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作品名:続・不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第4回   骨董品に価値はあるか
骨董品店に行くと、本当にどうしようもないガラクタに何十万円もの値札が付いている。なぜこのようなことが起きるのだろうか。
普通の感覚なら、新品が一番高く、古くなるにつれ徐々に減価して、耐用年数を過ぎる頃には無価値になるはずである。ところがある一定の古さを過ぎると、逆に値が高くなってゆく。例えば武具甲冑の類。戦のなくなった現代において、鎧かぶとの実用価値は全くゼロである。それに何百万もの価値が付くのは、ひとえに古さと希少さのゆえである。
以前、ある趣味の悪い(?)テレビ番組で、何億円もする名器といわれるバイオリンと初心者用のバイオリンの音を聞かせて、タレントや著名人たちにどちらが本物かを当てさせるというゲームをしていた。隠しカメラで別室から見て、タレントたちが間違えるのを見て、皆でゲラゲラと笑う。面白いのでついつい見てしまったが、全く何億円もするバイオリンの価値とは一体何なのかという気がした。
それでも、バイオリンの名手なら微妙な音の違いを聞き分けると言われているが、最近ではさすがの名器も作られてから300年近く経ち、劣化が激しくむしろ雑音が多いという。しかし、物は言いようで、そのわずかにかすれた雑音がまた渋みがあっていい音色に仕上がっていると言う専門家もいる。
絵画の世界もこれに似ている。特にオークションで何億円もの値段で落札される名画には決まって贋作も多い。やはり別のテレビ番組で、フランスの贋作師、と言うと叱られそうなので模写師としておこう、模写師が書いたというゴッホやルノアールを本物と見比べていたが、専門の鑑定士ですら見極めがつかないほど上手に描かれていた。全く、絵を鑑賞するということを美術愛好家たちは何と心得ているのであろうか。
人は、なぜこうした古いモノに高い値段を付けたがるのか。それは、唯一その希少性のゆえである。大体、こうした名器や名画をオークションで落札した人に限って、それを鑑賞するでもなく、空気調整と防犯のよく効いた倉庫に大切に仕舞い込んでいる。要するに、いずれ高値で転売することだけを考えているのである。あるいは、そうした希少価値のあるものを自分だけで一人占めすることで、悦に入っているのかもしれない。
骨董品の価値は、それを欲する人がいるから値が付くのであって、全く人が作り出した虚構に過ぎない。それが証拠に、終戦当時、今なら何百万円もするような着物が米一升と交換されたこともあった。食糧危機が来て食べる物がなくなれば、それこそゴッホのヒマワリがパン切れ1枚と交換されることになるかもしれない。人間の価値観なんて所詮その程度である。


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