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作品名:タイムマシン稼働マネージャー 作者:Hei George

第37回   ラットを使っての実験
ふと時間を見ると午後2時を過ぎていた。
“所長を訪ねる前に腹ごしらえしよう。”
と思って最上階の展望ビュッフェに行った。
高いとこで食事をすると気分が落ち着くし高揚する。食後一人で非常階段を一階下りていくと、74階が開かない。そこで75階まで登り、1階まで下りて直通のエレベーターで74階へと行った。74階では局長であり時間局研究所の所長でもある山口がコンピューターに何か書き込みをしていた。論文を書いていたようだ。優喜が入ってくるのに気がつくと、
“やあ。戸田君ごくろうさまだね。今、ジャニスから連絡があったばかりだよ。フランスの泥棒集団の情報がすべてわかったそうだ。タイムマシンは日本の27世紀の泥棒集団から手に入れたそうだ。その泥棒集団は27世紀に根絶やしにされてたんだが、19世紀のフランスにまで影響を及ぼしていたんだな。それは日本の時間局にも全くデータがなかったよ。フランスの泥棒集団は日本の責任だから日本のタイムパトロールの東隊長も出動するそうだ。あとは任せていればいいよ。それから君の研究のことだが、”
“山本君ちょっと。”
マイクで言うと、隣の透明のシールドで見える部屋でコンピューターにデーターを入れていた山本がやってきて。
“戸田さん。私があなたを実験室に連れていくように言われています。実験室は50階から60階までですが、上に行くほど高度の研究になります。戸田さんの研究は山口所長の意向で50階でやってもらいます。”
“あまり記憶を移す仕事は評価されていないのだな。”
と思いながらも50階に連れて行ってもらった。50階すべてのフロアーが実験施設であった。広さはこのビルの大きさ500坪くらいだった。
この階全体が実験用のスペースで、後10階も同じような実験スペースがあるというので優喜はびっくりした。そしてその階には何百人と言う人が忙しそうに働いている。優喜は右側にあり動物が沢山飼ってある隣の実験スペースに案内された。動物が沢山飼ってある区画にはエアー蒸気で消毒されながら人がひっきりなしに出入りしていた。
“山口所長が、動物舎に近い場所がいいだろうということでしたので”
山本が言うと、約30坪くらいの場所に実験台が3つほどあり周りに5個くらいの事務机が取り囲んでいる。そこに1人の女性と2人の男性が居た。
”この人たちは東洋実験サポートセンターから派遣された派遣社員です。山口さんの意向で、あいている中で最も優れたチームを選んであります。実験についても戸田さんはほとんどしたことがないと思うので、私がアドバイスをするように言われています。なんでも言ってください。予算もまずは300万円ほどついていますが、戸田さんがよければ記憶科学研究所からいくらでも寄付を受けて予算をつけていいそうです。“
いかにも気の利いた3人のメンバーが居た。
“麹野です。”
“満田です。”
男性が2人名乗った。女性が、
“事務担当の清永と申します。”
”戸田優喜と申します。よろしくお願いします。“
“麹野君、満田君は私も57階にいたとき手伝ってもらったことがあります。大体は上位の研究チームですが、50階に来るのは始めてだそうです。しかし所長が
”もしかしたらすごい研究になるかもしれないと説得して50階に来てもらいました。清永さんも昔は時間局の職員だったんですが寿退社をして、子供を育て上げて研究チームの事務として働いてもらっています。非常に優秀なチームです。私、山本は局長から戸田さんは自分で実験した経験がないからアドバイザーとして付いてあげてくれと言われたし、私も戸田さんに興味があるので引き受けました。では早速実験系を組みましょう。“
実験系を組もうと言われて優喜ははたと困ってしまった。
漠然と学習したネズミを学習してないネズミに学習したものを移す実験系なのだが具体的にどうすればいいか分からない。優喜が戸惑っていると山本は、雰囲気ですべてを察して、
“ラットはDAラットと言う純系ラットを使えばいいでしょう。DAラットは頭のいいラットですから。”
“純系とは何ですか?”
