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作品名:不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第49回   西から昇ったお日様が東に沈む
あまりに有名な、天才バカボンの主題歌のイントロ部分である。こんなことが本当に起きうるのだろうか、検証してみよう。
いま太陽は毎日東から昇って西に沈んでいる。これは地球が北極から見て時計と反対周りの方向に自転しているからである。毎日、毎日、この動きは永遠に続いていくと思えるほど規則正しく繰り返される。ただ、季節に敏感な人なら、太陽の上る位置が季節によってずれることを知っている。夏は北の方へ、冬は南の方へ、太陽が昇る位置は少しずつ動いてゆく。これは地球の自転軸が23度ほど傾いているからである。ゆえに日本のような中緯度地帯では四季が生じる。
この地球の動きは永遠に変わらないように見えるが、実は歳差運動によって毎年ごくわずかずつだか変化している。歳差運動とは、ちょうど回っているコマのスピードが落ちてきたときにグラグラと首が振れるように、地球の自転軸がグラグラと動くことである。この動きは、大体2万6千年くらいの周期で起きており、氷河期が起きる原因の一つとも考えられている。現在、北極星は真北の方向にあると理科の時間に教えているが、今から1万年くらい後には、こと座のベガが真北に来る。その時、日本の位置は今よりも随分と赤道よりに移動していて、日本から南十字星が見えるようになるという。ただ、歳差運動の周期があまりに長いため、人の一生くらいの短い時間では目に見えた変化は感じられない。太陽の動きは永遠に変わらないと考えても無理はない。
この歳差運動は地球に氷河期をもたらすほどの大きな変化を引き起こすが、地球には月という大きな衛星があるおかげで、他の惑星に比べてまだ小さくて済んでいるという。
ハンマー投げの選手は、長いロープの先についた重りを持って回るために、あれだけ勢いよくグルグル回転しても回転軸がぶれずにきれいに回っていられる。もし、重りのついてないロープを持って高速で回ると、上半身がグラグラ揺れて、最悪ひっくり返ってしまうかもしれない。それと同じで、地球も月という重りが周りを回っているため、回転軸のぶれが少なくなっているのである。
地球のように大きな衛星を持たない火星では、自転軸が最大60度も動くという。そんなに激しく自転軸がぶれたら、地球は最悪横倒しになってしまうかもしれない。実際、天王星は公転軌道に対してほぼ垂直方向に自転している。横向きに寝た状態で、太陽の周りを回っているのである。もし、そんなことになったら、北から昇ったお日様が南に沈む、というとても奇妙なことになる。
では、月がなくなることはないのだろうか。今すぐにはありえない。ただ、月は毎年2センチほどずつ地球から遠去かっており、10億年くらい後には地球の引力圏から外れてしまうという。月という重しがなくなると、地球の歳差運動はさらに激しく、不安定になり、最悪上下が逆さまになるかもしれない。そうなれば、西から昇ったお日様が東に沈む、ということになる。その時まで、人類が生き延びていて、まだ地球に住んでいればの話だが。


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