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作品名:不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第46回   人はサルから退化してきた
「進化」の間違いじゃないの。一般的には、人はサルから進化してきたと言われている。サルが類人猿になり、さらにホモサピエンスとなり、という具合である。確かに、知能の面では、人はサルよりも進歩している。火を使うし、言葉を話す、道具も使う。
ただ、少し違う角度から見ると、人はサルに比べて退化もしている。退化した例としては、体毛、尾てい骨、アゴ等がある。サルには、寒さを防ぐための体毛、木の上で生活するためのシッポ、そして硬い木の実も砕く丈夫なアゴがあった。これらは、人が衣服を着て、地上で生活を始め、そして軟らかい米や麦を食べるようになって、徐々に退化してしまった。
ところが、キャンプなどに行っていったん野生の世界に戻るとたちまち大変である。寒さをしのぐために一杯服を着こまなくてはならないし、クマやオオカミから身を守るため火を焚かなくてはならないし、口に合う軟らかい食べ物を探すのも難しい。恐らく三日ともたないであろう。野生の世界では、サルの方が人より進んだ生き物なのである。
進化と退化は、言葉的には反対語として使われる。すなわち、進化は機能が向上すること、退化は機能が低下することを意味する。ただ、物は考え様である。必要のなくなったものが消えてなくなることがすべて退化とは限らない。スマートフォンには従来型の携帯電話のような押しボタンはないが、ボタンが消えてなくなったからスマートフォンが携帯電話より退化したという人はいないであろう。
人は、自身が獲得した文明のために、今でも退化を続けている。わずか百年前と比べても随分と変化した。まず顔の形が変わった。江戸時代まではアゴの張った四角い顔の人が多かった。これは硬い食べ物を多く食べていたことが原因である。それに比べ、現代人はほっそりしたとんがりアゴの人が多い。軟らかい物ばかり食べるようになったのでアゴの退化がさらに進んだのである。また電車や自動車といった便利な乗り物ができたせいで、脚の力も随分と退化した。江戸時代の人は1日10里(約40キロ)は平気で歩いていたという。今、毎日40キロも歩く人と言えばマラソン選手ぐらいであろう。
わずか百年でもこの調子だから、これが千年後、万年後ともなると、今からでは想像もつかないくらい変わってしまっているであろう。それこそ、今の文明が滅びて再び野生の時代にでもなれば、今度は人が進化してサルになっているかもしれない。そうなれば、まさに「猿の惑星」である。


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