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作品名:タイムマシン稼働マネージャー 作者:Hei George

第19回   19
夜中に眠っている中で、体中がぐるぐる回っているような感じが続いていた。今まで味わったことのない感覚であった。いつもと同じ7時に目を覚ますと体中の力が抜け別世界にいるような気がした。
“コンピューター。テレビを。9チャンネルNHK放送。”
と言うと、テレビがついてニュースがあっていた。やっとこれで現実の世界に戻ったようだった。食欲がなかったのでジュースを飲もうと思った。
“オレンジとパインとマンゴー及びドラゴンフルーツの混じったミックスジュースを頼む。”
テーブルの上にはミックスジュースが出てきた。優喜はドラゴンフルーツの混じったジュースが大好きなのだ。エアーベッドの上でジュースを飲みながらニュースを見ていた。
“宇宙観測隊が地球から1光年の場所にたどり着きました。1光年先の映像です。電磁波を使った、光の速度を超える映像ですので多少の乱れはご容赦ください。音声は入りません。10年後くらいに音声が来るものと考えられますが、もっとかかるかもしれません。”
と言ってきたので、興味を持って見ると、人の顔がゆがんではいってきて、
”これはローゼン船長だと思われます。“
とアナウンサーが解説していた。ゆがんだ映像を見るとますます頭がくらくらしてきたので、
“コンピューターテレビを消して。”
と言って、静かになった部屋の中でミックスジュースをゆっくりとのどに流し込んだ。
40分くらいエアーベッドで休んだ後、起きだして時間局へと出かけた。
時間局に入っていつもなら右のドアに行くのだが今日はまっすぐ行った。まっすぐには受付がある。受付で、
“TMの戸田優喜です。自宅のコンピュータをレベル3にあげ、私に関するものはレベル5まで上げられると聞いたんですけど。”
と言うと、
”この後ろの3番コンピューターに行ってメモリーカードをもらってください。優喜さんの情報はこちらから書いておきます。“
まっすぐ行って3番コンピューターの前に座っていると、
テーブルの上にメモリーカードが出てきた。
”これをお宅のコンピューターに挿入するとセットアップできます。尚、セットアップ後はメモリーカードは自動的に消滅します。コンピューター挿入による空気破壊システム(空気に触れるとカードが消滅する)が作動するようになっているからです。“
メモリーカードを持って出ていこうとすると、受付の女性が、
”部屋に戻った後でもいいんですが、局長が用事があるそうですので局長室まで行ってください。“
と言ってきたので、
“直接行ってもいいですか?”
と聞くと、
“どうぞ。午前中はいつでもいいそうです。”
と言ったので、直接行くことにした。行くことに決めると、ウサギが出てきて、
“ご案内します。”
と言って、先に立って歩き出した。
”局長室は74階です。直接行く方法はあるのですが、4人しか許されていないので75階までエレベーターで行き、すいませんが階段を1段下りてもらいます。“
“4人て、どんな人?”
”局長と秘書兼任の特別研究員です。“
“秘書兼任の特別研究員?”
”局長は時間局九州局の最高の地位ですが、全体の把握とともにいつも新しい研究をしていなければならないんです。貴方は公務員になれたので秘密規制のプロテクトが外れたのでお知らせできるんですが、時間局にいる中で大学院博士課程卒業でない人はあなただけなのです。マスコミ対策で公務員となったのですが、他のかたは全員博士号をもっています。そして時間や人間の精神に関する研究をしています。毎年いい研究をした2人が交代して秘書兼特別研究員になります。1年前からいる1人と話し合って3人の中からリーダーが決まります。その3人と局長で実質的なこの時間局の統括と、世界に誇る研究をしています。“
21世紀は国家公務員試験上級職に合格すればそのまま出世し、事務次官まで昇格するものがいたが、あまりにも勉強不足の事務次官が続出して、局長以上の公務員は博士号を持った人に与えることになった。そのため4年間の大学院留学をするようになったり、博士号をもった教授や講師からの局長転出が22世紀、23世紀と続いた。そうなるとAIDS問題や、肝炎問題などの厚生労働省の勉強不足のために生じた問題も最小限に抑えられたり、未然に防がれたりするようになった。そこで、24世紀からは部長以上は大学院卒業で博士論文なども考慮に入れられ、25世紀では研究して論文を出す人が出世していくシステムとなってきた。時間局のような複雑な知識、教養のいる局は大学院卒業者で博士の学位をもったものそれもいい研究をした人しか採用してはいない。大学を卒業しただけの戸田優喜はマスコミに騒がれたための非常手段で非常に珍しいケースだった。75階までウサギの案内で高速エレベーターに乗り、展望レストランの片隅にある非常階段から1階歩いて降りた。非常階段を下りて扉が自動的に開かるとそこは一面が仕切りのない空間で、実験机がたくさんあり、真中に局長が座って論文を書いていた。優喜を見ると、
”戸田君かね。初めまして。私が九州時間局局長の山口新作です。えーとコンピューター戸田優喜君の資料を出して。“
出てきた資料を眺めていたが、
“君は大学院卒業じゃないんだね。その君が記憶を消す方法を見つけたのか?すごいなあ。”
“はあ。相沢さんから連絡があったんですか?”
