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作品名:不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第42回   絶滅危惧種は保護すべきか
またまた物議をかもしそうなテーマを持ち出したが、当たり前のように思えることも実は存外悩ましいのである。
先日、トキがヒナを産んだことがニュースで報じられていた。トキは特別天然記念物で、いわば超一級の絶滅危惧種である。というか、一度は絶滅したのであるが、中国から譲り受け人工繁殖を続けてきていたのである。それが、ようやく自然の中でヒナがふ化したというのだから、確かにビッグニュースに違いない。
ただ、人が絶滅危惧種を保護してもよいケースは、絶滅の原因が乱獲や自然破壊といった人間活動にある場合だけである。トキは戦前に人の手によって乱獲したことが原因で絶滅した。よって、人の手で回復されるべき種ということになる。
人間活動によらずして絶滅する場合は、自然の摂理であるから安易に保護の対象とすべきではない。自然界の食物連鎖は微妙なバランスの上に成り立っているので、一箇所でも人の手が加わると、その種が救われても別の種が絶滅するということになりかねない。実際、地球上で確認されている生物種は200万種類とも言われており、何もしなくても毎年何百何千という種が絶滅している。これをすべて保護するのは現実的ではない。たとえ絶滅しかけていても、それがやむを得ない自然淘汰によるものならば、何もせず見守る方がよい。
最近は、保護とは逆に増えすぎた動物を人の手で駆除するようなケースもある。実際に駆除された例としては、サル、シカ、クマ、イノシシなどがある。人里に下りてきて、人に危害を加えたり、農作物を荒らしたりするというのがその理由となっている。では、ブラックバスやアライグマのように外来種が入ってきたことが原因で、日本固有の種が危険にさらされている場合はどうか。外来種を人が持ち込んだなら人為によるものなので駆除すべきということになりそうだが、渡り鳥や海の魚のように気候の変化などにより空や海から勝手に入ってくる場合はどうなのか。保護か、駆除か、それとも自然淘汰か、こんなことをいちいちすべての種について考えていたら収拾がつかなくなりそうだ。
話はトキに戻って、仮に遠い将来トキが増えすぎて、そのエサとなるドジョウやカエルが絶滅しかけたとしたら、今度はトキを駆除するようなことになるのであろうか。


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