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作品名:続・不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第10回   天気予報はどこまで当たるか
最近の天気予報は昔に比べてはるかに正確になった。筆者が子供のころは明日の天気予報ですら当たるかどうかハッキリしなかった。ところが、最近では週間天気予報まで出されており、完全には当たらないまでも、傾向的にはかなり信頼できるレベルになっている。
これは、コンピューター解析によるところが大きい。かつては、経験を積んだ予報官の勘が頼りだった天気予報も、今では各地から自動伝送されてくる気温、湿度、風向きなどの情報をインプットするだけで、ほぼ自動的に計算して予報が出される。しかも以前では、スパコンレベルでしかできなかった計算が、今ではパソコンレベルでも出来るようになってきている点も大きい。極端な話、個人の気象予報士でも独自の解析ツールを開発すれば、独自の天気予報を出すこともできる。
実際、気象庁とは別に、民間の天気予報会社が局地の天気予報の情報を売って商売をしている。コンビニ等では、そうした天気情報をもとに、翌日の弁当や飲み物の仕入数を決めたりもしている。例えば、明日は猛暑という予報が出ると、冷麺やビール、アイスクリームの仕入れを増やすといった要領である。
一方で、不思議なことに、明日や明後日の天気予報はかなりの確率で当たるようになってきているのに、わずか1時間先の天気が正確に予測できないという問題が起きている。大きな被害が出た竜巻や集中豪雨に関する情報は、ほとんどが時間遅れだった。なぜこうしたことが起きるのであろう。
竜巻や豪雨のような局地天気は、いわゆるメッシュ方式で予測される。地図を碁盤の目のように5キロ四方くらいに区切って、その区画ごとに気温、湿度、気圧、風向き等を分刻みで追跡し、予報を出すのである。このメッシュが細かければ細かいほど予報は局所的に出すことが可能となるが、必要となるデータ量が急速に膨れ上がる。かつては20キロ四方が当たり前だったメッシュも、今では5キロ四方が標準となり、さらに1キロ四方まで精緻化されようとしている。
例えば20キロ四方を5キロ四方に区切るとすると、データ量は4倍、ではなくて16倍(4×4)になる。同じように1キロ四方にすれば400倍である。これを日本全体に拡大すれば、それこそ天文学的数字のデータ処理が必要となる。しかも、竜巻などは、わずか数百メートルほどの範囲で、分刻みの変化を捉えなくてはならないから、その正確な予測はほとんど不可能に近い。せいぜい用心してくださいという注意情報を出すのが精一杯である。
こうした天気予報の難しさを理論的に説明するものもある。バタフライ効果(蝶の羽ばたき効果)というカオス理論に基づくものである。バタフライ効果とは、蝶の羽ばたきのようなごくごく小さな初期値の変化が、後々大嵐を引き起こす原因になるというものである。いくら観測精度を上げて、すべての情報を読み込んだとしても、わずかの変化によって結果が複雑に揺れ動き、無限の結論を導く可能性があるということを言っている。
やはり天気予報に100%というのはなさそうだ。でも明日の降水確率は100%だったような気がするが…。


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