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作品名:天才医師の殺人事件解決帳@ 作者:Hei George

第2回   南関での死亡者
熊本県警はすごく忙しい時期だった。暴力団抗争による死亡者やけが人。子飼橋の商店の息子の誘拐事件。江津湖で起こった殺人事件。実は美穂はこの江津湖の事件の担当でもあった。おそらく22歳の死亡は熱中症だろうと思われていたので美穂もとにかく確認に行くだけだと思っていた。美穂は誰でもあいている鑑識を連れていくようにと言われたので、鑑識に行き探すと54歳のベテランの黒田がコーヒーを飲んでいたので、
“黒さん南関の死亡者の鑑識をお願いします。”
と言うと、
“ええー熱中症だろう。俺は暴力団の件で忙しいんだ。ちょっと待ってろ!おおーい、誰か手の空いている奴いないか。おい大久保、お前南関へ行け。”
“すいません黒さん。僕は今、DNA鑑定の途中で、さらに江津湖で死亡した人が江津湖の水が肺の中に入っているかの分析もしているので手が放せません。”
“ええい、しょうが無いなあ。じゃあ南関で落ち合おう。俺は鑑識の車で行くからな。南関の桜アパートだったな。そこの駐車場で落ち合おう。”
と言ってジュラルミンの大きなバッグを抱えて足取り重く、熊本北署を出て行った。美穂も皆忙しくしていたので、熱中症だったら早く切り上げて江津湖の殺人事件に戻ろうとサイレンを鳴らしてパトカーで南関へと向かった。
南関に着くと交番の警官が3人待っていて、その中の一人34歳の吉野恵一が前に出て、
“坂井警部補殿。吉野巡査長です。お役目御苦労様です。現場はそのまま保全してあります。発見者は大牟田の勤務先の同僚の木下洋子27歳です。9時になっても出勤してこないので数回電話して会社の命令で、11時に大家と一緒に鍵を開けてもらって息をしていなかったのであわてて110番したそうです。鍵は中からかかっていました。2人とも全く手は触れていないとのことです。”
鑑識の来るのを待ちながら美穂は遺体には触らず部屋の中を見回していた。かすかに芳香がしたような気がしたが、すぐにそれは記憶の外に飛び出していった。すぐに黒田は例のジュラルミンのバッグを持って入ってきて手袋をして遺体を調べ始めた。パジャマ姿で着衣の乱れもなくベッドから起きてすぐに倒れたようだった。
“熱いなあ!”
黒田はそう言って写真を何枚か取り、服を1枚ずつ脱がせて写真を撮り、最後に裸にして前後写真を撮り、美穂に、
“何にもないね。確認して服を着せてね。”
と言われたので美穂も外傷が無いことを確かめて服を着せようとした。
ふと右ソケイ部に針穴みたいのを見て、
“黒さん。これは?”
と言うと面倒くさそうに、ちょっと振り返り、
“蚊でも刺したんだろう。おい君。もういいから窓を開けてくれ。”
部屋の写真を撮りながら吉野に窓を開けてもらった。
ちょっと外気の涼しさが部屋の中に飛び込んでくる。
そして黒田は、
“熱中症だね。何の不審な点もない。後は南関の検死係の開業医がいるからその人に連絡して検死をしてもらってくれ。事件性はないと思うよと検死の医者にもアドバイスをしてあげてくれ。安心して検死をできるからね。じゃあ俺は帰って暴力団のヤマに当たるからな。坂井君あとは頼むよ。写真は後で君の机の上に置いておくからね。”
と言って出て行った。
美穂は、
“吉野さん。検死医に連絡お願いします。”
と言ってもう一度右のソケイ部を見た。
“どうしても何か刺したような傷みたいに見えたので検死医にも確認してもらおう。”
と思っていた。しかしその思いは軽い感じでもしかしたら虫さされかもしれないとも思っていた。
吉野は、
“すいません。いつもの開業医の先生が学会に出かけていないんですが、あのー。僕の同級生で最近開業した医者がいるんですが、その医者に頼んでいいですか?小学校以来まだ会ったことはないんですが?”
“吉野さんの同級生?なんか頼りない気がするけど?いいわ。どうせ熱中症と鑑識が言っているから。最近熱中症が多いようだからね。”
この時は美穂もはやくこの件をかたずけて、江津湖の事件に戻りたかった。吉野が電話をかけていた。
“先生は多忙で電話に出られません。”
吉野の執拗な要求に受付の女性は美穂にも聞こえるくらい大声で答えていた。
“他の医者を探してよ。次の指定の検死医がいるでしょ。”
美穂の催促に、吉野は意地になって。
“俺は南の親友なんだ!。俺の電話を断ると南は絶対にお前を首にするぞ!。”
美穂はびっくりしてその言葉を聞いた。実直で冷静、あまり融通が利かないと思っていた吉野が声をあらだてたのだ。しばらくして、
“なんや!吉野か?ひさしぶりだなあ。どぎゃんっしたとや?”
“今南関の南関2小の近くの桜アパートで死人が出てくさ。検死ば頼むよ。”
“ええー、僕は法医の大学院ば出たけど、検死医の登録はしとらんぞ。”
“そこを何とか。俺も小学校卒業してからお前にあっとらんけんちょうどよかたい。俺もお前に会いたかけん出てこいよ。そしてお前が法医の大学院におったて全然知らんかった。ちょうどよかやっか。”
“僕はたいがい忙しいとぞ。”
“なんばいいよっとか。お前と俺の仲やなかか?昔二人でお前といろんな事件を解決したじゃなかや?”
“あれはお前の1方的な正義感に引きずられただけばい。僕は迷惑してだだけだから。”
“今度も迷惑の続きたい。”
さすがに南という医者は折れて今の仕事はほかの医者に任せて来るというのを美穂は聞いて、
“小学生の探偵ごっことは話が違うのにな。”
と思ったが、
“どうせ熱中症だから。”
と思い、吉野とともに南医師を待った。


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