ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ・・・ 「バンっ、バンバンっ!」 「ちきしょーっ!うるせえっ!」 目も開かずに、手探りで目覚まし時計を止めようとしているから、ぜんぜん目覚ましを止められやしない。 挙句の果てには、怒り出す始末だ。 ユキは、目覚まし時計相手に、朝っぱらから血圧を上げるのが日課だ。
「くそお、なんか、夢を見たぞ。ひどく疲れる夢を。」 ボサボサの髪の毛をかきむしりながら、首を捻った。 思い出そうとしても、なかなか思い出せない。 歯を磨いている時も、コーヒーを飲んでいても、化粧をしている時も、ずっと夢の事が気になって仕方が無かった。 「どんな夢だったかな?」 いつものユキだったら、 「ま、いっか。」 と、ひと言出すくらいならまだマシで、思い出そうと努力する事すらしないだろう。ユキはそんな女だ。
いつものように、ダラダラと、数ばっかだらしなく受信し、表示されるメールに向っても、 「たまには、合コンのお誘いかなんか、色気のあるメールを送ってよこす気配りヤローはいねぇのかよ。どいつもオランダも仕事のメールばっかしでよー。」 と、毒づくセリフも、飽きもせず毎朝同じだ。 運良く彼氏でもいれば、言葉遣いも変わるだろうし、何よりも、こんな生活環境も変わる。いや、変わって欲しい。いくらユキでも変えなければならない。
その間も、ユキは、ずっと昨夜見た夢を思い出していた。 前回が最終回なのに、チェックを入れ忘れた? まぁ、それもそうだが、もっと疲れる夢だったような・・・
1通のメールに目が留まった。 「ロボットショー、プレゼンの原稿。ブラッキングプリンのセールスポイントについて。」 ぎゃははは、ケッタイな名前。もっとマシなネーミングは無かったのかよ。 ユキは、原稿を読んだ。
「ああ、なんか、いいことねぇかなぁ。」 窓の外から見る空は、いつに無く青く見えた。
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