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作品名:タイムマシン稼働マネージャー 作者:Hei George

第50回   実験の失敗
翌朝、6時に記憶科学研究所に行き、山田や塩見の報告を聞き、指示を与える。大体は山田に任せてあることばかりだが、新たな研究所のことで優喜の方針も大事にされた。優喜は皆が自由にのびのびと働ける環境を重視した。新たに建築した研究所にうつるときには、問題のある人を除いて全員本採用とすることにしている。脳監査にてB以上の人を選んでいるのでほとんど問題がない。紀子はC段階だったが、これは時間局の所長が緊急に雇ったことでいろんな問題がおこったが、もう母とともに2人とも辞めてもらったので問題なくなった。やめるきっかけとなった亀鳥監督には本当に感謝したいほどだ。
7時に時間局に行くと、研究室からの報告があるというので、時間局の事務仕事は後回しにして、研究室に行った。50階に行くと、麹野、満田が並んで立っていた。
“戸田さん。予備実験として2週間回路で訓練したラットを、記憶蛋白と記憶部位の神経移植を3匹ずつしてみたのですけど、6匹全部が死んでしまいました。どうも記憶蛋白や記憶をつかさどる神経群を移植すると死んでしまうようです。”
山本も現れて、
“いろんな文献を調べてみたら、同じような実験をして記憶を移すことは死を招くという文献が見つかった。記憶は個人のもので移すものではないようだね。君のアイデアは良かったが、記憶を移すと死を招くというデーターは説得力があるよ。自分の記憶は地道な努力によって育むものかもしれないね。”
優喜は、
“楽に記憶をうつせることはできないようだな。やはり英語を覚えることなどは地道に努力していくしかないんだ。”
と思った。麹野が、
“今実験して学習しているラットはどうしましょうか?”
と聞くので、山本を見ると、
“戸田さんさえよかったら、その実験群を私に使わせてもらえませんか?私は以前、細胞内に限局する記憶物質の局在を調べていたことがあるのです。学習したラットの差で記憶物質の細胞内小器官での蛋白の増加を調べてみたいと思います。”
優喜は実験を続ける意義を亡くしていたので、
“山本さんにお任せします。私はどうも実験や研究には向かないようです。1番興味があるのは精神病を起こした人たちの今後の状態です。つまりTMの仕事に1番興味を持っているのです。脳監査も面白いし、この実験系は山本さんに譲ります。”
満田が心配そうに、
“我々3人はどうなるのでしょうか?”
と聞いてきたので、
“3人とも記憶科学研究所の本雇いとしてずっといてもらっていいですよ。来週月曜日に記憶科学研究所が新しいビルが完成し、実験施設も併設されているので、もしよかったら山本さんも副部長待遇で記憶科学研究所に来ませんか?山口所長は反対するかもしれませんが?”
“私はまだ時間局で研究がいっぱい残っているので行けそうもありませんが、3人が記憶科学研究所に行くのなら、私は、時々は訪れようと思います。”
“研究開発部長には来年から山下先生が来てくれるそうですよ。”
と、優喜が言うと、山本の顔色が変わった。
“私も来年から記憶科学研究所に行きます。副部長で雇ってください。今年中に時間局での仕事はけりをつけて発表してしまいます。山下博士には御指導して欲しいことがいっぱいあるのですよ。そうですか山下博士が…………………….”
