地球最後の日というのは、SFパニック映画とかでよく取り上げられるテーマである。大規模な気候変動とか小惑星の衝突といったことが原因で人類が滅亡するという設定である。ところが、そんなものはまだまだ生やさしい方で、本当の意味で地球が消える日が来る。 太陽が燃え尽きる前には、赤色巨星という巨大な星に膨れ上がり、その外縁は地球軌道にまで達すると予想されている。これは、あまたある宇宙の星々の観測から確実視されている。こうなったらもう逃げようがない。まさに地球最後の日となるのである。 ただ、そんな日が訪れるのは今から40億年ほど先と推定されており、もちろんそれまでには人類は次の地球を求めて広大な宇宙へと飛び立っているであろう。しかし、その宇宙ですら終わりの日が来るという、超・恐ろしいシナリオが考えられている。 一つは、ビッグバンの反対、ビッグクランチである。今の宇宙には物質が満ち溢れている。通常宇宙に存在する物質は、何もしなければお互いの重力で引き合い合体してどんどん集合してゆく。物質が集まれば集まるほど、重力は大きくなり物質はだんだん小さな空間に押し込められてゆく。ちょうど、ビッグバンを起こした後に膨らみ続けてきた宇宙が、逆回しになって縮こまってゆくと考えればよい。そして最後は針の先より小さな一点に押し込められて宇宙は消える。これがビッグクランチである。 もともと、宇宙物理学者のほとんどはこの説を支持していた。最初は勢いよく開いた花火も次第に膨張速度が緩やかになり、最後は膨張が止まる。ビッグバンもこの花火と同じようなものと考えられていたため、開いた宇宙はやがては縮むと考えられたのである。 ところが前編第18回「宇宙は本当に膨張しているのか」でも書いた通り、この宇宙空間にはダークエネルギーという未知のエネルギーが充満していて、それが宇宙の膨張を加速させているという観測結果が得られた。このまま宇宙の膨張が加速してゆくと、やがてすべての物質はゴム紐のように引き伸ばされ、最後は素粒子レベルまでバラバラに引きちぎられることになる。このシナリオをビッグリップという。 残念ながら、これから宇宙の膨張速度がどうなってゆくのかは解明されていないため、どちらのシナリオになるのかは不明である。ただ、どちらのシナリオでも、宇宙最後の日が訪れることは確かであり、その時はどこへ逃げてももはや助かる道はない。人類の超・超未来には、押しつぶされるか、引きちぎられるか、どちらかの地獄が待っているということになる。ただ、そんな宇宙が実現するのは1000億年ほど先のことになるそうだ。 そんな暗い話はどうしても嫌だという人のために、最後に唯一の希望の光を。仮に余剰次元が存在し、そこにわれわれの宇宙と似た並行宇宙が存在すれば(こうした理論を多宇宙論という)、今の宇宙から飛び出して隣の宇宙に移るということが可能になる。その場合、人類の未来は永遠に続くという明るいシナリオになる。
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