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作品名:続・不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第40回   富士山が日本一でなくなる
最近、富士山の周辺が騒がしい。と言っても、騒がしいのは学者とマスコミの方であり、肝心の富士山自体はまだ沈黙を保っている。このお話は、別に富士山の噴火の予知をしようというものではない。筆者も地学の専門家ではないので、そういう話は専門家に任せておくとして、仮に富士山が大噴火を起こした場合、日本一の座から滑り落ちるかどうかを考えてみたい。
富士山が噴火してその高さが低くなるシナリオはいくつか考えられる。最もありうるシナリオは、大噴火によって山頂付近が吹き飛ぶというものである。富士山の高さは3776メートル、2番目の北岳の高さが3193メートルだから、噴火によって山頂の約600メートルが吹き飛べば逆転の可能性もある。
実際、会津の磐梯山は明治時代に山体崩壊を起こすような大噴火を起こし、2000メートル以上あったと思われる山が1800メートル台まで低くなってしまった。富士山は、この磐梯山と同類の火山なので、ありうるシナリオである。
次に考えられるシナリオは、富士山の中腹からの噴火である。火山というと頭のてっぺんから噴火すると考えがちだが、富士山の場合は中腹からの噴火も考えられる。実際、江戸時代にあった宝永大噴火は山腹から噴火した。その噴火口は今も残っている。火山の噴火は、地下から上昇してくるマグマに押されて岩盤が割れることで起きる。岩盤の割れる場所が下の方であれば山腹噴火が起きる。この噴火が大規模であれば、えぐられた場所に向かって山頂が崩落することも考えられる。
頑丈なように見える富士山も、実際には溶岩や火山灰が幾度となく降り積もってできたものなので案外もろくできている。実際に富士山に登ったことのある人はご存じと思うが、日本アルプスのようなそびえ立つ岩壁があるわけでもなく、ただ火山灰や溶岩や軽石が混じり合った崩れやすい斜面が延々と上まで続いている。だから、そんな山の下の方に大穴が開くと、砂山を崩すようにズルズルと山が崩れてゆく可能性もある。ただ、このシナリオであれば山頂全体が崩壊するほどの規模になる可能性は低い。
最も恐ろしいシナリオはスーパーボルケーノと呼ばれる超巨大噴火である。実際、これは過去に阿蘇や桜島(鹿児島湾)で起きた。前編第11回「日本列島は沈没するか」でも書いた通り、それは単なる火山の噴火というよりは大規模な地殻変動とでもいうべき規模である。火山の下にある巨大なマグマだまりからマグマが噴出して、その後の空洞に地盤が落ち込むのである。その後の地形は、阿蘇のカルデラや鹿児島湾(これは姶良カルデラとも呼ばれている)のようになる。
もし富士山でこんな巨大噴火が起きたら、東京のほとんどが厚さ数メートルの火山灰で埋もれてしまう。今のところ富士山の地下でそのような大規模なマグマだまりは観測されていないのでまず大丈夫と思われるが、もし実際に起こったら、富士山は間違いなく日本一の座から滑り落ちることになる。
最後に、富士山の噴火の可能性であるが、これまでに世界のあちらこちらでマグニチュード9クラスの巨大地震が起きた後には必ず数年以内に近くの火山が噴火したという前例が報告されている。その原因は、地震によって地殻のひずみが大きくなり、マグマだまりに加わる圧力が変わるためではないかとされているが、詳しいことはよく分かっていない。仮にこのジンクスが当たっていれば、日本の近くでも近々火山が噴火するということになる。
ただし、噴火するのが富士山とは限らない。日本にはまだまだ多くの活火山がある。噴火するのは別の火山かもしれない。筆者は、仮に富士山が噴火しても日本一の座はキープするだろうと思っている。でも、あの美しい円錐形の姿は見納めになるかもしれないが…。


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