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作品名:続・不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第39回   ひもが世界を決めている
前回の続編です。素粒子物理学に興味のない人なら「ひも理論」と聞いても何のことやらチンプンカンプンということになりそうだが、ことはあなたの存在、いや人類の未来の運命にもかかわる話なのである。
ひも理論は、別にSFの世界の話ではなく、その道の人々の間では真剣に議論されている大真面目な学問である。それによると、我々の身体を含めおよそこの世界にある万物はすべて極微のひもで出来ているという。そのひもの大きさは10のマイナス33乗センチメートルくらいというから、原子の大きさよりもさらに何兆分の1のそのまた何兆分の1も小さい。もちろん、このひもを実際に見た人は誰もいない。あくまで物理学者たちが勝手に想像している理論上のモノにすぎない。
と言われても、何のことやら想像もできないという人のために、多少不正確な点はご容赦いただき、身近な例で考えてみよう。縄跳びの縄を1本用意する。まずは縄の両端をもって普通に縄跳びをしてみよう。この時、縄の回転速度をどんどん上げてゆくとやがて縄は見えなくなり、さらに回転速度を上げると中で縄跳びをしている人も見えなくなり、ぼんやりした球の形になる。あるいは、今度は縄の片方の端を持ってカウボーイがやるように縄をグルグルと頭の上で回してみる。それも1秒間に何万回というスピードで回せば、縄はやがて見えなくなり、ぼんやりした円盤の形になるはずだ。
ひも理論でいう「ひも」は1秒間に何兆回という猛烈なスピードで振動を繰り返しており、その振動のパターンの違いからいろいろな素粒子が生まれているというのがひも理論の主張である。だから、仮に素粒子が丸く見えたとしても、それは縄跳びの縄が勢いよく回っているのと同じで、実際は丸でも四角でもなく、ただの細いひもだということになる。
もしこれが事実なら、われわれの体の中にも無数のひもが存在していて、それらがものすごい勢いで振動しているということになる。もし、ひもの振動が止まれば、われわれの体は言うに及ばず、すべての形あるモノは雲散霧消してなくなってしまう。まさに、「ひも」がこの世界を決めているというのである。
そんなバカな、見えもしない世界の空論だと言われそうだ。筆者もそのように思いたい。でも、物理学の専門家によると、ひもの存在を仮定した方がすべての物理現象をもっとも美しく説明できるという。アインシュタインの相対性理論でも、量子力学でも説明できなかった問題のすべてにキレイに答えが出るのである。ひも理論が究極の理論と言われるゆえんである。
ただ、残念なことにひもの存在を確かめるすべがない。ひもがあまりに小さすぎて、観測する方法がないのである。電子顕微鏡は、見ようとする対象物に電子を当ててそのはね返り具合によって対象物の凹凸を再現している。だから、基本的には電子より小さいモノは見ることができない。同様に「ひも」を見ようとすれば、ひもよりも小さい何かを準備しなくてはならないのだが、そんな小さいモノはこの世に存在しない。よって「ひも」は永遠に観測できないことになる。(物理学者たちは粒子加速器という機械を使って、間接的にひも理論を実証できると主張しているが…)
それで、もしこのひも理論が正しいと仮定して、何がどうなるというのであろうか。ひも理論が、予言していることでいくつか興味深い話がある。
まず、今の宇宙はどうやって出来たのか、さらにはこれから宇宙はどうなってゆくのかという点がかなり明確になる可能性がある。これはある意味、とてつもなく恐ろしい。第20回「宇宙最後の日」でも書いたように、たとえそれが何百億年か先のことであっても、いつか遠い、遠い未来に人類には逃れようのない最後の審判の日が必ず来るということが科学的に証明されてしまうかもしれないのである。そうなれば、恐らく人々の生死観や宗教観にも測り知れない影響をもたらすであろう。
そしていま一つは、異次元(余剰次元)の存在である。ひも理論では、縦・横・高さの3次元に加えて、目に見えない次元が6次元もあるとされている。それらの次元は、われわれの目と鼻の先の空間のどこにでも存在しているのだが、あまりに小さいことに加えて、われわれの住む3次元世界とは異なる次元なので観測すらできないという。ここまで来ると、もうSF話をも超えた絵空事のように聞こえてくるが、複雑な数学的計算の結果理論的に導かれた結論だそうだ。
「ひも理論」を大真面目に語り出すと分厚い本が何冊も必要になってしまう。筆者も物理学の専門家ではないので、この辺りでこの話は終わりにさせていただき、さらに詳しい内容を知りたい方は、専門書を参照してください。


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