亀鳥監督から、 “ゲームは{海}に行くまで、自由にしていいよ。でもなるだけジュンコと悟空は最初から喧嘩をしてくれよ。” この4人なら{海}に行ってくれると思っている監督の台詞であった。 優喜は、 “たった4万点では宇宙に行ったとき宇宙船が買えないのではないか?” と思ったが、その心配はすぐ吹っ飛んだ。 怪獣の森を選んだがその森に、 入るなりジュンコが、 “ゴールデンチャレンジ!” と言ったのだ。 悟空はセリフではなく素直な言葉が出てきた。 “無茶だ!” ゴールデンチャレンジとは持ち点が10倍になるのだがゲームがすぐ終わってしまう可能性が8割程度ある。すごくギャンブル性の高い危険なチャレンジなので優喜は1回もしたことがない。持ち点が5倍になるシルバーチャレンジも2倍になるカパーチャレンジもしたことがなかった。 “地道に怪獣と戦って得点を増やすとともに宇宙に行くまでに30万点程度の貯金もしよう。” と思っていたのだ。 ”何よ!冒険しないと面白くないじゃない。“ ジュンコは噛みつく。 “勝手にしろ!” “どうせ映画だし、負けたら最初からやればいいんだから。” と思っても優喜は腹立たしかった。演技なしに怒ったセリフが出る。 ゴールデンチャレンジは怪獣の森で、3人とももちろん経験の浅いジュンコも見たことのない怪獣が現れた。 ”パピラの出現だ!“ とゲーム機が説明するが、緑の大きなカブトムシとカエルの中間の形態をした生物だった。とりあえず頭を狙って美香がカメハメ波を出した。 一般的には正しい攻撃だ。 しかしパピラは2倍の大きさになった。そして火を吐いた。 3000プロテクトを消費した。2万プロテクトしか防御を持っていないのでいきなり大ピンチだ。優喜とかおるは右と左の目を狙った。しかし何の効果もなかった。 ジュンコが臍を狙ってカメハメ波を出した。 そうすると1発で制圧できた。 ”知ってたのか?“ 優喜が聞くと、 “感よ!感!” と何とも思わせぶりな言葉を吐く。何にせよ1発で40万点確保できた。 “もうこんなギャンブルは許さないからな。” 優喜はほんとに怒っている。 ”何よ!私のおかげで命拾いしたくせに。だいたいなんでこのゲームを仕切るのよ!“ 二人はにらみ合う。 空中では亀鳥がカメラの後ろで喜んでいる。 “いいぞ!いいぞ!この場面も使えそうだぞ。何と運のいい展開だ。” 優喜は面と向かってカメハメ波ゲームで逆らわれたことはなかった。カメハメ波ゲームに慣れた人にとって、カメハメ波ゲームにおける優喜の実力が並外れたものであることはすぐにわかるからだ。しかしジュンコすなわち紀子にとっては昨日カメハメ波ゲームを始めたばかりである。何が大事で何が大事じゃないことなのか全然わからない。自分の先生はあくまでミドリとチチだった。この実力ある2人が優喜すなわち悟空に素直に従うのか怪獣の森では分からなかった。そうやって怪獣が出るたびに演技ではなく2人は喧嘩し合って撃退していった。ほとんどジュンコは失敗ばかりだったが、ベテランの3人の助けでどうにか宇宙へと行けた。5万プロテクトに100万点の持ち点になっていたのでプロテクトを55万にして値上がりしていた最新の宇宙船を50万点で購入した。ゲームはどんどん進化し50万点必要だった。チチが、 “最近は多くの人が宇宙まで行くので宇宙船が値上がりしてるのよ。最新の宇宙船に慣れるまで弱い敵が来てほしいわね。” そして数回の宇宙船と戦ったが相変わらず喧嘩ばかりしている。するとゲーム自体がフリーズして、監督の声がした。 “宇宙に行ったとこから隆二とジュンコは段々と恋愛感情を抱くような芸をしてくれないと困るよ。はい宇宙に行ったとこからやり直し。うまくいかなければ新たに台本を追加しようか?” 優喜は、 “ゲームに熱中していたが、そう言えばこれは映画だったな。” と思い役をしようとしたが、紀子は天性の役者なのですぐに役にはいりこんで優喜は急にぎこちなくなった。とても恥ずかしいのだ。何回も取り直しとなる。 “よし休憩。” 亀鳥監督は宇宙に入ってからの演技が気に入らなくて休憩に入った。 “戸田さん。しばらく休んで紀子さんとの恋愛を恥ずかしがらずに推し進めてください。” “その間にチチの日常生活、ミドリの日常生活の撮影をします。美香さん。かおるさん。セリフは覚えていますよね。” “はい。” ”勿論!“ “監督。私。戸田さんと一緒にいていいですか?演技の練習をしますから。” “おお!紀子君か?君の演技は完ぺきだから戸田さんの演技指導を頼んだよ。” 元気のなくなった優喜を紀子が自分の控室に連れて行く。1日しかたっていないのに紀子の部屋は飾り物でいっぱいだった。 “すごい部屋だね。” “それよりどうしたのよ。2日前に愛し合ったばかりじゃないの。” “いやあ。人が見ている中では恥ずかしくって。” そうするといきなり紀子は優喜にキスをした。 優喜の頭の中は火がついたようになった。 “私のことだけ考えて。もちろんゲームも大事だけどあなたは芝居ができないから映画の撮影のときだけでも私を愛して。本気で愛するときっといい作品ができるわ。” そしてもう一度熱いキスをしてくれた。優喜は何も考えられなくなった。 そして控室を出て美香と、かおるの演技を見ていると女性は演技がうまいと心の底から感心した。 “よし。僕もこの撮影のときだけでも紀子君を愛してみよう。” 優喜はそう思って、気分が切り替わった。
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