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作品名:不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第37回   マヤ暦では2012年12月にこの世が終わる
マヤ暦によると、今年の12月にこの世が終わりを告げるとされているそうだ。そのせいもあってか、今年こそ地球は滅亡するという世紀末論議がまたまた盛り上がっている。一部は映画にもなった。1990年代にも似たような現象があった。ノストラダムスの大予言である。あの予言では1999年7月に地球が滅亡するとされていたが、結局、その年は全世界を震撼させるような破滅的カタストロフィーは何も起こらなかった。今回も空騒ぎに終わるのであろうか。
マヤ暦に詳しい人によると、今年の12月は、正確には古い時代が終わりを告げ新しい時代に入る変わり目の年というだけで、別に世界が破滅するとは語っていないという。要は、紀元前・紀元後みたいな話である。でも、これでこの話を終わってしまうと、世紀末論者から叱られそうなので、折角の機会だから少し地球が破滅するシナリオを科学的に再検証してみたい。
まず、今回の話は、予言ではなく「暦」がそのベースになっているので、原因は天体現象である可能性が高い。核戦争や伝染病が原因であれば暦は関係ないからである。
まず、最も可能性の高いシナリオは太陽活動である。もともと太陽活動には11年の周期があるとされており、太陽活動が活発な時期には黒点の数が増加し、活動が不活発な時期には黒点の数が少なくなる。前回のサイクルでは、この黒点の少ない状態がおよそ2年も続いた。これは約100年ぶりの異常事態だという。
さらに、今年5月には太陽の磁気圏が変化し、何とN極とS極が2つずつ、合計4極になることが太陽の観測結果から確実視されているという。これは300年前に起きた小氷期の時に似ており、今後数十年間地球が寒冷化するのではないかと言われている。いずれにしても太陽が何かおかしいのは間違いない。
太陽の異常で気にする必要があるのは磁気嵐である。太陽で大規模な爆発やフレアがあると強力な太陽風により、地球の磁気圏が乱され、航空機の計器を狂わせたり、大規模停電を引き起こしたり、通信網も寸断したりといった被害が予想される。そうした被害は甚大に及ぶが、それでも地球滅亡にはほど遠い。どうもこのシナリオではなさそうである。
太陽がダメなら地球自身はどうか。地球の異常で気になるのがポールシフトである。これは、南極と北極が入れ替わるというものであり、実際長い地球の歴史の中で何度も繰り返し起こったことが確認されている。もし、これが起これば、極が入れ替わるまでの間地球の磁気圏は完全に消滅し、危険な宇宙線を遮るバリヤーがなくなってしまう。宇宙線が直接地上に降り注げは、生物の大半は死に絶える。ただ、このケースにおいても地球大気があるおかげで、それほど危険視する必要はないというのが、識者のもっぱらの見解である。実際、過去のポールシフトでも破滅的な事態は起きていない。
それから、もう定番になった感のある小惑星衝突であるが、今のところ直径1キロ以上クラスで地球公転軌道を横切る小惑星のほとんどはすでに特定されており、最も早いものでも2029年に地球に最接近するアポフィスがある。それでも地球に衝突する確率は宝くじに当たる確率よりも低く、しかもその大きさも直径数百メートルというから、仮に衝突したとしても地球を滅亡させるほどの迫力には程遠い。SF映画「ディープインパクト」や「アルマゲドン」はやはりSFの世界だけの話のようである。
一方、最近注目されているのが、オリオン座のベテルギウスの超新星爆発である。超新星爆発とは、太陽の何十倍もの質量のある巨大な恒星が燃え尽きる時、自らの重さで星自体がつぶれその反発力で大爆発を起こすというものである。そのエネルギーは太陽が一生かかって放出するエネルギーの何万倍にもなる。それがわずか数日の間に放出されるというのであるから凄まじい。ベテルギウスは、すでに赤色超巨星と呼ばれる爆発寸前の状態にまで到達しており、今この瞬間にも既に爆発しているかもしれない(はるか遠いところにあるため爆発してもすぐにその光が地球に到達するわけではない)。仮に超新星爆発が起きれば強力なガンマ線が放出され、周囲5光年以内にある星では生命はほぼ完全に消滅すると見られている。実際、「ノウイング」というSF映画では、このシナリオで地球が滅亡した。
ただ、ベテルギウスは地球から約600光年も離れた場所にあり、かつその自転軸は地球から20度近くズレた方向を向いていることが観測により分かっている。よって、仮にガンマ線バーストが起きたとしても地球への影響は微々たるものと予想されている。むしろ、ベテルギウスの超新星爆発は地球上からは満月ほどの明るさに見えるとされており、世紀の天体ショーを楽しみにしている天文学者さえいる。
それでもなお、どうしても地球を滅亡させたいという人は、拙著「エクストラ・ディメンション(余剰次元)」をお読みください。素粒子物理学の観点から、今年12月に地球が滅亡するというシナリオを描いておきました。


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