、
“どうじゃ。キアリどう思う?”
と手紙をナリニク将軍に渡しながらそう問いかけた。
“はい。金の産出量がこちらの情報とは違うようですが、ビグドリア王は嘘を着いてるかも知れません。”
“嘘をついているかも知れないではなくて、嘘をついているのじゃ。こちらの情報は正確だからな。まだこれは最初の手紙だからな。よし書記を呼べ。すぐ手紙を書く。この手紙を持ってきたものはどうしている?”
“はっ。見張りがついて見張っておりますが。”
ダリルが答えると、
“それでよい。もう少し見張っておけ。手紙ができたらその者に持たせよ。”
書記がきたので、
“その方らも聞いておけ、”
と言って書記に手紙を書かせた。
“ビグドリア王の気持ちはよく分かった。しかし我々の情報では金の産出量はもっと多いように聞いている。また、我々の国はキリスト教との争いで、大変な出費をしている。3年間でも金山の権利を我々に預けてくれないか、3年経ってキリスト教の者達をスペインの地から追い出してしまったら、金山はお返しする。我々と戦って全滅すると考えたら決して高い買い物じゃないと思うが如何かな?   ナハトム王より”
“次の手紙でビグドリアがどの程度金山の産出量を言ってくるか楽しみじゃて。”
そう言ってその手紙を相手の使者に持たせた。
“次の手紙を持ってきた使者には風呂に入れ、美味しいものを食べさせできるだけ歓待してやれ。またわしの手紙を持っていってもらうからな。”
キアリにはどうして今度の使者は歓待するのか分からなかった。しかしそれにもナハトム王の巧妙な策略がかくされていたのだ。こうして遠征に行っても忙しいナハトム王のビグドリアに対する策略は3万の兵とともにビグドリア王国に近づくにつれますます迫力をますのであった。
次の手紙はアフリカの地を行軍中についた。前回の使者とは違っていたが、急いでかけてきたらしく馬も衣服もぼろぼろであった。王は何と行軍を止めて、有力者の家を借りそこの風呂を借り使者を歓待させて食事も用意していたアルハンブラの名産物を食べさせた。使者はすっかり戦争はないものかと思い込んだ。しかし王の予想通りのビグドリア王からの手紙であった。
“全世界の王となるべきナハトム王様。貴方の僕、ビグドリアは部下の報告を充分聞かず、金の産出量は間違っておりました。6000万メレニアと言う事でした。それで、6000万メレニアの半分量を提供する用意はございます。我々の国も河川の修復、城の改築、ベルベル人の傭兵や、遠くサウジアラビヤやイラクからも騎馬兵を雇っておりますので金の半分は必要でございます。我が国の財政も逼迫しておりますので、そこの所を良く御汲み取りください。なお交渉に寄りましてはフェズリア国の一部を貴方様の国として差し上げますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。   貴方様をお慕いするビグトリアより。”
馬上にてこの手紙を読みナハトムはキアリ、ナリニク、ベネヂア、ダリル、キリアーニと回し読みさせて皆が読み終わるまで黙っていた。皆が読み終わるのを確かめて、
“思ったとおりじゃ。使者は歓待しているか?”
と確かめた後、書記を呼んで手紙を筆記させた。その間進軍は止まり、熱い中、皆何故止まっているかいぶかしがっている。
“ビグドリアよ。お前は何か勘違いをしている。グラナダ連合王国に入るという事は、騎馬兵を雇うのも、ベルベル人を雇うのも全てわしの許可がいるのだ。河川の修復や城の改築もいちいちわしに許可をえてわしが許してはじめて修復や改築が認められるのだ。無許可で河川の修復や潅漑事業、城の改築をするのはいずれも謀反と思われる程だ。お前はグラナダ連合王国に加盟しないと言う事は、我々にとっては宣戦布告をしているのと同じ事である。また、前回のわしの指摘にもかかわらず、金の産出量はまだ嘘をついている。いずれにしても宣戦布告ととれる。和平交渉は決裂した。以後手紙は受け付けない。”
風呂に入り充分休息をとった使者に、新しい衣服、馬をとらせた後その手紙を持たせて、送り返した。キアリに、
“使者を歓待した訳が分かったか?”
“いえ。手紙の調子はひどいのに、使者にはあのように歓待するとはそのギャップが良く分かりませんが?”
“まだ交渉の余地はあると言う事じゃて。”
と言って、
“フォッフォッフォ”
と笑った。そして、
“次の使者は2回程、手紙とともに突き返せ。3回目の使者が来た時には手紙を受け取れ。3回目の使者来たらな。キアリ来ると思うか?”
“和平交渉をしたいなら来ると思いますが?”
それを聞くと王は、又、
“フォッフォフォ、フォフォフォ。”
と笑い続けた。


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