優喜が聞くと、2人の技師はちょっと驚いた顔をした。それを察した山本は、
”戸田さんは実験は始めてだが、あの記憶を消す方法を発見した人だ。その噂を聞いているだろう。“
3人の目つきがいぶかしげな目つきから驚嘆の目つきに代わった。マスコミには秘密にしているが時間局関係者には口コミでうわさは広がっている。マスコミは今日は、カメハメ波ゲームで{海}へ行ったグループで一色だった。その後山本は優しく言った。
“純系とは兄妹交配を20代したラットのことです。マウスで20世紀に確立し、ラット、ラビットなどいろんな動物で確立し、それから最近は禁止されている国が多いのですが、チンパンジーでも確立されています。チンパンジーは動物愛護協会の許可を得ないと実験できません。最近はその許可が出なくて多くの国で禁止の方向に向かっています。そうした動物は遺伝情報が99.9%同じになります。特にDAラットは頭のいいラットです。それで、DAラットを実験に使っていいですか?”
“お願いします。そして何か学習させようと思いますが段階的にレベルの上がる学習法はありますか?”
優喜もだいぶ要領がつかめてきた。山口所長はこのことを考えて山本をつけてくれたのに違いない。
”そうですね。モーリスの迷路学習がいいと思います。迷路の1から10まで段階があり、能力が上がるほど段階が上がる方法です。迷路をクリアーするとその迷路を記憶し次の段階まで進むほど学習能力が上がったと判断されます。“
優喜はなんだか自分たちがしてきたカメハメ波ゲームをラットにさせるような気になってきた。
”じゃあこうしましょう。30匹の8週令のDAラットの雄を使い、1ヵ月間迷路学習をさせましょう。その結果その段階に合わせて脳移植、蛋白移植、生理食塩水移植の14週令ラットを10匹ずつ用意して20匹のラットを殺して10匹脳の記憶領域を細胞移植して、10匹記憶蛋白を移植して、10匹はそのまま学習能力を持ったまま生かしておき、2ヶ月後に40匹を殺して比較検討するのはどうでしょう?“
優喜はその言葉ではっと気がついた。
”殺すか傷つけないと記憶を移す方法がないのだ。しまった。そのことを全く考えなかった。記憶をなくすのがあまりにも簡単にいくので記憶を移すのも電磁波かなんかで楽にできるもの“
と思っていたのだ。山口所長が、
“私は無理だと思うが”
と言う言葉が重くのしかかってくる。優喜が考え込んでるのを、
”確かにこの実験は300年前にやりつくされた実験ですけど、最初はそこから始めてどんどんレベルを上げていけばいいんですよ。私の専門は脳のモノアミンの動態ですが、3つほど新しいたんぱくを見つけたのでこの実験もやり方次第では宝の山かもしれませんよ。“
優喜は山本がとても優秀な科学者であると思い、
”どうして山本さんは1人で研究しているんですか?“
と聞くと、
”局長室で研究している3人はノーベル賞級の研究をしているものばかりなんです。秘密保持と後は時間局全体を統括する役目を持ちます。自分の研究が飛びぬけたものだけが人の研究を理解できるし、また全体を制御できるのです。とにかくお金と設備は使い放題だからですね。毎日が楽しくて仕方がないですよ。ある程度実験系が決まった実験は57階におろして実験させてまた新たな自分の実験にとりかかっていくのです。“
時間局の研究システムがある程度わかり、もう一つ疑問が出てきた。
“それで57階だとその上は何をしているんですか?”
