三島紀子宅に着くと、エアーカーの駐車場に、母親が迎えにきた。母親はマーケット勤務だと聞いていたので、 “お仕事ではなかったのですか?” と聞くと、 “仕事はやめました。娘がお金を入れてくれているものですから。” ”娘さんは15歳でしょう。“ ”ええそうなんですが。“ 中に入ると家具や、コンピュータ、テレビなど一見して豪華な調度品や、派手な高そうな服が部屋いっぱいとかかっていた。 ”そう、では今晩お会いしましょうね。“ 紀子がテレビ電話で話している。 “あの。TMの戸田と申します。時間局係長から連絡が入っていると思いますけど?” ”は入って。“ テレビ電話を切ったのち、 “貴方ちょっと見ないうちにいい男になったわね。“ とても15歳の言葉とは思えない。 “紀子さんこそだいぶ変わったようですね。” 派手な服装と、時代の最先端を行く髪型、目の周りは目を大きく見せるための人工結膜をつけている。紀子は優喜に近寄ってくる。優喜は思わず後すざりをする。いきなり右の太ももに手をおいて、 ”ねえ私嫌い?“ と聞いたので、びっくりして両手で手をのけて、 “いや苦手なだけです。” その反応に紀子は、 ”あなた。女、知ってるの?“ と聞いてきた。母親は近くにいるが何にも云わない。 “お母さん!いつもこうなんですか?” と聞くと、 ”でもそのおかげで、私たち2人ともかなり豊かに暮らせてるから。“ 優喜は、 “男に貢がせているんだ。” と思った。そうするとこのぜいたくな生活が理解できる。 実はほんとに優喜は女性経験がなかった。一人息子で早いうちから母をなくし、父と二人きりだったので女性に疎かった。その父も優喜が30の頃他界した。何回か恋愛のようなものは経験したが、ほとんど手を握ることもなく優喜の方から別れを言った。 母親は、 “私は席をはずしましょうか?” と言ってきたので、 “とんでもありません。お母さんいてください。” 必死になって言った。それを聞いて紀子は、 “かわいい!” と言った。32歳にもなってからかわれているようで、真っ赤になって、 “それで、TMとして聞くんですが今は何をして生活しているんですか?” 指を折りながら、 ”ターさんでしょ、マーくん、メッチ、ミーチャンあと2人くらいいるかなあ。おこずかいくれる人。それもたっぷりね。“ “今電話していた人もその中の一人なの?” “ああ今の人は初めてなの。秘密クラブの会員で今日初めてテレビ電話したの。今日の夜はたまたま暇なので夕食を一緒にとることにしたのよ。” “秘密クラブって売春組織ではないだろうね?” “いやこれは合法的なものらしいわよ。非合法的なものにも入ってるけどね。” ”だって15歳の女性と関係を持つのは法律違反だろう。“ ”あら、恋愛は自由よ。でも私あなた気に入っちゃった。もし貴方が結婚してくれるなら全部やめちゃってもいいわよ。“ 母親が慌てて、 “紀子それは困るよ。” ”大丈夫。私わかるのこの人大金持ちになるわよ。昔の世界の大泥棒たち以上のオーラがあるもの。こんな人初めてよ。“ と今度は優喜の陰部を触ってきた。これはたまらんと、 “すいません私は帰らせてもらいます。” と逃げ出した。触られたあとが変に感覚が残っていた。 どうしても体のほてりがとれない、昼時でもあったので大きなレストランにエアーカーを止めた。前にも書いたが、レストランやコーヒーショップは希望すれば出会いの場所となる。 “いらっしゃいませ。お一人でしょうか?御相席は希望なさいますか?” 今はやりのキャラクターの像が話しかける。優喜が時間局でいつも自分についているウサギみたいなものだ。 ”僕と性格の合う女性がいたらお願い。“ 優喜が女性を求めるのは珍しい。やはり紀子に刺激されたせいだ。 ”脳監査をしてよろしいでしょうか?“ “ああいいよ。” 入り口で脳監査装置が作動した。 “今現在は脳監査をなされた女性は3人しかいなくて、3人とも相性は合いませんが、よかったら当レストランに登録なされた方がいますので、お席についてお待ちください。ところであなたは登録はなさいますか?” “いや今日だけでいい。登録はキャンセルだ。” ”はい。かしこまりました。お席でお待ちください。食事は女性の方がいらっしゃってからでいいですか?10分内に来れる方で脳登録で相性のいい方をお呼びいたします。“ 7,8分も経っただろうか、足取りが軽やかに一人の女性が現れた。 キャラクターの像が紹介する。 ”こちら、西条かおるさん。27歳。塾教師です。“ ”こちら、戸田優喜さん32歳。時間局局員です。“ ”あら時間局のかた。すごく優秀なのね。“ “いや今年入ったばっかしで、中途採用なんです。” チャラクターの像が話しかける。 “お食事は何に致しましょうか?” ”ごめんなさい私食べたばかりなの。コーヒーでいいわ。“ ”僕は、オムライスを。その後コーヒーを。“ テーブルにかおる用のコーヒーと優喜にオムライスがすぐ出てくる。ここはすべて物質転換装置で作られる。 “私と相性が合う人なんて珍しくて、うれしくて飛んできたんです。本当に3カ月ぶりかしら。たくさん登録してるんですけど。” “塾の先生なんですか?何年生を教えているんですか?” “私は高校受験生を受け持っているの。” “高校受験なんて珍しいですね。ほとんどが中高一貫教育だと思っていました。” オムライスを食べながら優喜も話す。話しやすいようにオムライスを選んだのだ。 “それがね中学校で不登校者が多くて、高校だけの学校もできてきたの。高校からはまじめにいく子が結構いるのよ。” ふと紀子が頭に浮かんだが、 ”これはいかん。“ と頭を振った。 ”どうなさったの。“ “いや。中3の問題児を思い出しまして。” ”難しい年ごろよね。私もさんざん手を焼かされているわ。“ “塾では何人教えているんですか?” “それが多いのよ。30人クラスを5クラス教えているの。” ”科目は何を教えているんですか?“ “おもに数学だけど、英語も国語も理科も社会も教えるわ。だって程度は低いのよ。” ”大変ですね。“ “いや教えるのは丁寧に教えればいいけど、大変なのは生活面の指導よ。” “紀子みたいな子はいるか?” と聞きたかったが、まだ知りあってわずかなので聞きあぐねていた。 オムライスを食べ終わりコーヒーが出てきた。オムライスを入れていた容器とさじは消えた。かおるは、まだコーヒーが残っている。ゆっくりと飲んでいるのだ。 優喜はこのまま別れるのが惜しかったので、 “今日の塾の仕事は何時からですか?” と聞いた。 “いつも5時からなんです。” “では、しばらくドライブしませんか?阿蘇と霧島にいって帰れば、丁度4時過ぎには帰れるでしょうから。空の上から見る阿蘇と霧島はいいもんですよ。” “いいわよ。じゃあ私のエアーカーは返しとくね。” “私はその間、携帯電話で午後から休暇を取ります。” “あら、お仕事の最中だったの。” “はい。ちょっと外に出る用事があったものですから。” エアーカーに行って命令をしてきた時、優喜は時間局に電話して午後から休むことを告げた。そして優喜のエアーカーでドライブに出かけた。
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