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作品名:不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第33回   地球が温暖化してどこが悪い
またまた物議をかもしそうなテーマを出してしまった。今では、ごく当たり前のように、誰もが地球は温暖化しており、それを食い止めるために省エネやエコに努めなければならない、と考えている。ただ、専門家の中には、こうしたマスコミ宣伝型の地球温暖化阻止論に異を唱える人もいる。一体、何が本当で、何が問題の本質なのか。
そもそも地球温暖化の問題は1980年代に初めて脚光を浴びた。石油などの化石燃料を燃やすことで排出される二酸化炭素が温室効果をもたらし、それが原因で地球全体の平均気温が上がり続けているという。そして、京都議定書で初めて温室効果ガスの排出を削減しようという国際条約が締結された。
その根拠として、直近100年間の平均気温が0.何度といったレベルで上昇しており、併せて大気中の二酸化炭素濃度も何ppmとかいう単位で傾向的に上昇しているという点があげられている。識者に言わせれば、二酸化炭素の濃度と平均気温はトレンド的に上昇しており、かつ両者の間には高い相関関係が見られるという。これだけ多くの著名な学者が言うのだから、人間活動が原因で地球が温暖化しているのはまず間違いはなかろう。
しかし一方で、より長い期間でみると、地球はむしろ寒冷な期間の方が長く、今は間氷期という珍しく温かい時期に当たっているという学者もいる。最後の氷河期は1万2千年前に終了し、その後急激な気温上昇に見まわれ、今日に至っている。これは南極の氷床から過去数十万年分の氷を回収し、それを分析した結果得られた結論なので確証は高い。ということは、ここ100年くらいの地球温暖化なんて、何千年、何万年という気候の変動サイクルから見るとほんの小さな出来事で、地球はまた新たな氷河期に突入するのではないかと考えたくもなる。多分いずれはそのようになるであろう。
いろいろな学説によると、氷河期は太陽活動、地球の公転軌道、地軸の傾きなどの天文現象により起きており、定期的な周期があることがわかっている。この天文現象によるエネルギーの規模は人間活動によるものとは比較にならないくらい大きいため、少々地球が温暖化したくらいでは新たな氷河期突入は止められない。昨今の地球温暖化は、過去にこの地球が経験した気候の大変動に比べてみれば微々たるものなのである。
では、地球温暖化の何が問題なのかと言うと、それが人為によってもたらされているという点と、急激な環境変化を引き起こしているという点である。
環境保護を特に強く訴えているのはヨーロッパ各国であり、彼らの論点は人間活動が地球環境に何らかの影響を及ぼすということを特に問題視している。彼らは、地球温暖化問題に限らず、絶滅危惧動物の保護や酸性雨の問題など、およそ人の手によって地球環境が破壊されることに対して異を唱える。地球温暖化問題は、あまたある問題の一つにしか過ぎないのである。
今一つは、急激な環境変化である。相次ぐ異常気象や海面の上昇は特定の地域の人々を窮地に追い込んでいる。これが何千年とかけて進む温暖化なら観念して少しずつ生活を変えてゆくしかないが、わずか数十年ほどの間に起きてしまうと着いてゆけない人々が出てくる。一部の少数者の犠牲の上に大多数の人間が乗っかって豊かな生活を送るという点が問題なのである。
筆者は、地球が温暖化すること自体は別に悪いこととは思わない。地球温暖化によりむしろ恩恵を被る地域もあるからである。そして何よりも今の世界の状況を見れば、もはや温暖化を実効的に阻止するには手遅れの感がある。であるならば、温暖化を避けがたい事実として受け入れ、それを前提とした新たな生活体系にシフトしてゆくことを考え、限られた資源をそのために使ってゆく方が理に適っているように思えるのだが。
(このテーマについてもっと知りたい方は拙著「深層海流」を参照してください。)


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