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作品名:ファング・プライズ 作者:Sita神田

第15回   ダンジョー号潜入
ダンジョー号のモニタパネルに、神経質そうな鼻の高い年配者が映った。
「見慣れない顔だな。ウチから乗り込んだ二人と、先生をどこへやった?」
発信元は#405。ダンジョー号は、発信元の通信ポートを検索して開くなり、スタンガードが言った。
「どこへやったとは、随分人聞き悪いな。人ンチにきて、いきなり後ろから殴ったり蹴ったりの無礼な奴らなら宇宙に捨ててきたぜ。最も、コッチも一人宇宙に飛ばされた。仇を討ちに来た。覚悟しやがれ。」
「それは、我々にケンカを売っとるという判断でよろしいかな。」
「いや、ケンカのオシウリはそっちだね。こっちも上司に報告しなきゃならんから、そこが大事なんだ。おれ達はケンカを買ったんだ。」
「どちらにしても、同じ事だ。ドズルは頂くよ。」

ダンジョー号の外では、巨大な磁力線放射器を設置した巨大研究船が6艘も取り囲んでいた。
巨大なレーダーを思わせるパルス発生器の照射先は6艘全ての船においてダンジョー号に向いている。作業ロボットがダンジョー号のコンテナに近づくと、6本あるアームのうち、2本でコンテナに取り付いた。と思うと、レーザーカッターがコンテナの外壁を切出した。
「くそったれ。随分直接的な物盗りだな。」
スタンガードは作業ロボットを払いのけようと、ダンジョー号両舷についたビームガンで狙いをつけようとしたら、ダンジョー号の操作の一切を受け付けなくなっていた。スタンガードは、窓の外の磁力線放射器を見てつぶやいた。
「ちきしょう、アレが原因か。」
コンテナの外壁が見る見るうちに切られ、蓋を開けられた形になってしまった。
と同時に、ダンジョー号のアームであるユニックが外れると、ダンジョー号の周りを取り囲む船の1艘に向かいユニックがひねられると、ウインチが発射された。
船に取り付いた、パルス発生器の根元にウインチが食い込むとダンジョー号のユニックについたウインチが巻き取られる。
ダンジョー号は、ウインチに引っ張られ、6艘の船の中心からドンドンずれて行った。
「ざまあ見ろ。ユニックはメカニカルマニュアルで動かせんだ。」
ハンがユニックの手動操作パネルで動かしている。
と同時に、ダンジョー号はビームガンを作業ロボット目掛けて撃った。作業ロボットはコンテナに取り付いたまま火花を散らし、動かなくなった。がさらに、3機の同タイプの作業ロボットがダンジョー号に取り付き、レーザーカッターを光らせている。
ダンジョー号は、エンジンに点火すると、#405の港に向って瞬間的に進んだ。ダンジョー号は、#405の港に体当たりする形で飲み込まれた。ダンジョー号の後方では、ウインチで固定された1艘の船が、ゲートに磁力線放射器を当てて、船ごと大破した。
#405の港の中に不時着した形になったダンジョー号は、それでもビームガンを港の管制塔に向けて撃った。
なおも作業ロボットは、コンテナを焼き切り、中に積載されたコンテナを引っ張り出しているところだった。
ダンジョー号のコックピットから身を乗り出して見ると、銃を手に5人ほどがダンジョー号に取り付きハッチをこじ開けている。そして、コンテナの醜くこじ開けられた部分には、作業ロボットのアームが開いているのと同時に、作業員がこれまた銃を手に乗り込んでいるところだった。

エリア#405の作業員たちは、ダンジョー号のハッチを細工していた。外壁のコネクタ部分を破壊すると、あっさりハッチが開いた。
「気をつけろ、二人がやられたそうだ。一人を合い打ちにしたらしいから、乗組員は二人残っている。生かしておくな。」
リーダー格の男が後方から他の連中にインカムを通して指示を出した。
一人残らず「ラジャ」と指示を遂行する意思を見せた。ここでも統制が取れている。
ハッチから中に向けてレーザー銃を撃った。ダンジョー号の中の壁が焼けただけの気配を感じて、中を覗くと、誰もいない。それを感じて一人、二人とダンジョー号の中に踏み込んでいく。居住区画に行くと、扉が閉まっていた。
「扉を破壊する。離れろ。」
声をかけた隊員が、レーザー銃を構え扉に向けて発砲した。銃口が眩いばかりに発光した。刹那、レーザー銃が暴発した。
「なにっ!?」
後から来た隊員が信じられないといった趣で、いま発砲した隊員を抱え込んだ。銃を持っていた腕はおろか、ヘルメットまで焦げている。
あまりの衝撃に、気絶をしてはいるが、戦闘服のために外傷は無いようだ。
「銃はおれたちの魂だ。常日頃からお手入れをしとかなければならん。」
後から来た二人目が、同じように扉に向けてレーザー銃を構えた。トリガーを引いた途端、またもや銃口が光った。慌てて銃を投げ捨てたが、間に合わず手から離れた位置で暴発した。
隊員は、ある程度構えていたために、わずかに暴発に巻き込まれただけで、体が飛ばされただけで済んだ。
「ぐ、偶然じゃないのか。ここは何かおかしい。この船の中には何かあるぞ。」
最前列の隊員の怯えは後発の隊員にも伝染する。ダンジョー号に押し入った全ての隊員は、瞬く間に恐怖の念に支配された。
「ビビるな、バールでコジ開けろ。」
最後列の隊員から悲鳴にも似た怒号が飛んで来た。威勢のわりには声がこわばっている。


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