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作品名:混沌こそ我が墓碑銘 作者:鈴木善行

第5回   5
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 同じ休日といってもなにも予定がない土曜日とはちがい、毎週日曜日にはバンドの練習がある。

「直子」

 そう名づけられたバンドは、女子高生がギャルバン組んでもいいでしょという恣意的な思いを旗印に、わたしが所属している軽音楽部の部員を中心にメンバーが構成されている。女子高生、ノイズ、直子、この三枚看板でもってド素人のわりにそれなりの人気を博していた。直子とは、バンドのリーダーであり、みんなで組もうよと言い出した人物でもあり、それでグループ名が「直子」だったりもするのだが、バンドを組みたい、でもドラムを叩ける人がいない、歌も自信はない、もちろん曲なんか書けるわけがないってな理由から、んじゃ、いっちょノイズでもやったるかという彼女の意見に真っ先に便乗したのがわたしだった。

 直子の顔立ちは、涼しげな細面で女から見てもなかなかにきれいでスタイルも程よく痩身だし、それだけでもう勝ったも同然なのだが、酒に酔うと「額にドスで刺青入れてくれる男子を募集しまぁす」や「おばはんの乳首に卍の花が突き刺さる」や「大阪城に犯されたら、わたし死ぬかも」などといった、意味不明かつ巧妙に下品な言葉を発する癖があり、そこにわたしは目をつけていた。直子の容姿と、不条理な発言とのギャップ。萌え、だと。これが、萌えなんだと。酔った彼女を初めて見たとき、刹那で思った。幸いというべきか、直子は若干だが対人緊張症で、ライブのとき緊張をほぐすために酒を飲ませるのも難しくないぞと踏み、ライブ前に軽く酔わせりゃ、もうこっちのもんだ。うん。よし。これはいけると。すごいことになるやもしれぬと。いよいよ間違った時代が来るぞと。程なくして、彼女の才能というか能力を高く評価するようになったわたしは、誰かとなにかしら活動するなら直子がいなけりゃ、すべてがはじまらないとさえ思うようになっていた。その矢先、件のバンドの話が持ち上がり、しかも理由はどうあれノイズをやろうと直子のほうから言ってきたもんだから、そこになにか運命的なものを感じたとしてもおかしくないだろう。だってさ、おい、ノイズといやあ、わたしが非常階段やマゾンナ等のコアな音楽を狂うように聴いているのを直子は知っていたし、だからよけい嬉しかったのかもしれない。一瞬だったとしても、二人の精神が混じり合えた事実に軽く震えた。そんなこんなで生まれたバンドが、「直子」であり、後に『東京デスメタルフェスティバル』に出演し一部の音楽マニアを熱狂させることになるのだが、それはまた別の話だ。


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