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作品名:続・不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第36回   正義の味方が刑務所に
またまた不可解なお話である。ウルトラマン、仮面ライダー、スーパーマン…、世の中には正義の味方が溢れている。そのおかげで世界の平和が保たれているのである。
ところがそれに異を唱える出来事が起きた。ウルトラマンを見ていた子供たち、ウルトラマンが怪獣を倒して皆が拍手喝采している中で、1人だけ泣いている子がいたという。その子いわく、「殺された怪獣さんがかわいそう。」
皆さんはこれをどう思われるであろうか。とても優しい心の持ち主だったのか、それとも単に変わった子であっただけなのか。でも、この出来事をよくよく考えると、簡単には済まされない話になる。
正義の味方は、いつも「正義」という言葉を振りかざして暴力をふるう。そして最後は相手を殺してしまう。これが人間界の話ならタダでは済まない。ウルトラマンや仮面ライダーは刑務所に行かなくていいのだろうか。
ウルトラマンの行為が罪になるかどうかは刑法第36条の「正当防衛」に該当するかどうかで判断することになる。同法によれば、「1.急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。2.防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。」とされている。
怪獣が暴れてビルや橋を壊している状況は、まさに急迫不正に該当し、それから財産権を守るためやむを得ず怪獣を攻撃したのだから「正当防衛」になりそうである。しかし、問題は同法の2項目の部分で、「防衛の程度を超えた行為」は、仮に情状酌量の余地があるとしても罰せられる可能性があるという点である。先程、泣いてしまった子供は、怪獣さんを殺してしまったウルトラマンの行為を「過剰防衛」だと断じたわけである。この子が裁判員なら、ウルトラマンは有罪となる可能性がある。
正義のために為した行為が罪になると言われると、テレビのヒーローたちも動きづらくなる。殴る蹴るぐらいまではよしとしても、光線銃で殺してしまうというのは過剰防衛になる。
もっとも、怪獣は人ではないので刑法で言うところの殺人にはならない。人以外の生き物は物品とみなされるので、実際には器物損壊ということで裁かれることになるであろう。
あるいは、ウルトラマンも仮面ライダーも人ではないので、そもそも刑法の適用がないとも解される。その場合、正義の味方は刑務所に行かなくてもよいことになる。世界の平和は永遠に保たれるのである。


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