答えは6分の1、小学生でも知っている算数である。でも本当にそうなのかと改まって聞かれると、これが結構やっかいなのである。ということで早速実験してみよう。もちろんイカサマのできないよう完全無欠のサイコロを使う。 サイコロを6回振って、6の目は何回出るか。1回ではないかもしれないということは、誰しも直感的にそう考える。実際、サイコロを6回振って6の目が出る回数は2回かもしれないし、1回も出ないかもしれない。そこで、サイコロを振る回数を60回まで増やしてみよう。6の目が出る回数は9回あるいは12回となるかもしれないか、6回の時よりは確実に6分の1の確率に近づく。サイコロの振る回数を600回、6000回と増やしてゆけば、6の目が出る確率は確実に6分の1に近づいてゆく。 これを大数の法則という。分母の数をどんどん増やしてゆけば、誤差はどんどん小さくなり、最後は6分の1に収束する。よって6分の1より小さい部分は無視して、6分の1として構わないということである。厳密さが要求される数学にしては、少々いい加減な考え方である。 数学的にはこれでいいのかもしれないが、事がカジノだとそういうわけにもゆかない。今あなたの手元に1万円がある。サイコロを振って6の目が出れば5万円もらえる、6以外の場合には1万円を払うという賭けを考えてみよう。この賭けの期待値(戻ってくると期待される金額)はゼロある。要するに、確率的には損も得もしない賭けということになる。損も得もしない賭けだからさあどうぞと言われて、あなたはこのゲームをするであろうか。 もちろん大数の法則にしたがえば、何百回とサイコロを振れば、期待値は確実にゼロに近づくが、カジノで遊べる時間を考慮するとそうもゆかない。結局、このゲームをする人は賭け事好きの人、しない人は用心深い人、要するに数学的には同じでも、心理学的にみると確率は人によって異なるのである。ましてや、このゲームの掛け金が1億円ともなると、ほとんどの人はゲームをしないであろう。不確実な5億円よりは、確実な1億円の方が価値があると考えるからである。皆さん、賭けごとは程々に。
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