山本の眼は遠いところに飛んでいた。
優喜は完全に記憶を移すことはあきらめた。記憶を消去することが割と簡単にできたので記憶を移すことを思いついたが、記憶はその個体にとって大事なものである。容易に移せるものではない。
そうこうしていたら8時半を少し過ぎていた。優喜はびっくりして、
“すいません。自分の部屋に戻らなければ、今日は何にもしてないから。”
自分の部屋に戻ると、嫌味な顔をした宮村が、
“今日の書類は書いてないのかね。”
と言ってきた。
“すいません実験のほうで思わぬことが起こったのです。”
“そんなのは関係ない。君はタイムマシンマネージャーとしてここに雇われているので、所長から特別待遇を受けているからっていい気になりすぎているのじゃないかね。事務書類を全部やりあげるまで映画の撮影には行かせないからね。”
と言って何も書いてない事務書類を放り投げてきた。コンピューターがすぐに優喜の机の上に整理されて並ばせる。
“分かりました。映画は遅くなると伝えて事務書類を完成させます。”
“私は自分の部屋にいるからでき上ったらコンピューターに送ってもらってくれ。”
と言って部屋を出て行った。30分も説教を食らわずに
“やれやれ!”
と思って、映画製作所に遅れると電話をかけて、記憶科学研究所の山田に、
“山本が来年から副部長でうちに来てくれる。”
話をして、山本の部屋も用意してくれるように頼んだ。
山田は大喜びだった。
“山本研究員は時間局でも特に有能な人材です。その人間がうちに来てくれるとなると鬼に金棒です。”
と言ってくれた。山口にも連絡すると、
“彼は私の後を継ぐ人材だったのに。”
と残念がったが、結局認めてもらった。
“給料をたくさん払ってやってくれよ。”
山口は冗談のように言った。
時間局の仕事を終了し東京に着いたのは11時過ぎだった。
亀鳥監督はほかのシーンを撮っていた。映画を撮るときは主人公といえども待ち時間が相当多い。待ち時間にはいろんな共演者と友達になれる。控室の部屋にいても挨拶に来るもの、挨拶に行ったがいいといわれて挨拶に行き知り合いになる俳優や歌手。今日は遅れてきた為、控室にはいかずに撮影現場にいると知り合った俳優たちが声をかけてくる。歌手の清原美代加が隣に来て、
“あのグループの歌と踊り素敵ですよね。”
と言った。振り返って、
“あっつ!清原さん。実は私の会社の副社長が君のファンだというのです。まだ亀鳥監督には聞いていないのですが、監督の許可を得たら、打ち上げの宴会のとき紹介しますから相手になってください。”
と言うと、
“あら。うれしいわ。副社長なんて素敵じゃない。社長はあなたなんでしょ。そうとう評判になっている会社ですわよ。”
記憶科学研究所は結構マスコミにも取り上げられ始めている。しかし記憶を消す話はまだ公にはなっていない。
“そのことがマスコミに流れたら大変だな。”
と思いながらも相沢さんのことを頼んでほっとした。撮影は4人の男性のグループがヒラメの服装をして舞い踊っている。とても現代的な踊りである。紀子もやってきて、売れっ子歌手の男性と紀子の高校の先生役の男優を引き連れて優喜のとこにやってきた。2人とも紀子にご執心のようだ。
“戸田さん。今日は遅かったのね。みんな待ってたんだけど、遅れるという電話があって監督は別のシーンに切り替えたのよ。私も予定が狂っちゃったわ。”
“御免。仕事先でちょっと問題がおこってね。かおるさんたちはどうしてる?”
“多分、彼女たちの控室の中にいるんじゃないの。あの二人結構もてているみたいよ。”
すると紀子の先生役の男優が言った。
“美里さんほどではないですよ。しかし3人とも新鮮な感じがなんとも言えませんね。この世界に長くいるといわゆる擦れてしまって新鮮味がなくなってくるのですよ。”
優喜は、
“皆すごく交際上手なのはやはり擦れてしまっているからなのかもしれないな。”
と思った。
ヒラメ達が、歌って、舞い踊るシーンを撮り終わって、亀鳥監督は、
“さあ!主役の4人を呼んでくれ。竜宮城で4人が歌と踊りに聞き惚れてうっとりするシーンを撮るから。”
”いよいよ自分の出番だ。“
と思って、優喜は緊張した。だいぶ慣れたがやはり映画の撮影は緊張する。香山美香も西条かおるも控室から出てきた。


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