モナムは中にはいってきた。 “王子様おめでとうございます。ナイーダ様看病御苦労さまでございました。後は別の女をつけますのでゆっくり自分の御部屋でお休みください。” “いえ、もう少し私が看病します。私しか分からない事もありますので。” “もう駄目です。王子様が意識が戻られたらあらぬ誤解を生じます。これ以上は一緒に居る事はできません。” モナムも2人の間の恋愛感情は感じ取っていたが、まだ穏便にすまされると思った。しかしそうもいかなくなってきた。 シャルムが、 “私達、愛しあっているんだ。” “王子様それは聞かなかった事にします。ナイーダ様も忘れて下さい。イサクも私も口が堅い人間ですから。” そうして優しく、 “ツバリテル、こっちにおいで。” と呼んで、 “ツバリテルお前も良く尽くしてくれたね。褒美をあげなくてはね。” と言って、あっという間に剣で胸を刺し、殺してしまった。 “これで秘密を知るものはいなくなりました。よろしいですな。” 王子もナイーダもイサクさえも、突然の恐怖に身を竦めている。 誤衛兵を呼び、 “この女がそそうを起こした。この女をかたずけさせて、ビネリー王妃とそうだな、シャルム王子が仲良くしている奴隷の男女がいるよな。あの者たちを呼べ。” 何人か人を呼び、ツバリテルの遺体をかたずけさせて、 “ナイーダ王妃を王妃の部屋に綴じ込めときなさい。私が行くまで、決して誰も口を開いてはいけない。王妃が言う事も聞いてはいけない。耳にふたをしておくように。王妃の言う事を聞いたらら殺すからな。” そう言ってナイーダの口を塞いでしまった。ナイーダは恐る恐る、 “王子と2人きりで5分だけください。” と言ったが、モナムは、 “駄目です。王妃様。私が行くまでもう一言も喋らないで下さい。” これで王子に薬を渡す機会を失ってしまった。 遺体をかたずけて、シャルムの母ビネリーとアベル、ナタリーが到着した。ナイーダはもう自分の部屋に監禁されていた。 “これはビネリー様お呼び立てを致しまして。” “シャルムの意識が回復したと聞いたのですが?” “そうなんですが困った事が起こりまして” 中にはいっていくと、血の後を何人かが拭っている姿が見え、ベッドの横に無言で座ったシャルムの横に護衛の者が3人付いている。その前にイサクが呆然と立っていた。 “モナム。これは何事です。” とはいってもシャルムの意識があるのを知って、 “シャルム。生き返ったのね。” とシャルムの肩を抱き、さめざめと涙を流した。 “皆のもの出ていくように。その方ら2人は残れ。” アベルとナタリーを手で差して、そう言った。 血を拭き終わった使用人と、誤衛兵3人が出ていくと、モナムは再びトビラの外に顔を出して、 “この外のトビラで誰もはいらないように見張っておけ。” と3人の誤衛兵に命令した。 これで部屋の中にはモナム、シャルム、ビネリー、イサク、アベル、ナタリーの6人が残った。部屋の外のドアをへだてた場所にも誰もいなくて、そのさらに外の廊下に面した場所に護衛兵が3人立って居る事になる。部屋の中で何が起こっても誤衛兵までには物音1つ伝わらない。アベルもナタリーもシャルムが生き返った事に涙を浮かべて佇んでいる。 “実はここだけの秘密で、グラナダ帝国最大の危機がやってきています。” 大袈裟な物言いに皆息を潜めた。 “シャルム王子とナイーダ様が不義を犯しました。” 余りの驚きに一同声が出ない程だった。 “そこで私はその危機を終わらせる為に1つ提案をしたいと思います。3人のみなさんでシャルム王子を見張り、説得してナイーダ様を諦めさせて欲しいんです。ナイーダ様は私が説得します。そうしてこの秘密をこの6人いや、ナイーダ様を入れて7人が守っていくならば、帝国の秩序は保たれ、次期王のシャルム様も王位に付いた後は場合によってはナイーダ様を妻に迎えてもいいように私が計らいます。勿論他の女性が良ければそれも御気の召すままでございます。ただ、いまはいけません。ナハトム王様がこの国の絶対主権を持っておられるのですから。この秘密が外にもれたら、シャルム様は死罪。ナイーダ様もただではすみません。まだ今なら間に合います。” 王子が弱々しく聞いた。 “ナハトム王にナイーダを私にくれるように頼んではいけないだろうか?” “さっきから言っているように秩序が保たれません。この事が公になれば、王の絶対主権にひびがいってきます。そうすると帝国の基礎がぐらつきます。他の国と戦争するより、こんな秩序を乱す事が国の崩壊には1番危ないのです。シャルム様も王になると分かります。今回の奇跡的に蘇った事も、アッラーの神に選ばれた者として評判になり、次の王は間違いありません。是非とも自嘲して下さい。” “シャルム。モナムがこれほどいっているのです。今はナイーダの事は諦めなさい。なあに時間が経てば忘れますよ。恋なんてそんなもんです。” “それでですね。取りあえずは1週間程ここで4人でお暮らしください。シャルム様とナイーダ様が本当に諦めたかどうかが確かめられれば、基の生活に戻します。それまでは私のいうようにして下さい。” “分かりました。モナムの言う通りにします。アベル、ナタリーもいいわね。” “仰せの通りに致します。” イサクとモナムは出ていった。 “イサクよろしいな。” “はい。秘密は必ず守ります。” イサクは数々の秘密を一切口に出さない男である。医者とはそういう職業なのだ。 モナムは1つため息を付き、 “次はナイーダ様の番だ。” 女性に諦めさせるのは至難の技だと思っていたのだ。 “泣き叫ぶだろうな。” とも思った。 “ナイーダは厳重に見張られていた。” “ご苦労様。いつものように誤衛兵1人残していつもの業務に戻ってくれ。” ナイーダは部屋で着替えていた。着替えるとまた美しくなる。 “ナイーダ様。” と声をかけると、 “もう喋ってもいいかしら?” といってきたので、 “もうよろしゅうございます。先ほどは失礼致しました。” “秘密を守る為とはいえ、人を殺す事は関心しませんよ。” “グラナダ連合国の秩序を守る為にはしょうがないのです。” “私と王子の関係でしょう。私は1つだけ条件をのんでもらえば、王子と別れます。その1つの条件とは5分間だけ会わせて下さい。そうすると必ず別れます。” “2人で死ぬんではないだろうか?” といぶかっていると、その表情を読んで、 “2人で死んだりしませんよ。王子に別れるよう説得するだけです。私にとって王子が生き返った事だけでも、嬉しい事ですから。” モナムは、 “この女ただ者ではないな。” と思ったが、 “これは秘密が守れそうだ。” と一安心したのだった。 ナイーダはとにかく薬を渡したかった。後4日飲み続けさせたかった。ナイーダは昨夜愛しあったのでもう満足だった。後は心の中で永遠に愛していくつもりだった。体はナハトムのものになっても心はシャルムのものだと思っていた。
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