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作品名:サイコろ素敵 作者:Sita神田

最終回   結局は収まる
外では、ようやく原田が恭子に追いついていた。
恭子は、巻きスカートを止めているボタンがはじけ飛んでいる。
開かないスカートで強引に、しかも泣きながら走って逃げていたのだ。
原田は自分の上着を恭子の腰に巻くと、落ち着くように肩を抱いた。それでも恭子は、パニックに陥り、狂ったかのように泣き叫びながら、悲鳴を上げながら暴れている。明らかに昼間秋本に会う恭子と、夜になって秋本に会う恭子とは違う。
原田は、恭子のあまりの狂乱ぶりに、背中に冷水を浴びせられたかのような感覚に、恐怖が襲っている。
とにかく、三人の所へ行かなくてはならないが、部屋へ向う道は恭子にとって拒絶するものであった。
原田がいることで、ようやく落ち着きを取り戻しつつあるが、引っ越したばかりの家には帰れない。
そこへ、ゆかり、益田、加藤の三人がやって来た。
「今晩一晩だけ泊めてくれって。秋本さんが。あたしのウチに行こう。」
ゆかりの家は駅にして隣だが、歩いて行ける距離だった。
恭子はゆかりを見て安心したのか、嗚咽を上げて泣き出した。
原田は、その恭子を見てちょっとだけ安心した。


会社では、恭子の上司である秋本は、恭子の引越し先を探りだせないはずは無く、到底秋本に隠密で住所を変えると言うことは恭子にとって不可能であった。
原田たちにとって、極めて異常な人格である秋本も、会社の中では模範的な社員、までいかないまでも、極めて普通のサラリーマンである。
加藤は、普通の人間の精神が破壊される恐怖を見た思いだった。秋本も十分サイコと言えるが、恭子の精神も加藤にとっては十分理解不能であった。

この後、原田は恭子の新居に、寮の荷物をまとめて転がり込み、世間で言う所の同棲を始めた。
加藤は、現場に常駐することになり、事の顛末は後から聞かされたが、秋本は離れ、恭子の精神も健康に戻ったそうだ。そして、二人には娘が産まれることになるが、出産までには結婚式は間に合ったようだ。
加藤は三人の結婚式でも、まぁいいんじゃないの?と思ったりもしたが。
益田は、この時以来ゆかりを意識していたが、実る事は無かったそうだ。
そして加藤は、年数を重ねた後、会社の命令で出向に出されることになった。

おわり


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