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作品名:タイムマシン稼働マネージャー 作者:Hei George

第5回   純子
空中エアーでの睡眠は快適なものだが、昨日から今日にかけては、頭が重くて仕方がない。精神に病のある人の脳監査は大変なことなのだ。本日は毛利純子の脳監査とレポートを見てみることにした。一年前の純子の脳監査をして、優喜は気分が悪くなって吐いた。はいた後をロボットが出てきてかたずける。優喜の脳には純子の暗闇が感じられた。優喜の報告書である。

毛利純子は過去に送られる前の脳は、暗闇で殆ど明かりの見えない状態であった。微かに子犬と、目の不自由な母親が、陰鬱そうな顔でぼやけて見える程度である。ほとんど絶望感と暗闇の世界で中2の時代を過ごしていたが、調べたところによると、小学生の時に飼った子犬が死亡したことがあるようだ。タイムマシンで送られた後も、しばらくは闇の中にいたようだが、時々足の悪い人が、励ましてくれたり、5歳の脳に障害を持った女の子が自分に何かを食べさせてくれるような事実がぼんやりと暗闇の中から現われてきた。さらに、白髪の長い髭と長い髪を持った老人が3人の老女を連れてきて、
“どうやら病が治ったようだね。”
と言うあたりから記憶の扉が開かれ、どうやら純子は病人の隔離所に連れていかれて看病されていたようだ。老人と老女たちが病人の面倒をみているようだ。そこにはらい病や、両手両足のない人、感染症で重症となり死んで行く人、脳に障害が強くて自分では生活できない人などがたくさんいた。それから、5歳の脳に障害を持った女の子に慕われながら、純子は病人の世話をすることを覚え、7か月過ぎたころには、普段の人が住む所にも出られるようになり、それでも希望して病人の世話をしてきていた。10か月過ぎに狩りに行った30歳の男の人がイノシシに腹部をつかれて重傷になり、白髪で白いひげの老人がヨモギを腹部に置き、ずっと抑えていたのを途中から代わり抑えていたが、血は後から後から出てきて、2日後に、純子の一生懸命の看病にも関わらず死んでいった。その時、純子には目の不自由なたった一人で自分を育ててくれた母親が思い出され、元の世界に戻って、母の介護をしながら、看護婦になろうと決心した。そしてお別れの時に5歳の女の子からもらったきれいな石を大事に持って、ほかの病人からの多くの贈り物はみな本人の大切な宝物だったので丁寧にお返しして28世紀の世界に帰ってきた。
優喜はこの報告書を書くと、書く前の気分の悪さを一掃させるほどの充実感はあったが、昨日と今日の脳監査で疲れ果てて、明日は休みをもらった。


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