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作品名:続・不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第24回   エスカレーターのステップは何段あるか
大昔の漫才のネタ話である。初めてエスカレーターを見た男が、ステップが何段あるか何時間もかけて数え続けるというものである。ホントにバカげているようであるが、この問題を大真面目に考えると結構悩ましいのである。
まず、最も簡単な方法は、エスカレーターの高さを1ステップの高さで割れば簡単に段数を求めることができる。例えば、高さ30メートルのエスカレーターで、1ステップの高さが30センチならば、段数は100段(30メートル÷30センチ)、小学校3年生の算数である。
では、本当にそうかということで、実際に実験してみよう。出てきた任意の1ステップにスプレー缶で赤いペンキを吹き付ける。そのステップがグルグル回って一周してくるまでに何段ステップが出るかを数えると、本当の段数が分かる。これが100段より多いだろうということは素人でもすぐに想像がつく。
では、これでエスカレーターの段数は決定したのであろうか。否。
世の中には、せっかちな人がいて、動いているエスカレーターのステップを歩いて上がるという人がいる。この人がエスカレーターの階段を自力で20段上がったとしよう。さて、エスカレーターは何段になるであろうか。この人がエスカレーターを上がり続けている間にも、エスカレーターは次々とステップを出し続けているから、20段プラス何段かになるはずである。仮にこの人がエスカレーターに20秒間乗ってしたとしよう。1秒間に2ステップ出るエスカレーターならば、40段が加算され、この人は都合60段を上ったことになる。では答えは60段か。否。
もっと極端な例、というよりかこれが本来の姿なのであるが、大人しくじっと立ったまま乗っている人。この人は全くステップを上がることなく上階に達することができるので、この人にとっては段差はなし、つまりエスカレーターはゼロ段ということになる。
あるいは、もっと危険な例としては、昇りのエスカレーターを逆走して下る人。エスカレーターのステップが出てくる速度と、この人がステップを降りる速度が同じであれば、この人は永久にエスカレーターを降り続けることになる。この人にとっては、エスカレーターの段数は無限ということになる。
このように、エスカレーターのステップの数は、乗る人によって異なるというのが答えになる。
何か答えになっているようで訳が分からなくなってきたので、最後にエスカレーターを止めて分解することにしてみよう。エスカレーターを縦にスパッと切ってよく見てみると、エスカレーターの段数が有限であることは容易に判別できる。でも、次々に出てくるステップはやはり果てることがない。こういうのを空間を扱う数学の専門用語で「有限だが果てがない」という。限りが有るのに果てがないとは、何だかインチキくさい答えだが、実はこうした例は身近にも数多くある。
例えば、時計。時計の文字盤には目盛は60しかない。つまり有限である。でも、時間には果てはない。文字盤の上を回り続ける時計の針は、電池切れでもない限り永久に回り続ける。有限だが果てがないということになる。同様に、我々が住んでいるこの地球。地球の大きさには確かに限りがあるが、特定のゴールを決めずにグルグル回れば果てしなく回り続けることになる。
要するに、同じところをグルグル回るようなものはすべて「有限だが果てがない」ということになる。エスカレーターの段数も、「有限だが果てがない」というのが答えになる。


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