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作品名:タイムマシン稼働マネージャー 作者:Hei George

第3回   タイムマシン稼働
空中ベッドで眠ると腰に負担がかからないというので、25世紀から多くの人は空中ベッドで眠る。優喜も昨日空中ドライブから帰ると、物質転換装置で夕食を食べ、空中ベッドで眠りについた。起きて物質転換装置で、お決まりのコーヒーとサンドイッチを食べたあと、簡単に講義の復習をしてみた。立体実像DVDが使えないのは不便なことだ。講義室に物質転換装置があるかコンピュータに問い合わせてもらったらあるということなので、講義の途中で、稲とかイノシシの模型とか出してもらえば講義はだいたいできるなと思った。
昨日買ったエアーカーで時間局まで出かけた。コンピューターを通じて駐車場の確保をしてもらっている。もっとも、駐車場が込むと自動的にエアーカーが移動し、州(日本は道州制になっている)の駐車場に移り、帰宅時に駐車場に迎えに来ることもある。いずれにしても自動的にコンピューターが動いて判断するようになっている。優喜にとっては駐車場に行くと、エアーカーがあることには変わりない。前回の時間局に来た時、人物登録してあるので、すべての扉が自動的に開く。時間局の係長にあった部屋に行くと、コンピュータが話しかけてきた。
“うさぎの像の後を付いていくと講義室につきます。そこには37名の人間がいます。
その人たちに講義をしてください。講義の制限時間は3日間です。ただし、自殺者が出たら、直ちに中止してタイムマシンを作動してください。自殺者が出なくてもあなたの判断で、危ないと思ったら、直ちにタイムマシンを作動されても結構です。前回の人は、15分後に作動させたこともありました。“
“タイムマシンの動かし方は簡単です。コンピュータータイムマシン作動というだけでいいです。ここのコンピューターはあなたの声だけにタイムマシンの作動の設定がされていますから、あなたの声しか反応しません。なおお分かりだとは思いますが、この人たちには立体実像DVDは効果ありません。”
“それではウサギの像の後をついていってください。尚、このウサギはあなただけに見えます。”
とコンピュータが言うと、茶と白の混じったウサギが目の前に出てきた。このウサギは優喜が、仮想体験ウサギの飼育で小学校の3年のとき授業で1週間飼っていたウサギだった。そのウサギのデーターを使っているのであろう。
うさぎの後をついていくと、21世紀の広い体育館のようなホールに着いた。そこにはうつろな目をして座ってうずくまっている人間が固まって30数人いた。優喜は話しかける。
”こんにちは、私は戸田優喜と言います。皆さんに3千年前の講義をするように言われたものです。“
全くみんな反応がなく、下を向いたもの、じっと前を向いているもの様々である。5,6人、離れて立っている者もいた。
優喜は、
“これは極めてまずい状況だぞ。”
と思ったが、とにかく講義を始めてみた。
“3000年前は日本では神武天皇が即位したといわれる時代です。”
4,5人の人が立ち上がってうろつき始める。
見てみると、多くは中学生のようだが、中には中年の人もいる。男性と女性の比率も同じくらいに思えた。
“日本ではそのころは弥生時代で、、、、、、、、、、、、、、、、”
”そんなことみんな自分でコンピューターを調べたりして知ってるよ。“
優喜がそちらを見ると、中学生らしい子が話しかけた。
“僕は伊東と言います。きのうまで、世の中が嫌でたまらなかったんだが、ここに来たらすごく楽しくなってきたんだ。”
と喜々とした顔つきで喋ってきた。
優喜は、躁うつ病の躁状態だと思った。躁うつ病は躁状態から鬱に変わったときに、自殺が多い。
“それよりどんなにしたら生きられるか本題に入ってよ。”
と言われたので、
“では狩りの仕方とか話そうと思います。”
周りを見回すと、ほとんど反応する人がいない。みな自分の世界に入り込んでるようだ。
コンピューター
“弓と矢の模型を。”
本物を出すとそれで自分を傷つけたりすると困るので、模型を出してもらった。目標物狸を出してもらいそれを弓で射る。弓で射たあと皮をはいで、革のなめし方、肉の切り落とし方などをしてみると、意外と皆みてくれている。1から2時間かかったころ、
30代の女性が、
“ああーもういいから、私死にたいんだから死なせてよ。コンピューター包丁を出して。”
コンピューター
“その指示は受け入れられません。”
そうすると連鎖反応でいろいろな動きが始まった。
優喜はここまでだと判断し、
“コンピューター皆に3000年前の皮の服を着せて、それぞれ、弓1本に矢20本、石槍一個と、矢じり1個と一緒で、タイムマシン作動してくれ。そして、それぞれバラバラな場所に送ってくれ。”
と命令すると、全員の服装が、3000年前の革の衣装のみとなり、それぞれに弓、矢、石槍、矢じりが下に現れたと同時に、10秒位して、全員と、出た弓、矢、石槍、矢じりが消えた。
何もない部屋で一人呆然としていると、係長が現れた。
”別々なところに送ったのはいいことだ。統計で、同じ場所に送ったら自殺者が増えるというデーターがある。また、皆が騒ぎ出した時に送るのもいいかもしれない。とにかく自殺者が1人も出なかったのがいい。本当は、試用期間で、本日正式採用が決まるんですよ。まあ、脳監査システムが間違えることはほとんどないんだけどね。正式採用決定だ。
でも、武器を与えるなんてずいぶん思い切ったことをしたねえ。それで自殺するとは考えなかったのかい。”
“ずいぶん迷いましたが、厳しい環境に置かれると意外と死ねないもんかと。”
“それは1年後に答えが出るよ。次は4日後来てくれ。去年送り込んだ人達が戻ってくる。あっ!いい忘れていたが1年後同じ場所に来ると自動的に戻るようにタイムマシンが設定されていることはみんな知ってるからね。君は今初めて聞いたかもしれないが。”


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