北川小百合16歳、彼女の壮絶な人生を芸能プロダクションの下村プロダクションはずっと隠していた。17年前北川しのぶが15歳のとき西沢慶三郎作品の“湖の美人姉妹”の映画撮影で二女役に抜擢された。長女役は17歳の時、国民的美少女コンテストで優勝した沢松あかねだった。明るくて皆に愛される沢松あかねに対してどことなく暗く、おとなしいが美人の北川しのぶは西沢慶三郎の小説の映画化にピッタシの配役だった。北川しのぶが西沢小説のファンだったこともあり、西沢は41歳で飛ぶ鳥を落とす勢いであった当時、映画が完成した時15歳のしのぶは妊娠4カ月だった。勿論西沢慶三郎の子供である。下村プロダクションは1年間完全に北川しのぶの妊娠、出産を隠した。西沢慶三郎も北川小百合が3歳になるまで気がつかなかった。北川小百合は下村プロダクションによって秘密裏に育てられ、幼少時のころから芸能人としての英才教育をされてきた。映画、テレビ、立体DVDに数多く出演し天才子役と言われた。北川しのぶも本人の希望に反してほとんど会わせてもらえずに1週間に1時間という約束でそれも完全に人目の付かないとこで会わせてもらった。しのぶは週に1時間だが精一杯愛した。そして父親のことを、 “今は言えないけど、とても立派な人よ。” と言っていた。幼少のころから立派と母親が言う父にあこがれ、北川小百合は “いつか父に会える”という母の言葉を信じ芸能界で頑張ってきた。個性派の北川しのぶも女優として大成した。西沢慶三郎は数々の女性遍歴と、立派な文学作品を出版してきたが、49歳の時、“山と人間の郷愁”がノーベル文学賞にノミネートされたが落選して急激に自信を失った。その時支えてくれた北川しのぶと結婚。このとき北川しのぶは結婚披露宴に小百合を呼び、西沢慶三郎を父だということを明かすと下村プロダクションに要求したが、子役として数々の作品に出ていて、またしのぶも下村プロダクションのドル箱の新進の女優だったので、 “せめて小百合が13歳になり中学生になるまで待ってほしい。” との下村プロダクションの要求だった。しかし、しのぶの結婚披露宴は小百合の耳にも入り、8歳の小百合は、ますます父親を慕うようになる。正気の父親には会えずに、慶三郎が53歳の時統合失調症で精神病院へ入院の時に初めて父を紹介された。 しかし西沢慶三郎には北川小百合を認識する能力はなかった。小百合を見ておびえるのみであった。小百合13歳の時であった。小百合はいつも父の回復を願って芸能生活に打ち込んだ。3000年前の世界から戻った時初めて小百合は正気の父と巡り合えた。父や母からは、離れて生活しているが小百合の父を正気に戻してくれた戸田優喜は大恩人に当たった。
優喜は小百合のことを、20歳を過ぎていると思っていた。それだけ芸能界に長く、貫録もあった。しかし、香山美香から16歳だということを聞かされてびっくりした。一般には西沢しのぶと北川小百合が親子であることは全く知らされていない。しかし芸能界では周知の事実であった。しかし、さすがに西沢慶三郎の実子であるとは、下村プロダクションの一部の人間にしか知らないことである。そこにいる皆も知らないことだった。それにしても西沢しのぶは若すぎる。どう見ても姉妹としか見えなかった。西沢しのぶはその人見知りしておとなしいタイプから幼く見え、北川小百合はその貫録と積極的な性格から年上に見える。優喜は小百合としばらく話していた。話は弾んだが、優喜は天にも昇る気持ちで会話をし、殆ど何をしゃべっているか記憶がなかった。しかし、そんなことは問題ではなかった。話すことが大事だった。周りからは優喜と小百合の周りには光り輝くカプセルがあるようだった。しのぶも生まれて初めて演技ではなく心から楽しく会話する娘を見てとてもうれしそうだった。
昼休みも終わり午後からの撮影に移った。亀鳥監督も大物女優の西沢しのぶがスタジオに来ているので驚いて挨拶に来た。監督も北川小百合が西沢しのぶの娘だったことは初めて知ったようだ。今までは助監督だったので詳しい情報は伝わっていなかったようだ。緊張している亀鳥監督のもとで午後からの撮影が進んでいく。撮影がすべて終わり、優喜は亀鳥監督にお願いをした。 “監督。お願いがあるんですけど?” “なんだい?” “実はうちの会社の副社長二人を映画の打ち上げパーティーに連れてきたいんですけど?” “ああ。それは皆自由だよ。私たちの打ち上げパーティーは宣伝のためにもなるから関係者の責任で何人でも連れてきていいことになっているんだよ。ただしマスコミ関係者だけはダメだけどね。” “ありがとうございます。じゃあ二人を連れてきます。” “一応その人の名前を安田に教えておいてください。それではまた明日よろしくお願いしますよ。” “それでは失礼します。” 優喜は挨拶が終わると向こうに側に山城美佐が歩いて行くのに気がついた。 優喜は走って行った。 “山城さん!” “あら!悟空さん。お疲れ様。” “私は、本名は戸田優喜と言います。” “戸田さん。大分最初と比べて演技がよくなってきてますわよ。” “あの。打ち上げパーティーの時お願いがあるのですが?” “何でしょう?” “実はうちの会社の副社長があなたのファンでして、パーティーの時、数分でも相手をしてもらえないでしょうか?” “勿論喜んで!そのとき紹介してください。” ちょっと話して別れると背後に鋭い視線を感じた。振り向くと北川小百合だった。優喜は軽く会釈してもう遅いしエアーカーで帰ろうと思った。 小百合の眼は優喜に突き刺さってくる。 “もしかしてやきもちなのだろうか?” ふと思ったがもう時間が遅い。明日も早起きなのでエアーカーでワープして九州の自宅に戻った。
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