“いや。タイムパトロールの本部から君に講義の依頼が来てね。話を聞くと記憶を消す方法を見つけたそうじゃないか。それは世界で初めてのことなので、今週土曜日、講義に行く前に論文に仕上げてもらおうと思ったが、君は論文を書いたことがないんだね。だいたい時間局は博士以外はとらないと思っていたんだが、そうか、この資料によれば君はカメハメ波ゲームで日本最高点を取ったのか。カメハメ波ゲームは私も息抜きによく行くんだ。研究にいきずまった時、実にいい。もっとも10万点とったことは1度もないんだけど。まあ、単刀直入に具体的にマテメソを書けるかね?後は私が論文を書いてあげるから。ネイチャーブレイン(Nature Brain)に投稿しようと思ってるんだ。”
”マテメソってなんですか?“
“うーんやっぱり知らないか。Material and methodsのことで実験をする材料と方法だが。君は何を使って実験して記憶を消すことができたのかね?”
“私が脳監査装置を使った後、昨日の夕食の献立が思い出せなくってある種の短波長が私の脳に作用し記憶を消したことに気づきまして。”
”ある種の短波長とはどれくらいの波長かね?“
“ちょっと今思い出せないんですが、脳監査装置のだす波長です。”
“コンピューター脳監査装置の出す短波長の波長はいくつかね?”
コンピューターの答えた波長をメモしながら、
“それから?”
“私は大学の卒業研究では脳の記憶のマッピングですので、その局在と記憶蛋白の密在具合とを比べて、特別の記憶を消すことができたのです。”
“コンピューター戸田優喜作の卒論で記憶のマッピングの論文を出してくれ。”
局長はその論文を読んでいたが、
“君の大学の指導者は文章を書くのが下手だなあ。”
と言っていたが、優喜にそのほか3つ4つ要領よく質問したあと、
“よし。分かった。私が論文を書いておく。君がファーストで、係長、君の直接の上司をセカンド、そして私がラストネームでいいかね?係長も君を選定して、君を公務員にするのにも最も力を入れていたからいいだろう?君の論文も3人くらいの人間がいた方が箔がつくからね。とにかく土曜日までに書いて発表しとかないと、君がタイムパトロールに教えた後では誰が一番初めに見つけたか分からなくなるからね。この論文は学会でも評価を受けるよ。君も脳科学学会に申し込んでおくからね。いいだろう?”
”はいお任せします。“
”論文を書いてわからないとこは聞くから、ちゃんと部屋にいてくれな。“
”はい分かりました。“
“ちょっとみんな集まってくれ。”
研究員の3人が集まると、
”TMの戸田君だ。特定の記憶を消す方法を発見した人だ。彼は大学卒業しただけだ。君たちも戸田君に負けない研究に励んでくれ。戸田君クラスの論文を書いてくれよな。“
“山下です。戸田さんすごいですね。この部屋にも遊びに来てください私の研究をお見せします。
“宮中です。戸田さんと同じ年齢です。今、プリオンが脳を活性化する研究をしています。”
“山本です。私だけ今年この特別研究員になったのですがとても面白いです。予算も使い放題ですので、今までの3倍以上のスピードで研究が進んでいます。実績を上げてずっといるつもりですので戸田さんも来た時は一緒に研究しましょう。”
3人の迫力に圧倒されながら、自分の部屋に戻ろうとしてふと思い出して、
“あのー、私の家に相沢さんようなタイムマシンを備え付けはできないでしょうね?”
と聞くと、
“タイムパトロールで3週間研修を受けたらTMだったら、つけてもらえることはできるよ。ただし来週水曜日、何人か過去から帰ってくるからそのレポートを書いてからだし、もう一つ農園を開いている小説家のとこにも様子を見に行ってほしいんだが、その後なら研修に行っていいよ。”
局長は全体のこともよく把握しているようだ。
“ぜひともお願いします。”
“それから1ヶ月はこの階に自由に来れるようにしておく、1階の高速エレベーターに乗って74階と言うと自由に来ることができるようにしておくから、自由に遊びに来給え。君がこの階に自由に来れる5人目だ。ただし1か月だけだがね。ちょうどその位に論文も出版されるだろう。”
“あのー、論文は英文ですか?”
”勿論だよ。国際的な論文はみんな英文なのさ。“
”1ヵ月間英語論文を読む練習をしなくては。“
と優喜はひそかに思うのであった。


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