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作品名:続・不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第22回   宇宙モノSFのウソホント
宇宙を題材にしたSF映画やSFドラマは相変わらず人気が高い。筆者も大のファンである。ただ、その描写には、科学的根拠に基づいた質の高いものから、かなりいい加減なものまで千差万別である。別にケチをつけるつもりはないが、SF(空想科学)と言うからには、多少なりとも科学的であってほしいと願う。そこで、いくつか検証してみたい。
まず、宇宙船の中の様子。宇宙空間は無重力だから、何もなければ国際宇宙ステーションの中のようにフワフワと浮いた状態になる。ところが、ほとんどのSF映画では、宇宙船の中で人は地上と同じように歩いたり、階段を上り下りしたりもする。恐らく、人工重力か何か使っているのであろうが、通常、宇宙空間で人工重力を作るには宇宙船を回転させて遠心力を得なければならない。ところが大半の映画では、宇宙船は普通の船のように静止状態のままである。重力はどうやって生み出しているのであろうか。
マグネットブーツ(磁石入りの靴)を履くという方法もあるが、これだと一歩一歩確実に歩みを進めなければならず、とても宇宙船の中を走り回るというわけにはゆかない。どうやら、ほとんどのSF映画はウソの描写をしているようだ。この点でホントの姿に近い描写ができていたのは、「2001年宇宙への旅」と「さよならジュピター」くらいだと思う。
また、SF映画で頻繁に登場するワープやタイムトラベルが科学的に可能かどうかについては、「File4 タイムトラベルは可能か」と「File5 ワープは可能か」ですでに検証した通りであるが、映画の前提としてこれらの技術を認めないと物語が成立しない場合が多い(例えば何百光年も離れた星々に瞬時に移動しなければ話が前に進まないようなケース)ので、これらは敢えて無条件で許容するとしよう。
ただ、そうすると何となくうさん臭いと思えるのは、ワープやタイムトラベルが可能なほどに科学技術が進んだ超未来において、帝国だの連合軍だのといった第二次世界大戦中のような話が次々と出てきたり、あるいは、もっと時代を遡って、国王だの騎士だのといった中世のような話が出てきたりもする。何千年、何万年先の宇宙においても、地球の歴史上の制度や慣習がそのまま受け継がれているのであろうか。
あるいは、こうした制度は広大な宇宙、あるいは宇宙人の世界においても普遍的なのであろうか。これらは「スターウォーズ」や「スタートレック」で、しばしば使われている例であるが、SF映画にしては、少しお粗末なようにも思える。
さらに専門家も首をかしげるのが派手な戦闘シーン。当たり前のように使われているレーザー光線銃であるが、人を殺傷できるほどのエネルギーを出すには、かなりの出力が出せる巨大な装置が必要で、片手で持てるような拳銃タイプの光線銃はあり得ないそうだ。ただ、この点はエネルギー源として反物質を利用できれば実現可能であるので、超未来では反物質電池なるモノが開発されているということにしておこう。
それと、戦闘機による交戦シーン。宇宙空間を秒速何百キロという猛スピードで飛び交いながら、一瞬で敵の戦闘機を破壊する。地球上のジェット戦闘機での交戦を参考にしているのかもしれないが、いくら無重力の宇宙空間と言えどもあのスピードで飛び回ったら、乗っている人間は慣性の法則で脳味噌や内臓が一瞬にしてペチャンコになり死んでしまう。それに、あれだけのスピードになるともはや人間の知覚の範囲で操縦できるものではない。常識的に考えても、宇宙戦闘機は無人かロボットによる操縦が当たり前のはずである。
それと「File1 エリア51の宇宙人のウソ」でも書いた通り、登場する宇宙人の姿形に関する発想はやはり貧困である。映画の製作者はそれでも工夫したつもりなのであろうが、ほとんどが地球上にすでにいる生物を少しいじくっただけのような姿形をしている。二本の手に二本の足、それに目や鼻や口、どれをとってもどこかで見たようなモノばかりである。
それとも遠い宇宙においてすら、生命の進化の法則は普遍的であり、似たような生き物が発生するという理屈が成り立つのであろうか。ただ、この地球上ですら、あれだけ多様な形をした生き物がいることを考えると、やはり宇宙人の姿形はわれわれの想像を絶する奇妙なものでなくてはならないはずだ。
「エイリアン」や「ET」はそのタイトルがすでに「異星人」、「地球外生命体」という意味であるが、その姿形や生態はやはり地球上にいる何かに似ているような気がしてならない。
いろいろ屁理屈を並べてみたが、宇宙モノSFはある意味、冒険活劇でもあるから、まずは面白くなくてはならない。多少の科学的なウソは仕方がないと受け入れることにしよう。


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