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作品名:混沌こそ我が墓碑銘 作者:鈴木善行

第6回   6
 バンドを組みはじめてからというもの、練習が行われる日曜の朝の目覚めが格段によくなった。たとえ土曜の夜によく眠れなかったとしても、ユーロジンという中時間作用型の睡眠導入剤を飲んでいたとしても、すこぶる目覚めはよい。これがいつもなら携帯電話のアラーム音が鳴るたび、これでもかと眉間に皺を寄せ、ファックと小さくつぶやきながら、二度寝できる時間があるかどうか確認するところなのだが、日曜にかぎり、そのような惨状とは一切無縁であった。やはり朝はこうでなくてはいけない、と、ここは言いたい、言ってみたい、が、平日目覚めさせらたときのあの不快感、脱力感にはどう足掻こうと勝てっこない。しかし、そんな日曜の朝といえども、悲しいかな油断はできない。平日には、ほとんど姿を見せない兄が必ず家にいるからだ。

 今年で齢28となるフリーター素人童貞乙の兄は、根暗で陰湿で理屈っぽい性格で普段は自分の部屋に籠っていることが多いくせに、わたしがリビングで朝食をとっているときにかぎって、ひょっこりと顔を出し、聞いてもいない講釈をご丁寧にも垂れてくれる。

「だからおまえは、何度も言ってるだろう、朝に飯を食うなって、朝はな、胃腸を休めるべきなんだよ。そういう時間なんだよ、朝っていうのは。それなのにおまえは今日も朝っぱらから、サンドイッチか。どこで買ってきたサンドイッチなんだそれは。まさか自分で作ったとか言いだすんじゃないだろうな。言うなよ、そんなこと、たとえ自分で作ったとしてもだ。だってよ、この、ちょっと考えてもみろよ、休日の朝にな、妹が自分で作ったサンドイッチを食べてる姿なんて見たくないって話だよ。そもそも、おまえはサンドイッチを自分で作るなんてことが許されるような育てられ方はされてないだろう。なんかちがうだろう。いろいろと間違ってるだろう。気づけよ、いいかげん、そういう基本的な部分、どんどん察していかないと。しかも、これみよがしに牛乳なんか飲みやがって、俺に喧嘩を売ってるのか。ふっかけてるのか。なんだよ、その誰も得しないような白い色の飲み物は。そんなものがほんとうに体にいいと思って飲んでる姿を見てたら、こっちが悲しくなってくるよ。身内として。牛乳なんてのはな、んだから、食うなって言ってるだろ、サンドイッチを。置けよ、サンドイッチを。皿の上にぶち置けよ。だいたい朝からパンって、おまえはいったい何人になったつもりなんだ。アメリカの農務省やアメリカ西部小麦連合会といった団体がどういう目的で、戦後日本の学校給食にパンや脱脂粉乳を導入したかってことを、あのな、って、おいおい、そこでなんで帽子をかぶりだすんだよ、おまえは。なんか意味あんのか、その行為には。社会に対するなにかしらのあれなのか。帽子とともに生まれてきた女か、おまえは。わけわかんねえよ」


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