“58階はタイムマシンの0.111の位相から0.1111の位相に移れる研究をしています。59階、60階は私も知りません。所長であり局長である山口さんとその研究員しか分からないようです。”
山本の提案した実験系で進めていくことにして4人は動物舎の中に入った。山本から説明を受けたSPF(Specific Pathogen Free)の動物舎の中はクリーンルームなので、裸になってエアークリーンの個室に入り機械が着せてくれる宇宙服みたいなぴったしとした実験着に着替えさせられて4人動物室の中で再会した。
“このラットは全部8週です。この部屋は戸田さん専用です。”
501号室のラットの部屋にはいり10匹を選んで段階1の迷路に入れた。迷路は人間でも複雑な迷路で、節目、節目でクリアーするとチーズが出てくる。
“この迷路はラットたちは、半日もすれば覚えるでしょう。今は30分以上かかりますが半日後には1分以内になります。そうしたら次の段階に移すのです。麹野君、満田君あと20匹頼むね。今日は1段階をクリアーさせたら休ませて、明日もう一度1段階を1分以内で記憶できていたら、2段階の迷路に進めてくれ。後は、1週間君たちに任せたから実験を進めていてくれ。1週間で4段階まで行けばいいだろう。無理をしてストレスをラットにためないようにな。何なら3段階でもいいからね。”
”はい分かりました。“
”戸田さん。我々は2段階、3段階の迷路を見に行きましょう。“
同じ部屋にかなり複雑な迷路が置いてあった。そしてその横にはボタンやちょっと考えないと扉が開かないような不思議なドアを持った迷路が置いてある。
”これが3段階か?“
人間でもうまく潜り抜けれるだろうかと思われた。
”これをラットができるんですか?“
優喜が聞くと、
”これぐらいで驚いていたら10段階はとても考えられませんよ。もっとも8段階以上行ったラットはほとんどいませんけどね。人間も同じような迷路で実験したら10段階まで1日で行ける人は10人に一人だそうですよ。カメハメ波ゲームの高得点者に比例するようですがね。“
そうして隣の部屋で5,6,7段階を見て、また隣へ行って8,9,10段階の迷路を見た。
“確かに9,10段階は人間でも容易にクリアーできそうにない。”
と思われた。
″後は麹野君、満田君が実験どうりにやってくれますから、1週間後にここにチェックに来てください。私は1ヶ月後にまた手伝いに来ます。もちろん分からないことがあれば、いつでも74階に来てください。あなたは時間局初めての例外的に74階に来れる資格を持った人ですから。“
動物舎を出ると山本は74階へと戻って行った。優喜は清永とともにいろんな事務手続きを始めた。実にいろんな書類にサインをしなければならない。動物実験許可証、27種類に及ぶ機械の使用許可証。放射性元素を使う許可証。薬物を使ういろんな許可証。そして清永はいろんなサインをしたあとおそるおそる言った。
“私たち3人は東洋実験サポートセンターからの派遣社員なんですけど……….”
“はいさっき聞きました。“
“実は山口所長が“”私が推薦するので、戸田さんさえよかったら、1週間の仕事を見て記憶科学研究所の所員にしてもらえればいいよ。“”とおっしゃったんですけど…………”
“山口所長がそうおっしゃるなら、私は異論はないですけど。“
“所長は、”“記憶科学研究所はできたばっかりだから最初は営業だけだけどそのうちきっと研究することが山ほど出てくるから、最初の研究グループとして雇ってもらえばいいよ。”“とおっしゃっていたんです。”
“分かりました。1週間の仕事を見なくても今日から記憶科学研究所の所員として雇いましょう。今から研究所に行きますから山田さんにそう伝えときます。”
“東洋実験サポートセンターでの給料は出来高払いですが、私が20万、あの2人が25万ですが、もう少しupをお願いしたいんですが?”
”3人とも給料は50万でどうでしょうか?あなたは事務長で2人とも技師長としてお願いします。“
清永はぱっと明るい笑顔を向けて、
”2人とも喜びますわ。もちろん私も感謝します。仕事頑張ります。“
一切の手続きをした後、優喜は時間局で明日が10人タイムマシンで過去に行った人の中で帰ってくる日であるのを確認して記憶科学研究所へと向かった。
“明日は何人帰ってくるかな?”
そう思いながら忙しくなった自分と記憶科学研究所のことも考えながら記憶科学研究所に向かった。もう午後5時少し前だった。


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