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作品名:タイムマシン稼働マネージャー 作者:Hei George

第4回   啓太
“それからこれは、法務局から送られてきた、脳監査装置の観察許可認定カードだ。君も知ってのとうり、他人の脳記録は精神科の専門医か、時間局の認定業務者か、裁判官しか許されてないからね。4日後の人達の、タイムマシンでの発送前と、帰ってきた後の脳監査を君にやってもらうつもりだから。もちろん帰ってきた人だけだけど。帰ってこなかった人はやらなくていいから。”
と言われた。4日後以降、何故、このTM(タイムマシン稼働マネージャー)がこんなに高給をもらえるのかが分かった。精神的に病んだ人の、脳監査がいかに大変なのかを身をもって味合うことになる。4日後7人の人が帰ってきた。それぞれ脳監査を受け、それぞれの報告書(感想文のようなもの)を書いて、各々の保護者に引き取られて帰って行った。その感想文と、脳監査システムとの両方を合わせて優喜は報告書を書く。
帰宅した7人の、それぞれの感想文を読んでいると係長が現れて、
明日からでいいよ。一日1人ずつ仕上げてくれ。無理なら2から3日かかってもいいから。尚、彼等は全員で30人が出発したんだよ。そして、今日は明日のために十分寝ていたほうがいいからな。“
と言われたので、7人の感想文をボックスに入れて、セキュリティチェックをかけて、帰宅した。そして係長の言うように早めに寝た。
朝早く起きて、いつもの朝食をとり、エアーカーで時間局へと向かう。まず、中学2年生で3000年前に行った加藤啓太の報告書を作成した。苦しかったのは、発送前の啓太の脳監査であった。以下は優喜の報告書である。

加藤啓太は、中学になって弟ばかりをかわいがる父と母がだんだんと嫌になってきた。小学生のころは結構明るい性格で友達も多かったようだが、中学の時、啓太が動かしていた宇宙戦争ゲームを、弟が、
“昨日の続きをやりたいから早く代わって”
と言いそこで起きた兄弟げんかを両親が弟のかたを持ったことから、自分はみんなから疎んじられていると思いはじめ、日に日に
“自分は生きていてもしょうがない。死にたい。”
という思いが強くなり、父や母も殺したいくらい憎らしくなってきた。そして、両親が精神科の医者に連れていくと、このような病気には過去に行く療法を始め、いい結果か出ていることを両親に薦められ(実は極めて自殺の可能性大という診断が出ていたのであるが)啓太は過去に行くことを決心したようだ。3000年前の世界は何もない世界だった。ほとんど周囲は草叢であった。そこで佇んでいると、馬に乗った3人組が近ずいてきて、
“変わった服をしたやつだな。この辺で大柄の槍を持った男を見なかったか?”
“知らない。”
と答えると、
”あやしいやつだ。こいつを連れて行け。“
という男に2人の連れが馬から降りたその時に、大柄の男が命令した男を槍で刺し、
2人ずれの男たちと槍での攻防となったが、やがて2人とも刺されて血だらけになり死んでいった。啓太は実際の殺し合いを見て恐ろしくて震えていると、
“俺、ジアイと云うんだ。よろしくな。あいつらは俺らが平和に暮らしているところにやってきて、農作物の半分を渡せなどと言ってきたので断ると、俺らの農地を奪い、女は奪われ、男は殺されてしまった。おれはずっと一人で戦ってるんだ。”
“ぼ僕、啓太と言います。”
蚊の消え入りそうな声を出すと、
“まずその服装を変えんといけないなあ。”
と3人の兵士から服をはぎ取って、
”少し大きいとこは俺がなおしてやるから“
と服を着せた。腕のとこや、足を少し短くしてもらってそれを着た。戦闘で1本の槍は折れていたが、1本は健在であった。
“これはお前の槍な。”
“僕戦えません。”
“そしたらすぐ殺されてしまうぞ。”
と言われて、
“こんなところで大丈夫だろうか”
と不安に思ったようだ。それからジアイとともに1匹の馬を殺し食べ、2匹の奪った馬に乗り方を覚えた。5人の騎馬から追われ、命からがら逃げたこともあった。ジアイと話し、
両親と兄弟全部殺されたが、肉親はいいものだとしょっちゅう諭され、また、ジアイと暮らすうちに、ジアイを兄さんのように親しみをもつようになった。タイムマシンでここに来た事を話すと、
”とにかくうちに帰って、両親と弟と仲直りしてこい。そしてその後共に戦おう。“
と言われて、1か月だけ自分の世界に帰り、その後またタイムマシンでジアイの世界に送り込んでもらうつもりらしい。

報告書を完成するともう夕方の4時を過ぎていた。くたくたに疲れていた。
その様子を見て係長は、
“明日休んでもいいよ。”
と言ってくれたが、
“今日も早く寝て明日も来ます。”
と答えた。


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