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作品名:続・不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第30回   似顔絵なのに似ていない
新聞とかでよく漫画家が描いている政治家やスポーツ選手などの似顔絵。ホントによく似ているなあといつも感心させられるが、実は全然似ていないのである。
実際、描かれた絵のすぐ横に実物の写真を並べて見比べてみると、似ていないことがすぐにわかる。例えば、顔の大きさと比べた場合の目や耳の大きさを実際に測ってみると実物とはかけ離れている。でも、似顔絵だけにして見ると、やっぱり似ていると見えてしまう。これは、人の視覚認識力のあいまいさを利用した、いわばごまかしの手法である。
人の視覚認識は結構いい加減で、ある一部分だけを見て対象物がそれと分かると、他の部分を見ることは省略してしまう。究極の似顔絵はミッキーマウスの影絵。大きな黒丸に、小さな黒丸を2つくっつけただけで、大抵の人はミッキーマウスに見えてしまう。目も鼻も口もないのに、である。
似顔絵が上手な漫画家は、長年の経験で瞬時にこうした人の顔の特徴をつかむことに長けている。だから、街頭で通行人をつかまえて即興で似顔絵を描いてもやはり上手に描いてしまう。
でも、これが機械だとそういうわけにはゆかない。例えば、セキュリティーチェックなどで使われる生体認証。これは、通常顔の特定の部分の2点間距離を測る方法によっている。例えば、目尻と耳の先の距離、あるいは鼻の幅と口の幅の比、等々いろいろな方法があるが、そうした距離や比率を測ることで本人であることの確認をしている。
距離を4〜5箇所測り、その比率を計算するだけでも、完全に一致する人に出くわす確率は億分の1レベルになるそうなので、4ケタの暗証番号よりははるかに安全である。指紋や静脈による照合なども基本的には同じで、あらかじめ決められた特定の2点間の距離を測る方法によっている。
印鑑照合のように重ね合わせて完全一致を確認するわけではない。もちろん完全一致がベストであるが、そうするとわずかなズレやブレでも機械は不一致と判断してしまうので、生体認証としては使い勝手が悪くなる。2点間距離の照合で十分である。
一方で、人が見ると全然似ていないと思われる顔でも、機械にかけると同一人物と判定する場合がある。先程の逆のケースである。警察などでよく使われている写真照合がそうである。長い年月が経って顔が変わっていても、あるいは整形で顔を変えていても、判定ミスをすることなく見破ってしまう。それは、顔の中の各パーツの2点間距離が生まれつき固有のものであり、どのようにいじくっても一生変わらないことを意味する。
でも太ると人相がすっかり変わるじゃないかとの反論がありそうだ。だから顔の大きさや特徴を比較するわけではく、何ヵ所かのパーツ間の距離の比率を照合するのである。要は、顔を究極の抽象絵画、あるいはもっと極論すれば単なる点の集まりと見て比較するのである。これをすり抜けるには、それこそ頭蓋骨を粉々に砕いてからもう一度つなぎ合わせるぐらいの整形をしないと不可能である。
似顔絵なのに本当は全然似ていなかったり、全く似ていないのに同一人物であったりと、人の目の識別能力はやはりあまり当てにならない。


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