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作品名:タイムマシン稼働マネージャー 作者:Hei George

第53回   優喜と小百合のデート
翌朝、起きてみるとメールが到着していた。優喜はメールの住所はできるだけ人に教えないことにしていた。教えている人たちはすべてタイムマシンで現代に帰ってきた人たちだけだ。しかし彼らは過去に行き厳しい体験をしているので皆、自分で問題解決能力も強力についていて、まったく優喜にメールをしてくることはなかった。メールを見ると西沢しのぶからだった。
“西沢慶三郎さんから聞いたのだな。”
と思った。しかし優喜はなぜか心臓の鼓動を感じた。
“西沢しのぶは本当にきれいな人だ。”
と思っていたからだった。
メールを読むと、
“昨日から娘の小百合が一晩中泣きっぱなしで困っています。戸田さんが山城美佐さんと仲良く話しているのを見てそれからなのです。私の娘がこんなに感情をあらわにするのは初めてで、私も戸惑っています。もし山城さんとなんでもないようでしたらそのようなメールを娘に送ってもらえませんか?もし本当に彼女と恋人関係だったらそのように送ってもらっても結構です。誠に申し訳ありませんが、あなたのメールの住所は主人の西沢慶三郎から教えてもらいました。娘のメールの住所は//////////////////////////////////////////です。”
優喜は嬉しくてたまらなかった。優喜も北川小百合に早速メールをした。
“昨日は失礼しました。あなたのお母さんからあなたのメールの住所を聞きました。昨日山城美佐さんとは今度のパーティーであなたのファンである私の会社の副社長と話してくれないかという立ち話をしただけです。私はあなたにすごく好印象を持ちましたのでできたら付き合ってもらいたいと思っているほどです。私は今までお互い合意の上、親しく付き合った女性はいません。もしあなたがよければその最初の人となると思います。”
というメールを送り、すぐ朝食をとった。朝食の食事中、早速メールの返事が来た。
“ありがとう。喜んでお付き合い願います。とっても嬉しいです。”
そのあとすぐに西沢しのぶからのメールも着いた。感謝の言葉と娘をよろしくとのことだった。優喜は夢の中にいるような気分だった。しかし現実だった。優喜にとって初めて本気で付き合う女性の存在だった。その日も時間局に行き仕事を済ませると映画の撮影に出かけた。撮影所に着くとすぐに北川小百合のマネージャーが飛んできた。
“私は北川小百合のマネージャーの立川せりなと申します。実は昨日からのことはすべて私、存じていますが、小百合との付き合いの件は私が段取りを整えますので完全に秘密裏にお願いしたいのです。彼女はいま日本で1番といっていいほどの人気があるので、本社としても彼女の人気を守らねばならないのでよろしくお願いします。小百合にも納得してもらっていますので。”
優喜はあまりマネージャーに段取りを取らせるのは、乗り気ではなかったが北川小百合に迷惑をかけるのも良くないと思い、
“分かりました。段取りよろしくお願いします。”
と答えた。
“早速だけど今度の日曜昼、3時に銀座のスバルと言うレストランで1時間だけ会えるようにします。名前を言ってもらえると個室に連れて行ってもらえますので、あなたに用事がなければよろしいでしょうか?”
今度の日曜はどちらの仕事も休みなので、
“今度の日曜日3時、東京銀座のスバルですね。行きます。”
こうやって最初のデートが決まった。
デートが決まってから優喜は落ち着かなくなった。日が経つのがすごく遅く感じる。タイムマシン稼働マネージャーになってからあっという間に日が経っていった。しかしデートの日取りが決まってからは毎日がすごく長い。忙しさに変わりがなかったが、映画の演技をしているときにもいつも気が付いたら小百合を見ていた。小百合のほうはさすがに大女優で一切演技中は演技に集中して優喜のほうは見もしない。とても優喜がちょっと他の女性と話したからと一晩中泣いた女性とは思えなかった。そうしているうちにやっと日曜日がやってきた。優喜は朝から落ち着かない。東京へのワープの予約はちゃんと入れているし、2時間後の帰りの予約も入れている。そして長い落ち着かないデートの約束までの時間もついにそのときがやってきた。3時前10分に銀座のスバルに到着した。小百合はすでに待っていた。
“こんにちは。”
“・・・・・・・・・・・・・・”
“・・・・・・・・・・・・・・・”
優喜はドキドキしている。小百合も黙ったままだ。時折お互い目を合わせるがまた黙ったままになる。そして瞬く間に40分が経ってしまった。
“何か言わなくては。”
と思って焦るが優喜は何にも言えない。言おうとするとドキドキしてくる。
“こんなことは初めてだ。”
と、優喜は思うがどうしようもない。
恥ずかしそうにときどき優喜を見ていた小百合が、
“今度は明日会えますね。とても1週間は待てそうもありません。”
と言いだした。
“じゃあ、映画の撮影が終わってすぐにここに来ることにしましょう。”
と言った。小百合は嬉しそうだった。それをきっかけに優喜はやっと話し始めた。
“昨日はずっと泣いてたの?”
小百合は恥ずかしそうにこくっとうなずいた。
優喜はもう胸がいっぱいになってただ小百合の眼を見つめていた。小百合も恥ずかしそうにではあるが優喜の眼を見返す。相変わらず眼力は強い。
“私はあなたを愛しています。”
と目が訴えている。優喜はさらに心臓のドキドキが強くなる。
“・・・・・・・・・・・・”
“・・・・・・・・・・・・・・・“
“トントン!”
と遠慮深くたたかれた音に二人ともびっくりした。
“すいませんがお時間です。”
マネージャーの立川せりなの声だ。
二人とも黙っていると静かに扉が開けられた。
“小百合さん。今から雑誌のインタビューがありますから、急いでください。”
二人ともあらかじめ用意された料理には全く手をつけてはいなかった。
優喜は一人残されて、料理がもったいなかったので、物質変換送信で自分の家に送ってもらい夕食にしようと思って店の人に頼んだ。そしてワープを使って九州に帰った。


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