優喜は山田副社長と会社のことをいろいろと話しているとき、紀子がやってきた。 “社長がいると聞いてきたので、挨拶に来ました。” ”やあ久し振り。“ 紀子の姿は以前に比べてすごく地味になっていた。しかし顔に潜む妖艶な表情までは変わっていない。 紀子が部屋にはいり何か話そうとした時、塩見が2人の男を連れて入ってきた。山田が言う、 “ちょうどよかった。5人の幹部が集合したので、2、3みんなに話したいことがあるんだが?” そうすると塩見が、 “その前に社長に紹介させてください。こちらが道原弥太郎、年齢は私の一つ下で43歳です。こちらが清家龍之進、40歳です。二人とも研究はあまり大したことはないのですが、事務職の能力は群を抜いています。二人に課長として働いてもらってますが、しっかりとした組織ができてきました。” “社長と今話したところだが、この記憶科学研究所に研究部門と記憶消去部門を作ることにした。記憶消去部門はWPCの公認で、世界でただ一つの組織になるから、仕事としては事務部門の塩見君がますます忙しくなると思う。私は全部門の責任者としての副社長で、事務部門でも副社長だが、三島君は研究部門の副社長、塩見君は、今は部長だが、記憶消去部門の副社長の相沢さんが着任し、記憶消去部門が動き出したら、もしかしたら事務部門の副社長になってもらうかもしれない。記憶消去部門は日本の大統領と世界中のWPCが協議をして人選をしている。イギリス、南アフリカからも人材が来るかもしれない。そうするとタイムマシンの秘密が守れなくなる恐れがあるが、できるだけ日本のタイムマシンの技術は秘密にしてもらう。紀子君もこの記憶科学研究所の記憶消去部門のことは口外しないでくれ。もちろん研究部門のこともすべて知るわけだけど、新たに研究がなされたことはおそらく最先端のことになるので秘密保持をよろしくお願いしますね。戸田社長、三島君の秘密保持をさせる役目は社長にまかせてよろしいですね。” 優喜は、 ”これはえらいことになった。と思ったが、自分以外に三島紀子の秘密保持をさせることはできない。“ と思い。 “分かりました。私が責任もって秘密保持させるようにします。” と言った。紀子の顔を見るととてもうれしそうだった。 “研究部門は清永小百合さんという以前の時間局係長で結婚退職された方が入ってくれたので、鬼に金棒です。清永さんは塩見の上司だったよな?” “はい。とても厳しい方でした。研究も事務処理もとてもできる方です。結婚退職したのがとても惜しまれていました。旧姓は吉野と言われてましたけど、当時の大学の教官で今の東大の教授の方と結婚し、2人の子供を育て上げて、最近、東洋実験サポートセンターに再就職し非常に実績をあげているチームの一人です。” ”その、清永さんをとりあえず研究部門の事務長として来てもらうことになった。皆さんよろしく頼むね。“ 塩見が、 ”すごい人が来てくれましたね。“ と言ったので、優喜は清永小百合のあの油断のない眼を思い出し、 “やはり只者ではなかったのだ。” と思うのであった。只者ではないと言えば、時間局の所長も山本も只者ではなかったし、この三島紀子も違った意味で只者ではない。 こうして5人の幹部会が終わったのは8時過ぎていた。山田は、 ”我々はもう少し働いて帰りますから、社長は紀子君を送って行ってあげてください。秘密保持の件よろしく頼みますよ。” 山田は三島紀子のことに関して心配でたまらないようだったが、山口所長の決断なのでしょうがない。優喜も秘密保持をさせるため、 ”ちょっとうちに寄らないか?時間局の秘密を保つことの確約をしてもらいたいから。” 紀子にとっては願ったりのことだった。 “母はもう5時に家に帰ったから、いいわよ。じゃあ夕食作ってあげようか?” ”いや。今日は合成の食事で我慢してくれ。いろいろと秘密保持の規則を言っておく必要があるからな。” ”分かった。いいわよ。優喜さんに従うわ。” エアーカーに乗った時にはすっかり元の紀子らしさが戻っていた。会社にいたので少し猫を被っていたようだ。
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