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作品名:不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第40回   親方日の丸ほど危ないものはない
「親方日の丸」だから絶対安全とよく言われる。これは、政府がバックについており、いざという時は政府が面倒をみるから絶対安全だという意味で使われることが多い。
しかし、このたびの東電の実質破綻騒ぎでこの神話はもろくも崩れ去った。東電は民間企業であるが、電力供給の独占が認められており、実質国策企業つまり親方日の丸と思っていた人は多いと思う。東電の社債は国債に次ぐ低い金利で発行されており、実質的には国に準ずる信用力があった。財産のほとんどを東電の株式や社債に投資していた人も多かったのではなかろうか。
それが、一夜にして実質破綻企業になったのである。政府は、福島原発の事故は一義的には東電の責任であり、当然その賠償責任は東電にあり、政府は不足する分だけ公的資金を投入するということで決着を付けた。一見正しいように見えるこの判断は、しかし、いざという時は、政府ですら見捨てるという印象を国民に広く植え付けてしまった。
この他にも、親方日の丸と信じていたのに裏切られたケースとしては、日航がある。日航も民間企業であるが、例えば政府専用機の運行を一手に任されるなど、航空業という点では実質国策企業と思っていた人は多かったと思う。それが証拠に、日航の株式は多くの投資家によって買われていた。それが、最後は紙切れ同然になったのである。やはりダマされたと感じた国民は多かったと思う。
このように、実質親方日の丸企業が相次いで見捨てられた背景には、政府の財政に余裕がなくなってきていることがある。以前なら、銀行に対してやったように公的資金を注入して救済してしまうところが、政府の資金繰りも苦しくなり、その余裕さえなくなってきた。そこで、都合よく自己責任原則を持ち出して、親方日の丸企業が潰れても政府は知らんと突っぱねたわけである。
さて、では今もっとも危なっかしい親方日の丸企業はどこかというと、ゆうちょ銀行であろう。ゆうちょ銀行の全株式はいまだ政府が所有しており、これこそ正真正銘の「親方日の丸」である。ゆうちょ銀行に預けられている貯金のほとんどは国債に投資されており、万一国債が暴落したら、あなたの貯金が一気に半分くらいになることだってありうる。
これに対し、ペイオフがあるから1千万円までは政府が保証してくれると思っている人も多いと思う。確かにペイオフにより1千万円までは戻ってくるが、事はそう単純ではない。
国債が暴落して、ゆうちょ銀行が危ないといううわさが流れれば、政府は取り付け騒ぎを防ぐため、「貯金凍結」を宣言することになる。つまり、解約するのはちょっと待ってくれということだ。それが半年になるのか5年になるのかわからない。高齢者なら生きている間に払い戻されるかどうかも分からない。
そうこうしている間に、日銀が大量に国債の買い支えでもしたらハイパーインフレが起きて、通貨価値は暴落することになる。つまり、1千万円が払い戻された時は、百万円ほどの値打ちしかなかったなんてことになるのである。
これがまだ純粋民間企業なら、会社更生法だの株主代表訴訟だのという裁判手続きに訴えることもできるが、相手が政府となると国民は指をくわえて見ているしかない。親方日の丸ほど危ないものはないのである。


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