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作品名:続・不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第29回   時代劇のウソホント
最近、テレビで時代劇をほとんど見かけなくなった。かの有名な「水戸黄門」も終了し、今ではNHKの大河ドラマくらいになった。昔は、毎日1本はゴールデンタイムに放送されていたものである。時代劇ファンとしてはさびしい限りである。
さて、時代劇といえばチャンバラであるが、これが結構ウソホントの多い世界である。まず、チャンバラで一度に10人ほどの相手をバッタバッタと切り倒すシーン。剣道の達人から言わせるとまったくのウソらしい。達人ですら、真剣での勝負であれば、3人くらいに一度にかかられたら、まず無傷ということはありえないそうだ。
剣の心得の全くない人でも、命のやり取りとなると必死である。刀を構える前にも、切られるのを覚悟で相手の体にむしゃぶりついてくる。仮に一太刀浴びせたところで、すぐに死ぬわけでもなく、しがみつかれている間に後ろからもう1人にブスリとやられると達人でもかわしきれない。
では、本当の剣の達人はどうやって10人も切り倒すのか。これは、かの有名な吉川栄治作の「宮本武蔵」の一乗寺下り松の決闘シーンが参考になる。武蔵は、実際は泥田の中を走り回りながら1人ずつ相手を切ってゆくのである。泥田の中では、相手も動きにくいし、ましてや複数名で息を合わせて切りこむということは不可能である。
結局、武蔵は1対1の決闘を10回やるという方法で10人を切り倒したことになる。それでもすべての勝負に連勝したのは凄いと思うが、これであれば不可能ということはない。自身が傷つかず、10人を切り倒すにはこの方法しかない。実際、時代劇の殺陣でも、本物の剣豪は相手に囲まれる前に走り去りながら切っていっている。今度時代劇を見る機会があったら、注意して見てみよう。
次に、チャンバラというと刀を使うものと思いがちだが、真剣よりは木刀の方がいい場合もある。同じく宮本武蔵の巌流島の決闘では、武蔵は船の櫂を使って佐々木小次郎に勝った。それにはやはり理由がある。
人の体は意外と硬く、いくら切れ味のいい刀でも余程力を込めて切り下げない限り、まず即死に討ち取るということ困難である。即死でなければ、相討ち、仮に勝ったとしても自身もかなりの深手を負うことになる。その点、木刀で頭を一撃すれば、即座に意識を失わせられるか、悪くても相手をフラフラにすることができる。こうなればもう勝ったのも同然である。本当に命のやり取りをする決闘なればこそ、真剣勝負ではなく、軽くてしなりのいいこん棒のような武器の方が有利なこともある。武蔵は、決闘後のことまで考えて、無傷で勝つ方法を考案したといえよう。
次いで、時代劇に欠かせないのが忍者。忍者の世界もウソが多い。というか、忍術自体がそもそも相手をごまかす術であり、現代流に言えば、マジックのようなものである。
まず、最もよくあるのが人の背丈以上ある屋根の上に軽々と飛び上がるシーン。どんなにジャンプ力のある人でもこれは不可能。よくて走り高跳びのように背面飛行すれば、何とか自身の背丈ぐらいはクリアできるかもしれないが、これでは着地時に背中を打ちつけてしまい次の動作に移れない。実際は、軽業師のように、2〜3人1組で先に1人を放り上げておいてから、縄などを使って素早く残りを引っ張り上げるというやり方をしていたようである。
それと、お決まりの手裏剣。これもウソが多い。カッ、カッ、カッと手裏剣が連続で木や板に突き刺さるシーン。実際、観光地によくある忍者屋敷とかに行くと手裏剣投げの実技をさせてくれるところもあるが、まず刺さらないという。だから、刺さりやすいように的をわざと発泡スチロール製とかにしてある。時代劇で、忍者が手裏剣で一撃のもと相手を倒すというのは全くのウソで、当たってもせいぜいかすり傷を負わせられる程度である。実際には、刃先に毒を塗って効果を高めるか、あるいは単に相手の注意をそらすための道具として使われていたようである。
講釈云々はともかく、そんな楽しい時代劇がまた復活してほしいものである。


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