宇宙での戦いはだんだんと紀子と優喜が愛し合う演技を見せて“海”に到着した。 “ごくろうさま。今日はここまでにして次は明日撮影する。ここまでのシーンはプロローグ的なものでこれからが本番だからしっかり台本を読んで演技をしてください。” ここで優喜は “そう言えば{海}に行ってからがほんとの今度の映画だったな。” と思い直した。 亀鳥監督が明日からの台本を渡し、 “チチは今度のシリーズでは本名で出てくれるそうですが、悟空も良かったら本名もしくは役者名で出てもらえませんか?” “私はこれが済んだら時間局に戻りたいのです。悟空の名前でお願いします。かおるさんは仕事を辞めて芸能界に進むつもりなんでしょう?” “ええ。このシリーズがヒットすれば役者として引っ張りだこになりますから芸能界に進む決心をしてもらいました。残念ですね。戸田さんもきっといい役者になりそうですが?” “しかし、紀子さんには驚きました。あなたは彼女の才能を一目見てわかるなんてさすがはプロですね。” “いや彼女の才能はこんなもんではありませんよ。戸田さんも明日からの撮影で目をみはる思いをしますよ。ところで{海}へ行ってからの台本は、竜宮城に着くまでにひと波乱あるように書いてありますのでよく読んで覚えていてください。もうゲームの要素は全くなく筋書きどうりに進みますから、今日の仕事は、ほんのお遊びです。おもしろそうなとこだけ部分的に取り上げます。今日はごくろうさまでした。明日は10時に来てください。 ワープは九州まで予約してもらってますから明日来るときも9時半にワープをとってます。帰りのワープの時間は11時半でいいですね。時間局にも局長に了解をとってもらってこの2週間は7時から9時までの出勤でいいように申し込んで了解してもらってますから、ご心配なく。“ 優喜は宮村の苦虫をつぶした顔を想像した。
翌日も優喜は朝6時に記憶科学研究所についた。山田副社長と入念な打ち合わせをするとすぐに7時になった。7時には時間局でいろんな雑用が待っている。やっと雑用が終わり8時半になると宮村がやってきた。8時半から30分だけはどうしても私と会ってもらいたいとの宮村の要求なのだ。宮村は怒り心頭に達した顔つきをして優喜を迎えた。 “1日2時間の出勤なんて平社員では今まで例がないんだ。君みたいな男が世の中をだめにしていくんだ。” などと30分説教しまくった。優喜は静かに、 “もう30分たったので行きます。研究室にも寄らなければならないのでもう少し30分を有意義に使いたいですね。” と言うと、後ろで何か叫んでいる宮村を後にして研究室に向かい、昨日のネズミの状態や実験の進み具合を30分聞いて有意義な30分を経た後東京の映画スタジオに出発した。
そうやって映画を撮り始めて1週間たった。優喜もだいぶ演技をすることになれ、役者らしくなってきたころ、再度亀鳥監督から、 “最初の会社にいるときだけでも素顔で出てくれないかな?後はメイクをしているから全然わからないと思うんだけど、悟空の顔でなくてもいいよね。” “メイクした顔は自分のようではなかったので、メイクした顔はそのままでいいです。でも素顔はお断りします。ただでさえ係長から毎日嫌味を言われ説教されているんですから、実物が映画に出たら何と言われるかわかりません。できたら時間局はやめたくないのです。ある仕事が非常に気に入っているのですから。” “分かった!最初の顔は別の顔を作ろう。それならいいんだね。” 顔面作成機を使って優喜とは全く別なハンサムな男の顔を作り上げて最初の会社でのシーンとなった。その顔を見て紀子が冷やかす。 “優喜さん。とてもハンサムよ。” 実は紀子は男優の数人と浮名を流し始めていた。監督はそれも映画の宣伝になると放置しているようだが、優喜にも周りからその浮名を聞いていたが、何せ忙しいのと役作りに一生懸命なため、とても関心を持つ余裕がなかった。しかし、 “紀子らしいな。” とは思っていた。 今日1日は会社で働く最初のシーンで1日が終わった。やや早く6時ごろ終わった。 “ちょっと飲みに行かないか?” と言う監督やスタッフの誘いを断って記憶科学研究所に帰った。なぜなら今日は副社長として相沢が就任する日だからだ。 エアーカーのワープの予約をいつも帰る11時半から6時半に変更してもらって九州に向かった。 “まだ相沢さんはいるかな。もう帰宅したかな。” 優喜は恋人と会うかのようなうれしい気持ちでいっぱいになってエアーカーを運転した。
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