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作品名:続・不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第25回   三角形の内角の和はホントに180度か
またまた小学校3年生の算数である。余程の算数嫌いの人でも、これくらいは覚えているであろう。学校の先生も、全く疑問を持つことなく、子供たちにそのように教えている。でも、これにはある重要な条件が付いていることは、案外知られていない。その条件とは「真っ平らな平面上では」という条件である。この条件を大真面目に考え始めると、これまたややこしいのである。
大学レベルの数学になると、途端に三角形の内角の和は180度でなくなる。トポロジー(位相解析)という空間を扱う特殊な数学では、三角形の内角の和が180度より大きくなったり小さくなったりもする。
ということで早速実験をしてみよう。用意したゴム風船にマジックで三角形を描いてみる。念のため、分度器で3つの角度を測って、合計が180度になることを確認しておこう。この風船を膨らませると、描かれた三角形はビローンと伸びてふっくらとした三角形になる。この時、三角形の内角の和は180度より大きくなっている。
そんなのはあたり前、常識的に考えてもそうなる。その通り。でも、この当たり前のことを、トポロジーの専門用語で言うと、「曲率が正の球面(要は風船のように膨らんだ面)では三角形の内角の和は180度より大きくなる」というようなややこしい表現になる。
今度は、ピッチリと張ったビニールシートに同じように三角形を描いてみる。そして、その三角形の真ん中あたりにパチンコ玉を一個置いてみよう。この時、ビニールシートは下に押されて、三角形は少しすぼんだような形になる。これを専門用語で言うと、「曲率が負の球面では三角形の内角の和は180度より小さくなる」ということになる。
ここまでは、どうということない数学のお話であるが、これに物理学を持ち込んでくると、さらにややこしいことが起きる。アインシュタインの相対性理論によると、地球のような重い物体の周りでは重力の力で空間自体がゆがむという。先程のビニールシートがパチンコ玉の重さでゆがんだのと同じである。ただ、この空間のゆがみはあまりに微少であるため、我々の目で見ることはおろか、人類が手にしているどのような精巧な機械をもってしても計測することは不可能である。
でも、空間のゆがみはあらゆる物体に及ぶので、仮に今あなたの机の上に1枚の紙が置いてあったとしたら、この紙も何兆分の何兆分の、そのまた何兆分の1ミリぐらいは地球の方に凹んでいるかもしれない。そうすると、そこに書かれた三角形の内角の和は、これまた何兆分の何兆分の、そのまた何兆分の1度くらいは180度より小さくなっているはずである。
もちろん、日常生活においてはそのような極微のゆがみは全く無視してよいが、超・厳密に言えば、クイズ番組でよくある「三角形の内角の和は?」という問いに「180度」と答えても、即ピンポーンということにはならない。


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