その日は何も無くて終わった。夕食を食べると、看病の疲れで熟睡した。夜中の2時過ぎに2人の刃物を持った男達が、マレナリアを縛っていた。ナイーダに刃物を首筋に当て、 “おれたちは強盗だ。金目の物を全部よこせ。” と言って、ナイーダの身につけている指輪、首飾り、頭につける金の頭飾り、腕輪、足輪などを取ってしまうと、 “お前は、ジプシーか?” と尋ねてきたので、 “いえ、アルハンブラ宮殿から用があって尋ねてきました。” と言うと、 “何の用だ?” と聞かれたので、とっさに、 “王様が、アフリカに遠征為さっているので、無事を祈ってお祈りしてもらいに来ました。” ジプシーは、占いやお祈りなどをするのも有名である。 もう1人が、その部屋のいろんなものを探していたが、 “兄貴。大したものはありませんぜ。” と言った。ナイーダの首にナイフをかざして、 “おい!他に金目のものはないのか?” と恐ろしい顔でおどす。 ナイーダは人におどされた事など一回も無かったので、恐怖におののきながら小さな声で呟いた。 “ありません。” すると子分の方が、マレナリアにナイフを当てて、 “ジプシーの秘密とかそういう話は無いのか?” と言ったので、マレナリアは、 “ありません。” と答える。 “嘘をつけ。この首をかっ切ってやる。” 首に当てられたナイフが皮膚に食い込み、血がほとばしる。 “わ、私は知りませんが、そのナイーダ様は何か聞いているようです。” 2人の強盗は、ナイーダの周りに集まってきた。 “お前!何か秘密を聞いてるな。” “いや知りません。” “このナイフを心臓に突き立てるぞ!“ 恐くてたまらなかったが、どんな脅しにも口を噤んでいた。 “この女強情で、なかなか口を割らないぞ。夜も白み始めたから、こっちの女を攻めようか?” “私はそれ以上何にも知りません。私はただの下女なんですから。” “フッフッフ。そうじゃ無いんだ。おいナイーダとやら。お前が秘密を喋らなければ、この女を殺す。いいか?お前が喋ればこの女は助けてやるが、喋らなければ殺すぞ。” “待って下さい。私の命をとって下さい。その人は助けて下さい。私は何にも話しません。” “ほう。話しませんと言うのは何か知ってると言う事だな。” 嘘を付いた事のほとんどないナイーダはついこう喋ってしまった。 “これでは駄目だ。もっとしらばっくれないと秘密は守れない。” ナイーダはこう思って、しらばっくれる方法を会得した。絶対に秘密を守り抜こうと決心すると、強くなり、恐怖心もなくなってくる。 “本当に何も知らないわ。ただ王様の勝利を祈願しに、来ただけなの。” ナイーダは自分の頭をブロックしてしまった。 “私は王の勝利を祈願しに来ただけなのだ。” と無理矢理思い込んでいた。こうなると女性は強い。何ごとにもたじろかなくなる。もう泥棒がなんと言っても知らぬぞんぜぬである。合を煮やした泥棒は、 “おいその下女を殺してしまえ!” とナイーダの首にナイフを当てている方が、手下に叫んだ。 “お前が喋らなければ、この女が殺されるんだぞ。” ナイーダは黙ったままである。 “兄貴本当に何も知らないのかも知れませんぜ。” ナイーダは “マレナリアが殺されると自分もシャルムも死ぬつもりである。そうすると少なくともダリアは助かる。話せばおそらく4人とも殺される。いや、泥棒さえも殺されるかも知れない。そうすれば話さないで3人殺されたがましである。” 全くナイーダはたじろかない。 “シャルムとの永遠の愛に生きるつもりになっている。ジプシーはよく永遠の愛と言う。ナイーダも愛は永遠のもの” と思いつつあった。 丁度その時、隣のアネルダの屋敷が騒がしくなった。 “ナイーダ様の家が変だぞ。” “泥棒がはいったのでは無いか?” “武器を持って駆け付けろ。” 泥棒は慌てて逃げ出した。アネルダのお付きの3人がやってきた時ナイーダは虚脱状態にあった。 “助かったのだ。” そう思った。マレナリアが叫ぶ。 “向こうの方向に逃げました。ナイーダ様の首飾りなどをとったようです。” “まかしとけ。” 3人で追いかけて行く。3人とも強そうである。 2人の下女がマレナリアの縄をとき、アネルダもやってきて、 “大変な目にあったわね。でもあの3人がきっと泥棒を捕まえてくれるでしょう。3人とも足が早く腕っぷしの立つ連中だからね。” ぼんやりとアネルダを見ていたナイーダは意味ありげに、ニコッと笑った。 その早朝はナイーダはもう眠れなかった。少し興奮していたのだ。 翌日、ジプシーの食べ物を食べて、ナイーダはマレナリアにジプシーの話を聞いて、アフリカの自分の国の話をした。昼過ぎに、3人のお付きの者達が帰ってきて、 “泥棒をとっ捕まえました。ナイーダ様の大事なものも取り返してきました。” と言って指輪や腕輪、首飾りなど全部ナイーダに返された。ナイーダは心のそこで、 “もしかしたらこれはお芝居も知れない。何にしても絶対秘密は守ろう。いや全く知らないものと思い込もう。” と思った。 夕食後、アネルダがやってきて、 “私は用時があって、ちょっとでてくるからね。留守番を頼んだよ。隣の家に3人の今朝お宝を取り返した連中がいるからね。何かあったら大声をあげればすぐやってくるよ。マレナリアも頼んだよ。” と言って、出て行った。
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