時間局から阿蘇は近い。阿蘇の原野は素晴らしい眺めで、原野の先に阿蘇の噴火口が見えてきた。約20分の経過で2人はすっかり打ち解けた。 “阿蘇にはよく来るの?“ 優喜が聞くと、 “小学校の学校の旅行で、みんなで来た時以来だわ。噴火口から煙が出てるのね。あら、噴火口の中にはコバルト色の水が見えるわ。” と喜んでいる。 優喜は阿蘇に来るのが好きで暇があったらよく来ている。 “こっちの方のロープーウェイは人が少ないんだけど、ロープーウェイで近くまで行ってみる?” “ええ行ってみたいわ。” そこで、阿蘇の大分側に駐車して、ロープーウェイに乗った。携帯電話をかざすと、自動的に料金が払われる。ロープーウェイは安全を期して空中を浮かんでいるが、昔のようにロープのようなものにぶら下がって走るように見える。実際は負荷はかからず、反重力装置になっている。推進力はエアーカーと同じく水素である。水素は水を分解して作られる。水素を燃焼させても水蒸気になるだけだから、環境にはよい。 ロープーウェイの中には20人くらいの人達がいた。半分以上は外国人であった。 “ちょっと寒くない?” “いや大丈夫よ。” 秋になっているので山頂近くは少し冷える。 噴火口の前まで歩いた。やはり寒そうだったので、優喜はかおるの肩に手をまわした。まわしたのはいいが、緊張して2人とも早足になった。ゆっくり噴火口を見るつもりだったが、緊張して早足で歩いて、ロープーウェイ乗り場まで何にもしゃべらず帰ってきた。ロープーウェイに乗る前に、肩に回した手をのけて、 ”ごめんね。何か悪かったみたいだね。“ と言うと、 “いや私、触られるのに慣れていないから。” と恥ずかしそうにうつむいた。 “紀子とはえらい違いだな。” と思ったが、優喜は自分も触るのも触られるのも慣れていなかった。 “寒そうだったので少し温めてあげよう。” と無意識に手が出たのが逆効果だったようだ。 帰りのロープウェイで、かおるはくすっと笑って、 “優喜さんも真面目なのね。” と一言いった。優喜は、 ”“”も“”と言うのは、かおるさんも真面目なんだな。“ と思った。 “それとも真面目な男と付き合っていたのだろうか?” “変なことしたんで、あまりじっくり見れなかったね。” “いや、うれしかったわよ。” 優喜は少し照れて、 ”霧島はもう少し暖かいと思うよ。“ と言った。 エアーカーで話しながら霧島に向かった。阿蘇で少し時間を食ったのでもう2時半を過ぎていた。エアーカーは時速300キロまでしか出せないが、近くに行くまで300キロで走った。霧島近くも自然保護のために自然を残している。霧島は木々の葉が緑と少しの黄色が混じっていた。もうしばらくすると紅葉も始まる。 霧島を見ながら、優喜は聞きたかったことを聞いた。 “塾の生徒にはどうやって教えてるの?” ”みな家にいて立体映像を教室に投影しているの。30人のクラスに数学をいつもは教えるけど、わからないことがあると別室に待機している先生が1対1で教えるの。自分が教えないときは、待機して質問が出た人に1対1の立体映像で教えるのよ。だから教室と言っても実はせまいのよ。映像で広く思えるけどね。だから、主は1クラスだけど、後の4クラスは質問がかりなの。その質問がかりが大変なのよ。懇切丁寧に納得するまで教えなければならないから。“ “中3の女の子は、いや男もだけど、性的な相談とか聞いたりする?” ”1週間に1,2回はあるわね。私は少ない方だけど、話やすい先生にはしょっちゅうらしいわよ。“ “かおるさんには相談しにくいのかな?” ”私自身あまり経験がないから、男性経験とかを聞かれるとどうしようもないのよ。進んでる子は進んでるからね。“ 紀子の話を聞いてもらいたかったが、秘密保持のためできなかった。 “おそらく話をしても何のアドバイスももらえないだろう。” と優喜は思った。 しかし、かおるといると紀子といる時のような居てもたってもいられないような欲望は出てこなかった。むしろ自然で少し気恥ずかしさを覚えるような気がした。帰りも300キロで帰ったが4時少し過ぎてしまった。 “また会えない。いつが休み?” 優喜が聞くと、 ”土日が、かきいれどきで、毎週月曜が休みなの。いつもは夕方5時から夜10時までだけど、土日は1日中忙しいわ。“ “じゃあ、来週の月曜昼食を一緒に食べよう、今週の土曜日特別講義をするので月曜は代休なんだ。” “楽しみにしてるわ。” ”先ほどあった店で12時ね。“ ”もっとおいしいものが食べたいわ。“ “じゃあ神戸の自然食レストランに行こうか?ワープを予約して11時半に君の家まで迎えにくるよ” ”あそこ高いんでしょう。“ ”最近お金使う暇がなくて、余っているからおごってあげるよ。僕にまかせてよ。“ ”うれしい。私1度行ってみたかったんだ。“ ”じゃあ11時半にここに迎えに来るね“ エアーカーの駐車場の、かおるの車の後ろに空中に停車して優喜はかおるを下した。 ”さようなら。またね。“ “ありがとう。さようなら。” 何か午前中からのモンモンした気持ちがさわやかになった。 “さわやかな女性と会ってよかったな。” 優喜は心に呟いた。
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